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10.カイト
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バウンゼント公爵邸に遊びに行くこともあった。
彼には若き皇帝陛下の婚約である妹がいた。
学園も違うので会うことはなかったが、
自慢の妹らしく、度々話にでてきた。
そして彼の婚約者の話も・・・。
アミー・ユウルギア公爵令嬢。
皇帝陛下の叔父の義娘だと言う。
身寄りのないアミー嬢に惚れたエイトが、親友であり幼馴染である皇帝陛下に無理を言ったらしいと噂があった。
のちに、確認を本人にしてみれば、ほぼ事実だった。
彼女と結婚できなければ平民になる気だったらしく、優秀なエイトを平民にしたくないあまり、周りが折れたのだと言う。
彼女自体、バウンゼント公爵令嬢と仲が良く優秀な16歳の少女だというのだ。
周りは否定的であったが、彼女の聡明さに触れた者は認め出したのだと聞いた。
たまたま、遊びに行った日、皇帝陛下とエイトの婚約者がバウンゼント公爵令嬢ーセシル嬢の元に訪れていた。
折角だと言うので合わせてもらえる事になった。
案内された部屋に入ると、そこにはー、ミィがいたのだ。
一目でわかった。
フィオナにそっくりな顔。
それでいてフィオナにはない慈愛に満ちた顔。
嬉しかった。
死んだはずの妹がいたのだから。
思わず声にでていた。
「ミィ?」
「・・・・・・」
彼女の目が大きく見開き、僕を凝視する。
「ミィ、・・・だよね」
嬉しくて涙が溢れる。
同時に罪悪感が蒸し返した。
触れたい。
生きてる君にもう一度。
手を差し伸べようとした時、彼女は悲鳴をあげた。
顔を掻きみしらんばかりの行動。
皇帝陛下もエイトも、セシル嬢も慌てた。
狂ったように悲鳴を上げ続ける彼女に僕は呆然とした。
何もできなかった。
エイトが必死に抱きしめた。
しばらくして彼女は気を失った。
僕は後日話を聞くこととなり、追い出されるようにして、留学で借りている寮へ戻った。
どうやって帰ったのか正直覚えていない。
数日後、僕は王宮に呼ばれた。
通された客室には皇帝陛下とエイト、セシル嬢がいた。
彼女はまだ錯乱していると言う。
何度か鎮静剤を投与して、そばに誰かを待機させていると言うのだ。
僕は素直に話した。
全てを。
何があったのかを。
そして、彼女の話をしてくれた。
彼女はセシル嬢に拾われた。
川岸に倒れていたのだという。
記憶もなく名前がほのかに「ミ」が聞こえたからセシル嬢が「アミー」と名付けたことがわかった。
僕はあの子の二度目の人生をも壊したのだ。
知らないままでいさせてあげればよかったのだ。
あの子はセシル嬢と仲良くなり、バウンゼント公爵家でセシル嬢と同じように愛されて育っていたのだ。
エイトが妹以上の感情を募らせたからこそ、ユウルギア公爵の養女になったのだ。
セシル嬢になじられた。
彼女の心を壊した僕を糾弾した。
受け入れるしかなかった。
彼には若き皇帝陛下の婚約である妹がいた。
学園も違うので会うことはなかったが、
自慢の妹らしく、度々話にでてきた。
そして彼の婚約者の話も・・・。
アミー・ユウルギア公爵令嬢。
皇帝陛下の叔父の義娘だと言う。
身寄りのないアミー嬢に惚れたエイトが、親友であり幼馴染である皇帝陛下に無理を言ったらしいと噂があった。
のちに、確認を本人にしてみれば、ほぼ事実だった。
彼女と結婚できなければ平民になる気だったらしく、優秀なエイトを平民にしたくないあまり、周りが折れたのだと言う。
彼女自体、バウンゼント公爵令嬢と仲が良く優秀な16歳の少女だというのだ。
周りは否定的であったが、彼女の聡明さに触れた者は認め出したのだと聞いた。
たまたま、遊びに行った日、皇帝陛下とエイトの婚約者がバウンゼント公爵令嬢ーセシル嬢の元に訪れていた。
折角だと言うので合わせてもらえる事になった。
案内された部屋に入ると、そこにはー、ミィがいたのだ。
一目でわかった。
フィオナにそっくりな顔。
それでいてフィオナにはない慈愛に満ちた顔。
嬉しかった。
死んだはずの妹がいたのだから。
思わず声にでていた。
「ミィ?」
「・・・・・・」
彼女の目が大きく見開き、僕を凝視する。
「ミィ、・・・だよね」
嬉しくて涙が溢れる。
同時に罪悪感が蒸し返した。
触れたい。
生きてる君にもう一度。
手を差し伸べようとした時、彼女は悲鳴をあげた。
顔を掻きみしらんばかりの行動。
皇帝陛下もエイトも、セシル嬢も慌てた。
狂ったように悲鳴を上げ続ける彼女に僕は呆然とした。
何もできなかった。
エイトが必死に抱きしめた。
しばらくして彼女は気を失った。
僕は後日話を聞くこととなり、追い出されるようにして、留学で借りている寮へ戻った。
どうやって帰ったのか正直覚えていない。
数日後、僕は王宮に呼ばれた。
通された客室には皇帝陛下とエイト、セシル嬢がいた。
彼女はまだ錯乱していると言う。
何度か鎮静剤を投与して、そばに誰かを待機させていると言うのだ。
僕は素直に話した。
全てを。
何があったのかを。
そして、彼女の話をしてくれた。
彼女はセシル嬢に拾われた。
川岸に倒れていたのだという。
記憶もなく名前がほのかに「ミ」が聞こえたからセシル嬢が「アミー」と名付けたことがわかった。
僕はあの子の二度目の人生をも壊したのだ。
知らないままでいさせてあげればよかったのだ。
あの子はセシル嬢と仲良くなり、バウンゼント公爵家でセシル嬢と同じように愛されて育っていたのだ。
エイトが妹以上の感情を募らせたからこそ、ユウルギア公爵の養女になったのだ。
セシル嬢になじられた。
彼女の心を壊した僕を糾弾した。
受け入れるしかなかった。
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