【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)

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「アドリア侯爵にはもう一人娘がいたそうですね?」
「確かに、フィオナ様の双子の姉がおりましたが、あの子はで亡くなりました」

事故?
そうなんだ、事故か・・・
事故にしたのか・・・。

「あの子のだと、おっしゃるのです、か?」
「そう認識しておりましたが、違うと?」
「・・・わかりません。わたしには、あの子がどんな服でどんな靴を履いていたのか、・・・わからない、のです」


わからない?
都合のいい言葉ですね。

「本当にあの子の・・・」

侯爵は奥方を見ます。
感情をあらわにしない冷たいほどまでの冷静な顔。

「こんな汚いもの知りませんわ」

扇で顔を隠し見る気もないよう。

汚いものか・・・。

何より『生きているかもしれない』ことに対して喜びはないことに驚く。

「汚い、ですか?王太子妃殿下はどう思いでですか?」
「わたくし、ですか?正直、この靴を見ても特には・・・」
「実のお姉様のであっても?」
「正直、姉のことはあまり覚えておりません。根暗な性格で我儘でいつも一人でいたようで。わたくしを妬んでいたように感じました」
「フィオナ様!!」

アドリア侯爵が嗜めるますが、聖女様は困ったように笑われました。

あまり覚えていないと言いながら、妬んでいたように感じた?!
矛盾してるでしょう。

「つまり、生きていても特には何も思わない?」
「ええ。姉は既にわたくしとってです。今更帰ってこられても困ります。わたくしが聖女であり、王太子妃になったから、こうしてタカリに来たようにしか思えません。使者様には申し訳ありませんが、この話は聞かなかったことにさせてくださいませ」

聖女様は深々と頭を下げられた。

『タカル』か。

「あの子に会うことはできませんか?」

侯爵は震える声で言われます。

「お父様。ダメですわ。許せば侯爵家が食いものにされてしまいます。どんな生き方をしていたか分かりませんわ」

我が家を馬鹿にしているのかしら、この聖女様?
聞いてたのかしら?

「フィオナ!!。アミー嬢に失礼だぞ」
「だってお兄様!」


「こんな家を脅しても価値もありませんよ」

自然と毒がでました。

価値もないと言われたのが癪に触ったのか、聖女様は睨んできます。


その眼差しを無視し、懐から3つの封筒を出して、そのうち1つを差し出します。

「こちらが皇帝陛下からの手紙になります」

王太子は話の流れに追い付いてはいないでしょう。
おずおずと手に取り中身を開きます。

「なっ、これは?」

手から手紙が落ちます。
それを見る国王陛下。
書かれている内容に絶句されています。

そうでしょう。
なぜなら招待状ではありませんもの。

そこには『宣戦布告』が書かれていましたから。

「我がユウルギス帝国はタヤギル国に宣戦布告をします。わたしに何かあれば即刻、攻め入れるようになっていますのでご注意ください」

気持ちいいわ。



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