【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)

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瘴気がこもる森へときた。

わたしは少しの自由を認められた。

メイドの一人と共に、妹から離れた場所で座っていた。

はじめて見る花に夢中だった。
持ってきた本を広げ、書いてある花と本当の花を見比べていた。


妹は瘴気の浄化をしていた。

邪魔をしてはいけない。
静かに本と睨めっこしていた。

騒がしい声が聞こえて来る。


「お嬢様。少し様子を見てきます。迎えにきますのでここでいてください」


メイドはそう行って、見に行ってしまった。

わたしは大人しく待っていた。

ずっと待っていた。

まだメイドも帰ってこない。

ずっとー。

ずっとー。



日が暮れだす。

わたしは馬車が置いてあったところに行った。
そこにはなにもなかったー。


わたしは、

置いていかれた。


あれから、どのくらい時間がたった?
なんで迎えにきてくれないの?

わたしは気づかれていない?

わたしは、捨てられた?



忘れられた?



とうとう・・・?



ポッカリと胸に穴があく。



わたしは死ぬの?

わたしは生きていてはいけないの?


夜になる。
獣がでてくる。

自分でさえお腹がすくのだ、獣たちも食事の時間になるだろう。
人とは違う時間に動く彼らの活動時間。



わたしは死ぬの?

どこへ行けばいい?

どっちからきた?

どうやってきた?


わからない。
わからない。
わからない。

覚えてない。

知識も何もないわたしには無理だ。

ガサリと草が動く。

ひっ・・・。

怖い。

怖い。
怖い!


わたしは走った。

右も左も分からず、がむしゃらに走った。

いきたい。
行きたい。
生きたい。

まだ、わたしは生きたい。

まだ、死にたくない。

走る。
森の中を。
ひたすらに。

追ってくる。
彼らはわたしを追ってくる。

彼らは狩りを楽しんでいる。
幾つもの視線がわたしを見ている。

荒い息遣いが耳元で聴こえる。

助けてくれる者はいない。
誰もいない!

息がきれる。
足がもつれる。

助けてほしい。
助けて。
お願い。

いい子にするから。
大人しくするから。

だから・・・だから、お願い。

たすけてー。


お父様。
お母様。
お兄様。
フィオナ。

彼らの笑う顔が浮かぶ。

なんで、笑ってるの?

なんで、わたしはー。

憎い。

あいつらが、憎い。

わたしがー、

わたしが何をしたの?

何をしたの?

わたしはー、

生きていてはいけないの?

死んで欲しかったの?

わたしはーいらない子?

みんな、憎いー。

憎いー。

生きたい。


生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい




目の前は崖になっていた。

彼らは十匹以上いた。
わたしを見つめる目。

光る瞳孔。
滴る涎。

わたしは彼らにとって、餌でしかない。

人ではなかった。

ここで食われるのか、自ら飛び降りるか・・・。

どちらでも、わたしの死は確定かもしれない。

ならば、わたしはこっちを選ぶ。
バラバラの死体を晒すより、深い地に落ちて
グジャグジャになるほうがまだいい。

水があれば、もしかしたら生き残れるかもしれない・・・。

深さがあることを祈る。



わたしは崖から飛び降りた。



全てを捨てる覚悟をしてー。







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