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しおりを挟む「ほら、みなさい。叶わなかったじゃないの。わたしがいればあの子はいなくならなかったのに!わたしはあの子が幸せなら出てこないとあなたと約束したわ。でも、全てなくなったわ」
不満を言う。
わたしはミネルバのために存在していた。あの時も、一人が寂しいからとわたしを作り上げた。
なのに、コイツはあの子の幸せのために消えろと言った。大丈夫だからって。
「なぜだ?」
「なぜ?わからないの?母親が死んでから、実の父親に見放されたのよ。養母と義妹には厄介者にされてどうしろと言うの?最低水準の生活よ。信じられる?
婚約者は真実の愛とやらで、無視をするし、誰にもすがる事も頼ることも出来ず、逆に虐めたと無実の罪を着せられ、酷い噂で友人達もいない。
あの子の味方はどこにもいないのよ。
階段から落ちる際見た最期の光景。あの瞬間、全てを諦めたのよ。
愛されることをやめたの。愛することをやめたの」
「返せ。・・・ミネルバを返せ」
グランバード伯爵が言う。
周りは戸惑いの視線だけを送る。
「いないものは返せない。貴方達があの子を殺したの。あの子は自分さえ愛することをやめたの」
「ミネルバ・・・」
「今更。見向きもしなかったじゃない。わたしが起きてからあなたのことを名前でよんでも気づきもしなかったじゃないの」
あ~あ、思ってたようにならないものだ。
巷ではやるざまぁなんてうまくいかないものね。
でも、言いたいことは言えた。
ミネルバの気持ちは言えたはず。
「ブライド、責任とってよ」
「責任?」
「あなたがもっと早くくれば、こんなことにならなかったのよ。わたしはもうここにいられないの。この人はわたしが嫌いだもの。わたしを認めてくれないから」
わたしがいたくないだけど。
顔もみたくないだけ。
声も聞きたくない。
「あなた、昔言ったよね。約束したよね。
ミネルバの幸せのために消えてくれ。もし、もし、また会えることがあればその時は自由な世界を見せてやるって。ミネルバをわたしが自由に生きていけるように手助けしてくれるって。
わたしにはもう何もないの。捨てられたの。ミネルバという、最愛の人に。両親に。愛したいと思った人からも。大事にしたい気持ちも全てからすてられたの。もう、あなたしかいないの。だから責任をもちなさい」
ブライドは昔、わたしと話した。わたしが私であるために・・・語り彼は夢を語った。
憧れたあの世界を夢見て眠りについた。
もし、わたしが起きることがあれば、一緒に見て全てを共有したかった。
ミネルバに見せたかった。
あの閉ざされた世界から解放してあげたかった。
なのに、あの子はもういない。
どこにもいなくなった。
それでも、わたしは生きていくのだ、わたしとして。
「わかった・・・」
彼は私の手を取ってくれた。
わたしは名前を呼ばれたことがほとんどない。
彼はミネルバさえ忘れた名前をよんでくれた。
「エルミナ、行こう」
泣いた。
笑った。
嬉しかった。
わたしは行く。
彼と共に・・・。
*****
あの後彼らがどうなったかは詳しく知らない。噂ではいい話は聞かなかった。
すでにわたしには関係なかった。
わたしたちは行く。
彼の世界を見る。
笑いが絶えることがない。
もしかすれば・・・・・・
と思うこともある。
その後のわたしは・・・
彼とともにあった
とだけ知らせておく。
ーおわりー
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ブライドの無責任な治療。
ミネルバの生活環境を改善せずに幸せになれるわけ無いわな。
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公爵と侯爵、間違っているような?
ご指摘ありがとうございます😊
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