【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

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 卒業式はある意味私の卒業でもあった。
 祖国からの、この柵からの。

 国王陛下と共に卒業式パーティーに入ると以前とは違う視線に拍子抜けする。
 嘲りとは違う賞賛に満ちた視線。

 少し地位が上がれば手のひらを返したように態度も変わるのか?
 それとも私のことがわかっていない?

 国王陛下の紹介でざわめきだす。
 私がわからなかったのか・・・。
 
 内心苦笑した。

 でも、それは些細なこと。
 見た目や立場、価値観が変わっても私は私なのは変わっていない。
 
 予定通り国王陛下が私引き止めようとしたが、拒否した。

「お誘いは嬉しいのですが、私のしたい研究は帝国を起点にするのが一番なのです。この国で実践するには難しいのですわ。私のような女が活動するには大変息苦しいですもの」

 顔に傷があるからと笑われた日々。
 助けてくれなかった元婚約者。
 あんな日々はもう嫌なのだ。

 それにー。

「それに、婚約者である彼・・・アーサーはこの度民族学研究の第一人者として皇帝陛下からも認められました。それにあたりこれからは彼はたくさんの国を巡ることになり私もついて行きますので無理ですわ」

 そう。アーサーは怪我から復帰して一度だけ会いにきて「待っていてほしい」と言って去って行った。
 それから半年以上音信不通が続き心配していると、兄から「信じろ」と言われたのもあり、私はひたすら自分のやるべきことを進んだ。

 彼は自分の道を切り拓いて帰ってきた。
 兄とたくさんの国を回ってきたことを生かし民族的方面からの論文をだしたのだ。
 
 皇帝陛下からも認められた。
 
 そしてアーサーは私にプロポーズしてくれた。

 どんなに嬉しかったか。
 
 耳元で聞こえる彼の声。抱きしめられた時のアーサーの温かさ。少し早く感じる心音。どれもが私の気持ちを昂らせた。

 そんな彼と共に歩んでいけるなら、どこにでも行ける。たとえ苦しくても大変なことが待っていようと二人でなら生きていけると確信していた。

 私はアーサーを見た。
 彼も私を見て微笑む。

 誰もが私たちを羨ましいそうに見ていた。
 嫉妬の言葉さえ聞こえる。

 そんな彼らにアーサーは私と引き合わせてくれたことへの感謝を述べた。
 私にキスまでしてくる。

 それが恥ずかしいのになぜかくすぐったくて笑ってしまった。
  
 アーサーに出会えてよかったのは私の方だ。
 こんな私を・・・ありのままの私を見てくれたのだから。

 国王陛下の咳払いに私たちは少しだけ離れた。

 私たちに向ける視線がわずかだが変わっていた。
 卒業を迎えた女の子たちの視線が明るい。

 この子達も自由に生きてほしい。
 ありのままの自分を探してほしいものだ。
 そして、そんな自分を受け入れてくれる人に出会えますようにーと願わずにいられなかったー。







*次が最終話になります。
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