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69.マルス視点
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国に帰ると父からは盛大に叱られ、しばらくの間、謹慎させられた。
そして、やっと学園に行くことができたと思えば、誰からも声をかけられることがない。僕はいないもののように扱われた。
ブライド・ホッチャー侯爵令息も素通りしていく。従妹のケティや今まで僕を囃し立ていた女たちも遠巻きに見てきては冷笑している。
先生たちさえ態度が変わった。教育者とは思えない酷い言葉が飛んでくる。
この様子にぞっとするものがあった。精神が壊れそうになる。
だが、そんな時思うのがノエルのことだった。
彼女もこんな中でいたのか?と。
僕でさえ苦しいと思うのに、ノエルは一人で耐えていたのだ。なぜ、僕は助けてあげなかったのだろう。
今ここで僕が逃げるのは違う、そう思えた。
どんなに無視されようと、悪態をつかれようと、必死に食らいつく。
だが、僕のせいで帝国から無理難題を突きつけられたことで、ほうぼうから僕は敵視されることにもなった。
輸出入の税が増幅することになったのだ。そのため物価があがる。
そんなに豊とは言えない我が国にとっては厳しいものだった。
父からも見放され学園退学の危機まで陥る。
そんな僕をロード先生が救ってくれた。
「君がノエルにしてきたことに対しては許せないが、変わろうと努力している人物を無碍にはできないからね」
変わり者として有名な初老の男はニヤニヤと僕を見て笑う。
「君がどこまで変われるか観察するのも面白い」
先生は家から追放された僕の身元引受人になってくれた。
以前のノエルのようにロード先生自らが勉強を見てくれる。だが、その内容はきついものだった。
「なぜわからん?すでに習ったはずだぞ!?」
「えっと・・・」
「はあ、しかたない。まずはここまでの本を読んで、まとめて貰おうか」
僕に恨みを込めてやっているのだろうかと思いギロリと睨んでやると、逆に先生は冷めた目で見てくる。
「言っとくが、これは序の口だぞ。比べるわけではないがノエルはこの2倍のペースでこなした上、研究をしていたからな」
「えっ・・・」
これがー?
「今やっているのは基礎の基礎だ。せめてそこはクリアして欲しかった。早く僕の役にたってくれ」
「はい・・・」
なあなあで生きていた自分を目の当たりにした気分だ。
頑張ると誓った手前、挫けてはいられず頑張った。
誰にも成果が認められなくても、ロード先生だけは僕を見てくれる。
2ヶ月ほど経ってやっと先生の研究の手伝いをするようになった。
歴史書を一から読み込み当時の人々の生活をまとめるという気の長くなるような作業。
紙に水分を取られるカサカサになる左手とインクで汚れる右手。
ロード先生に付き合わされる秘密の夜会。
この数ヶ月でなんとなく先生のやりたいことが見えてきて、考えさせられる日々が続く。
自分の価値観が変わっている気がする。
そんな時、ケティが問題を起こしたという話が舞い込んできた。
婚約者のいる男を誑かしたということで、相手の女から派手に痛い目に遭わされたらしかった。
そして、やっと学園に行くことができたと思えば、誰からも声をかけられることがない。僕はいないもののように扱われた。
ブライド・ホッチャー侯爵令息も素通りしていく。従妹のケティや今まで僕を囃し立ていた女たちも遠巻きに見てきては冷笑している。
先生たちさえ態度が変わった。教育者とは思えない酷い言葉が飛んでくる。
この様子にぞっとするものがあった。精神が壊れそうになる。
だが、そんな時思うのがノエルのことだった。
彼女もこんな中でいたのか?と。
僕でさえ苦しいと思うのに、ノエルは一人で耐えていたのだ。なぜ、僕は助けてあげなかったのだろう。
今ここで僕が逃げるのは違う、そう思えた。
どんなに無視されようと、悪態をつかれようと、必死に食らいつく。
だが、僕のせいで帝国から無理難題を突きつけられたことで、ほうぼうから僕は敵視されることにもなった。
輸出入の税が増幅することになったのだ。そのため物価があがる。
そんなに豊とは言えない我が国にとっては厳しいものだった。
父からも見放され学園退学の危機まで陥る。
そんな僕をロード先生が救ってくれた。
「君がノエルにしてきたことに対しては許せないが、変わろうと努力している人物を無碍にはできないからね」
変わり者として有名な初老の男はニヤニヤと僕を見て笑う。
「君がどこまで変われるか観察するのも面白い」
先生は家から追放された僕の身元引受人になってくれた。
以前のノエルのようにロード先生自らが勉強を見てくれる。だが、その内容はきついものだった。
「なぜわからん?すでに習ったはずだぞ!?」
「えっと・・・」
「はあ、しかたない。まずはここまでの本を読んで、まとめて貰おうか」
僕に恨みを込めてやっているのだろうかと思いギロリと睨んでやると、逆に先生は冷めた目で見てくる。
「言っとくが、これは序の口だぞ。比べるわけではないがノエルはこの2倍のペースでこなした上、研究をしていたからな」
「えっ・・・」
これがー?
「今やっているのは基礎の基礎だ。せめてそこはクリアして欲しかった。早く僕の役にたってくれ」
「はい・・・」
なあなあで生きていた自分を目の当たりにした気分だ。
頑張ると誓った手前、挫けてはいられず頑張った。
誰にも成果が認められなくても、ロード先生だけは僕を見てくれる。
2ヶ月ほど経ってやっと先生の研究の手伝いをするようになった。
歴史書を一から読み込み当時の人々の生活をまとめるという気の長くなるような作業。
紙に水分を取られるカサカサになる左手とインクで汚れる右手。
ロード先生に付き合わされる秘密の夜会。
この数ヶ月でなんとなく先生のやりたいことが見えてきて、考えさせられる日々が続く。
自分の価値観が変わっている気がする。
そんな時、ケティが問題を起こしたという話が舞い込んできた。
婚約者のいる男を誑かしたということで、相手の女から派手に痛い目に遭わされたらしかった。
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