上 下
62 / 65

62.アーサー視点

しおりを挟む
 その後は新学期が始まるまでノエルに会えなかった。

「アーサー。なにをやらかした?少しは変わったかと思っていたんだが?もっと相手のことを考えて発言すべきだろう」

 父や兄、叔父さんからも苦言が呈される。
 
 そんなに悪いことを言っただろうか・・・。

 そんなことを悩んみながら、叔父さんの研究室でまとめ資料を作成していると、ノエルが入ってきた。

「こんにちは」
「いらっしゃい・・・」
「きたか・・・」

 久しぶりに聞くノエルの声に嬉しくなる。普通に・・・とノエルを見れば、彼女の印象は変わっていた。

「ノエル・・・」
「どう?」
 
 前髪を切って、片眼鏡モノクルが彼女の知性を押し出しているようにみえる。傷が見えそうで見えない。そんなところもいい。

「前髪切ったんだね。スッキリして眼鏡が似合うね」

 叔父さんが先に感想を口にする。
 出遅れた!?
 僕も・・・。
 
「アーサー様?」

 彼女が不安そうな顔で小首をかしけまる。

 反則だろう。
 可愛すぎる!!
 
 名 ばっと視線を逸らし、手で顔を覆っとしまう。

「いや、その・・・、凄くいいと、思う」
 
 言えたのはそれだけだった。
 朝からこんな彼女が誰かの目に晒されていたのだと思うと、無性にイライラする。
 かなり重症かもしれない。

「冬休みも終わりましたし、また研究を始めましょうか。先生、続きの資料はどこですか?」
「あぁ、これだ」
「アーサー様もがんばりましょう」
「そうだな・・・」

 このままやっていけるだろうか・・・。
 ノエルに気持ちを伝えたい。でも・・・こんな僕が告白してもいいのだろうか・・・。

 公爵家次男のなんの取り柄のないのに・・・。父や兄のように皇宮で働いて役職持ちでもない。叔父さんのように知名度があるわけでもない。自分の好きなことをしているだけの人間だ。
 そんな自分が叔父さんを慕い真摯に研究をして、前に進もうとしている彼女の足枷になるわけにいかない。彼女の行く道の邪魔になるかも・・・。

 それに、第一彼女の気持ちはどうなる。
 「変人」と言われる自分にそんな感情を抱くわけないだろう。
 彼女に失礼だ・・・。

 僕はどうしたいのだ?
 気持ちを隠す。

 研究を必死にした。
 屋敷に帰っても、ノエルのことを考えそうになるので、ライールと回った国々で書き留めたメモをまとめてみる。

 それでも、ノエルのことを考えた。
 
 ノエルの笑みが頭から離れず幾度もため息が出る。
 
 やはり、僕は・・・ノエルが好きなんだ。

 諦めきれない。
 じゃぁ、どうすればいい?

 僕はそれを考えだした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

決めたのはあなたでしょう?

みおな
恋愛
 ずっと好きだった人がいた。 だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。  どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。  なのに、今さら好きなのは私だと? 捨てたのはあなたでしょう。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...