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アーサー様は、古書の店に連れて行ってくれた。
「ここは僕のお勧めのとこだよ。叔父さん受け売りだけどね」
机や絨毯に並べられた丹精込めて作られただろう美しい表紙の本や、読み古された本などさまざまなものがある。目の前に並ぶ目にしたことない本を見て、興奮で喜びの声をあげそうになった。
くふっ♥︎
抑えようとして、逆に変な笑いがでてしまう。
聞こえたかしら?
そっとアーサー様を見れば、不思議そうな顔をむけていた。
「ノエル嬢?」
「なんですか?」
澄ました顔で答えれば、アーサー様はあさってを向き忍び笑いしはじめる。
やっぱり聞こえてたんだ!
「もぅ、アーサー様!笑わないで」
「ご、ごめん。そんなに気に入ってくれたのらよかった」
にこやかな顔を見ればそれ以上の文句はない。こんな素晴らしい場所に連れてきてくれたのだから。一人できていたなら、出会うことのなかっただろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って、再び本を見る。
「『コルクタック戦記』だわ」
「『アルダリス国伝説2』だ!!」
二人で叫ぶ。そして顔を見合わせて笑った。
話に花が咲く。店主さんも交えて知識自慢が始まる。横をゆく人たちが訝しげな眼差しを向けるのも気にならないくらい。最小的には値下げ交渉に勝つ。
「二人の知識に量に完敗だ!特別サービスするから、一冊ずつ好きな本を持っていきな。代わりに来年もオレの店にこいよ」
「はいっ!」
買い物は楽しかった。
抱えるのが大変なくらいの本を一度馬車に置いて、再び店々を回る。
雑貨屋にはお手頃なアクセサリーがあり、エマにお土産に買う。父や兄は何がいいかしら?
初めてのクレープというスィーツの食べ歩きに挑戦もした。歩くのと食べるのを一緒にするのが難しく困ってしまい、最終的に広場の噴水のヘリに座って食べる。
クリームの中にフルーツが入っていて美味しい。
青空の下でこうやって食べるのが楽しいとは。
「アーサー様、ノエル様もごきげんよう」
同じく骨董市にきていたクラスメイトもいく人か挨拶もしてくれた。
「楽しそうでよかった」
「アーサー様。付き合ってくださってありがとうございます」
「いや、僕もノエル嬢とこれたから、良かった」
「えっ・・・」
初めて会った時より柔和な眼差しをみて胸が温まる。
そんな時、彼の背後にありえない人物の姿が入ってきた。
「ノエル嬢?」
「・・・・・・あっ」
アーサー様が私の視線を追うように振り返る。
こんな場所で彼に会うなんて・・・。
「ノエル」
「・・・マルス、様・・・」
どうしているの?
「やっと会えたね」
彼はにっこりと笑いかけてくる。
「会いたかったよ。ノエル」
私は自分が震えるのを感じた。
「ここは僕のお勧めのとこだよ。叔父さん受け売りだけどね」
机や絨毯に並べられた丹精込めて作られただろう美しい表紙の本や、読み古された本などさまざまなものがある。目の前に並ぶ目にしたことない本を見て、興奮で喜びの声をあげそうになった。
くふっ♥︎
抑えようとして、逆に変な笑いがでてしまう。
聞こえたかしら?
そっとアーサー様を見れば、不思議そうな顔をむけていた。
「ノエル嬢?」
「なんですか?」
澄ました顔で答えれば、アーサー様はあさってを向き忍び笑いしはじめる。
やっぱり聞こえてたんだ!
「もぅ、アーサー様!笑わないで」
「ご、ごめん。そんなに気に入ってくれたのらよかった」
にこやかな顔を見ればそれ以上の文句はない。こんな素晴らしい場所に連れてきてくれたのだから。一人できていたなら、出会うことのなかっただろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って、再び本を見る。
「『コルクタック戦記』だわ」
「『アルダリス国伝説2』だ!!」
二人で叫ぶ。そして顔を見合わせて笑った。
話に花が咲く。店主さんも交えて知識自慢が始まる。横をゆく人たちが訝しげな眼差しを向けるのも気にならないくらい。最小的には値下げ交渉に勝つ。
「二人の知識に量に完敗だ!特別サービスするから、一冊ずつ好きな本を持っていきな。代わりに来年もオレの店にこいよ」
「はいっ!」
買い物は楽しかった。
抱えるのが大変なくらいの本を一度馬車に置いて、再び店々を回る。
雑貨屋にはお手頃なアクセサリーがあり、エマにお土産に買う。父や兄は何がいいかしら?
初めてのクレープというスィーツの食べ歩きに挑戦もした。歩くのと食べるのを一緒にするのが難しく困ってしまい、最終的に広場の噴水のヘリに座って食べる。
クリームの中にフルーツが入っていて美味しい。
青空の下でこうやって食べるのが楽しいとは。
「アーサー様、ノエル様もごきげんよう」
同じく骨董市にきていたクラスメイトもいく人か挨拶もしてくれた。
「楽しそうでよかった」
「アーサー様。付き合ってくださってありがとうございます」
「いや、僕もノエル嬢とこれたから、良かった」
「えっ・・・」
初めて会った時より柔和な眼差しをみて胸が温まる。
そんな時、彼の背後にありえない人物の姿が入ってきた。
「ノエル嬢?」
「・・・・・・あっ」
アーサー様が私の視線を追うように振り返る。
こんな場所で彼に会うなんて・・・。
「ノエル」
「・・・マルス、様・・・」
どうしているの?
「やっと会えたね」
彼はにっこりと笑いかけてくる。
「会いたかったよ。ノエル」
私は自分が震えるのを感じた。
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