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40.アーサー視点
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次の日の彼女は図書館に来た時くら暗いものだった。
「どうした?」
彼女に聞くと、作り笑いをしてくる。
重症だ。悩みを聞いてあげたいが、深入りするのはダメだろう。ライールの顔を思い出し、震えそうになる。
「いえ・・・、少し考え事を・・・」
彼女も詳しくは言わない。
でも、なんだかわかる気がした。
こんな悩み方は・・・将来のことや自分自身にまつわることだ。
僕は読んでいた本を閉じると身体を伸ばしながら天井を仰ぎ、首をほぐす。
「そういう時もあるよな~。俺も今は自由にさせてはもらってるけど、いずれ将来のことを真剣に考えないといけねぇし・・・」
「・・・意外ね」
「まぁ、ねぇ~」
びっくりしてる。そうだよな・・・。
僕もこれからどうしようかな・・・。
このままライールの元に?帝国に帰って外交官に・・・いや、らしくない。学者・・・?
そんな思いが頭をよぎっていると、彼女が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「・・・一つ聞くけど、学園は行ってないの?」
「おや?はじめて聞いてくるな」
少し意外で驚く。
会話していて、聡明だから苦手なものはないのかと思っていたが、そうでもないらしい。
「別に興味とかではないわ。二週間後にテストがあるの。学園を休んでるけど流石に受けに行かないといけないようなの。少しわからない所があるから、教えて欲しいと思っただけよ」
言い訳しているのに、強がってつんとしている。
そんな表情もするんだな・・・。
「留学という体でこの国にきただけだし、いいぞ。自国でも俺は優待性だからな」
少し自慢して言えば彼女は目を輝かせた。
それが可愛い。
ドキドキしてしまう。
「どこだ?」
そう聞くと、彼女は鞄から教科書を出してきた。図書館に持ってくるとは勉強熱心だな。
「へぇ~、意外だな。」
「言語や歴史とかは得意なんだけど、数学みたいな数字関連には苦手なのよ」
「わからんでもない。でも年代は覚えて置けるんだよな」
「そういえば、確かに・・・」
素朴な意見が出てきて笑ってしまう。
そして、二人で勉強した。
ふと見れば、僕らが二人きりにならないよう気を遣ってくれている司書のお姉さんは数字の勉強が子守唄に聞こえたのか居眠りをしている。
僕たちは顔を見合わせて、静かに笑い合った。
その後、彼女は学園のテスト週間に入り図書館に来ない日々が続く。
彼女がいないのは退屈で、図書館に行ってもすぐに帰った。
街に出たものの、物足りず結局帰って与えられた部屋でゴロゴロする。
明後日にはテスト終わるって言ってたよな・・・。そうなればー、また楽しい・・・。
早く時が過ぎないか?彼女のことを想像してニヤついてしまう。
そんな時、ライールが部屋に来た。
「こっちでいたか」
「あ、あぁ。どうかしたのか?」
「次の外交が決まった」
「へぇ~、いつから」
「明後日からだ」
「へっ??」
突然すぎだろう。身を起こし、ライールを凝視する。
あまりの衝撃に頭が追いつかない。
「急に決まった」
「そ、そうか・・・」
彼に留学の保証人になってもらっているので自分に拒否権はない。だけどいくらなんでも早いだろう・・・。
まだ、やり残してることもある・・・。
「明日には用意しておけ。明後日の朝には出るからな」
「・・・わかった」
僕は彼女に手紙を書くしかできなかった。
次の日には図書館に行き司書のお姉さんに手紙を彼女に渡してもらうよう託して、自分の部屋に帰って荷物をまとめた。
未練がある。
直接挨拶できないことがくやしい。
まだ彼女と研究をしたかった。
せめて・・・、せめて彼女の名前を知りたい。名前を呼んでみたかった。
涙が溢れ落ちる。
なんで涙がでるんだ・・・。寂しいなんて思うんだ?なんでだろう・・・。
「どうした?」
彼女に聞くと、作り笑いをしてくる。
重症だ。悩みを聞いてあげたいが、深入りするのはダメだろう。ライールの顔を思い出し、震えそうになる。
「いえ・・・、少し考え事を・・・」
彼女も詳しくは言わない。
でも、なんだかわかる気がした。
こんな悩み方は・・・将来のことや自分自身にまつわることだ。
僕は読んでいた本を閉じると身体を伸ばしながら天井を仰ぎ、首をほぐす。
「そういう時もあるよな~。俺も今は自由にさせてはもらってるけど、いずれ将来のことを真剣に考えないといけねぇし・・・」
「・・・意外ね」
「まぁ、ねぇ~」
びっくりしてる。そうだよな・・・。
僕もこれからどうしようかな・・・。
このままライールの元に?帝国に帰って外交官に・・・いや、らしくない。学者・・・?
そんな思いが頭をよぎっていると、彼女が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「・・・一つ聞くけど、学園は行ってないの?」
「おや?はじめて聞いてくるな」
少し意外で驚く。
会話していて、聡明だから苦手なものはないのかと思っていたが、そうでもないらしい。
「別に興味とかではないわ。二週間後にテストがあるの。学園を休んでるけど流石に受けに行かないといけないようなの。少しわからない所があるから、教えて欲しいと思っただけよ」
言い訳しているのに、強がってつんとしている。
そんな表情もするんだな・・・。
「留学という体でこの国にきただけだし、いいぞ。自国でも俺は優待性だからな」
少し自慢して言えば彼女は目を輝かせた。
それが可愛い。
ドキドキしてしまう。
「どこだ?」
そう聞くと、彼女は鞄から教科書を出してきた。図書館に持ってくるとは勉強熱心だな。
「へぇ~、意外だな。」
「言語や歴史とかは得意なんだけど、数学みたいな数字関連には苦手なのよ」
「わからんでもない。でも年代は覚えて置けるんだよな」
「そういえば、確かに・・・」
素朴な意見が出てきて笑ってしまう。
そして、二人で勉強した。
ふと見れば、僕らが二人きりにならないよう気を遣ってくれている司書のお姉さんは数字の勉強が子守唄に聞こえたのか居眠りをしている。
僕たちは顔を見合わせて、静かに笑い合った。
その後、彼女は学園のテスト週間に入り図書館に来ない日々が続く。
彼女がいないのは退屈で、図書館に行ってもすぐに帰った。
街に出たものの、物足りず結局帰って与えられた部屋でゴロゴロする。
明後日にはテスト終わるって言ってたよな・・・。そうなればー、また楽しい・・・。
早く時が過ぎないか?彼女のことを想像してニヤついてしまう。
そんな時、ライールが部屋に来た。
「こっちでいたか」
「あ、あぁ。どうかしたのか?」
「次の外交が決まった」
「へぇ~、いつから」
「明後日からだ」
「へっ??」
突然すぎだろう。身を起こし、ライールを凝視する。
あまりの衝撃に頭が追いつかない。
「急に決まった」
「そ、そうか・・・」
彼に留学の保証人になってもらっているので自分に拒否権はない。だけどいくらなんでも早いだろう・・・。
まだ、やり残してることもある・・・。
「明日には用意しておけ。明後日の朝には出るからな」
「・・・わかった」
僕は彼女に手紙を書くしかできなかった。
次の日には図書館に行き司書のお姉さんに手紙を彼女に渡してもらうよう託して、自分の部屋に帰って荷物をまとめた。
未練がある。
直接挨拶できないことがくやしい。
まだ彼女と研究をしたかった。
せめて・・・、せめて彼女の名前を知りたい。名前を呼んでみたかった。
涙が溢れ落ちる。
なんで涙がでるんだ・・・。寂しいなんて思うんだ?なんでだろう・・・。
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