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アルタス帝国はすごい、としかいいようがなかった。
一つの建物が高くて大きい。そして街の至る所に彫刻があった。芸術文化が発達しているのは平和で都市が繁栄しているということだと、何かの文献に書いてあったのを思い出す。
二週間かけて帝国にきたかいはあるというもの。
私は帝国学園の寮に入ることが決まっているので、そこに向かった。
手続きをして入寮する。
慣れないことに手間取りながら与えられた部屋に入った。あまりに疲れていたの片付けもそこそこに寝てしまう。
次の朝、起きたのが時間ギリギリだったことに驚く。しかも、侍女がいないのに起きてしばらく待つという恥ずかしい行動を起こす。
こんなに自分で身の回りのことをするのが大変だと思わなかった。
しかも、何かと物にぶつかり、食堂に行く間にも段差につまづく。
この環境に早く慣れないと・・・。
ゆっくり朝食を摂ることもできなかったうえ、うまく髪も結えなかったし、寝癖を治すのもできないままの状態で学園に行くはめになった。
学園長室に行くと、学園長先生が私の姿を見て自愛に満ちた眼差しをむけてくる。
「苦労したようだな」
「・・・・・・」
ううっ・・・、もう少しちゃんとすればよかった。恥ずかしい・・・。
居た堪れなくて俯く。
「ゆっくり慣れてゆけばいい」
「・・・はい。ありがとうございます。これから、よろしくお願いします」
「ああ。よろしく。もうすぐすれば案内役の委員長がくる」
学園長がそう言った時、ノックの音が聞こえ、一人の女生徒が入ってきた。
ダークブラウン髪と目をしている。ふわふわの髪が流行りの人形のようなで可愛い。
「エマ・ヴァンダー侯爵令嬢だ。君が転入する一年生のクラス委員長を務めている。あと、我が校きっての変人と揶揄されるアルバート博士の姪になる」
「はじめまして。エマ・ヴァンダーです」
声も可愛い。
というより、なんだか聞き慣れないフレーズがいくつか聞こえてきた。気のせい?だろうか・・・。
「はじめまして。トルスター国からきました、ノエル・エルトニーです」
彼女は、私をじっと見できたかと思うと小首を傾げた。
「目、なんで隠してるの?」
ドキッ・・・。
身体がこわばった。
起きてからのバタバタで、身だしなみの不十分さの方に気を取られ、傷に対する劣等感どころでなかった気がする。
なんで、傷のことを忘れていたのだろう・・・。
そのことに自分自身びっくりした。
だが、すぐに我に返る。
一度思い出せば怖いものとなって不安が一気に押し寄せてきた。
どうする?正直に見せる?話す?
それとも隠す?
でも、いずれ知られるなら今のうちに話をしたほうがいい・・・。
私は恐る恐る左目を隠す長い髪を耳にかける。傷を彼女に晒した。
「かっこいい・・・」
彼女は目を輝かせ呟く。
「えっ?」
なんて言った?
「あっ、ごめんなさい。綺麗な色でかっこよくてつい・・・」
「綺麗?かっこいい?」
はじめて聞いた。言われたことのないセリフに驚く。
「え・・・?えっ?やだ!なんで泣くの??」
涙が出る。すごく嬉しい。私自身を受け入れてくれたように思えた。
「エマ。泣かせるな」
学園長の意地悪そうな声にエマは不満そうだ。
「ええっ、わたしのせい??」
彼女は私が落ち着くまで背中を優しくなぜてくれた。
一つの建物が高くて大きい。そして街の至る所に彫刻があった。芸術文化が発達しているのは平和で都市が繁栄しているということだと、何かの文献に書いてあったのを思い出す。
二週間かけて帝国にきたかいはあるというもの。
私は帝国学園の寮に入ることが決まっているので、そこに向かった。
手続きをして入寮する。
慣れないことに手間取りながら与えられた部屋に入った。あまりに疲れていたの片付けもそこそこに寝てしまう。
次の朝、起きたのが時間ギリギリだったことに驚く。しかも、侍女がいないのに起きてしばらく待つという恥ずかしい行動を起こす。
こんなに自分で身の回りのことをするのが大変だと思わなかった。
しかも、何かと物にぶつかり、食堂に行く間にも段差につまづく。
この環境に早く慣れないと・・・。
ゆっくり朝食を摂ることもできなかったうえ、うまく髪も結えなかったし、寝癖を治すのもできないままの状態で学園に行くはめになった。
学園長室に行くと、学園長先生が私の姿を見て自愛に満ちた眼差しをむけてくる。
「苦労したようだな」
「・・・・・・」
ううっ・・・、もう少しちゃんとすればよかった。恥ずかしい・・・。
居た堪れなくて俯く。
「ゆっくり慣れてゆけばいい」
「・・・はい。ありがとうございます。これから、よろしくお願いします」
「ああ。よろしく。もうすぐすれば案内役の委員長がくる」
学園長がそう言った時、ノックの音が聞こえ、一人の女生徒が入ってきた。
ダークブラウン髪と目をしている。ふわふわの髪が流行りの人形のようなで可愛い。
「エマ・ヴァンダー侯爵令嬢だ。君が転入する一年生のクラス委員長を務めている。あと、我が校きっての変人と揶揄されるアルバート博士の姪になる」
「はじめまして。エマ・ヴァンダーです」
声も可愛い。
というより、なんだか聞き慣れないフレーズがいくつか聞こえてきた。気のせい?だろうか・・・。
「はじめまして。トルスター国からきました、ノエル・エルトニーです」
彼女は、私をじっと見できたかと思うと小首を傾げた。
「目、なんで隠してるの?」
ドキッ・・・。
身体がこわばった。
起きてからのバタバタで、身だしなみの不十分さの方に気を取られ、傷に対する劣等感どころでなかった気がする。
なんで、傷のことを忘れていたのだろう・・・。
そのことに自分自身びっくりした。
だが、すぐに我に返る。
一度思い出せば怖いものとなって不安が一気に押し寄せてきた。
どうする?正直に見せる?話す?
それとも隠す?
でも、いずれ知られるなら今のうちに話をしたほうがいい・・・。
私は恐る恐る左目を隠す長い髪を耳にかける。傷を彼女に晒した。
「かっこいい・・・」
彼女は目を輝かせ呟く。
「えっ?」
なんて言った?
「あっ、ごめんなさい。綺麗な色でかっこよくてつい・・・」
「綺麗?かっこいい?」
はじめて聞いた。言われたことのないセリフに驚く。
「え・・・?えっ?やだ!なんで泣くの??」
涙が出る。すごく嬉しい。私自身を受け入れてくれたように思えた。
「エマ。泣かせるな」
学園長の意地悪そうな声にエマは不満そうだ。
「ええっ、わたしのせい??」
彼女は私が落ち着くまで背中を優しくなぜてくれた。
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