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19.ロード先生
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いざ、彼女に会うと興味を惹かれた。
ライールとよく似た綺麗な銀色の髪と水色の瞳を持つおとなしそう子。左目は髪で隠れているので噂に聞く傷があるのか分からなかった。
そんな子があの論文を書いたと思うと興味が湧いた。
しかも、留学希望。おもしろい。
だが、はじめに抱いた印象とは違った側面もあった。
彼女は、僕の部屋に来るまではどこかおどおどしている。部屋で授業を受けたりや論文を書いているときは何でもないが、一歩外へゆくと別人になる。
彼女は絶えず聞こえてくる対悪意の言葉に怯えていた。敏感に反応して萎縮している。
あぁ・・・。
自信がないのか。
彼女は顔の傷にとらわれている・・・。
でも、彼らはその傷を直接見たことがあるのだろうか?
僕でさえ片手に満たさないぐらいしか見ていない。
彼女は傷を見られないように細心の注意を払っている。僕が見たのも集中している彼女を呼びかけて、「はい?」と無防備に顔を挙げた際にちらりと見えたぐらいなのだ。
色素が薄い顔に確かにあの青黒い傷は目立つ。だが、それがなんなのか。
傷があるだけで偏見を持つことがおかしいのではと思う。
小さくなって生きている彼女が可哀想だ。
きっと僕みたいに『変わり者』には無意識に心を開いているのだろう。
どうにかしてあげたい。
でも難しいことも知っている。
脳裏に王立大図書館に勤める司書の女性を思い起こした。彼女も女性だからと苦労した人物だ。必死に勉強していたのを知っている。
他人に馬鹿にされながらも自分の目標に喰らいついて今の場所に収まっていた。
だが、彼女も自分の領域から出るのを嫌がっているのを知っている。
彼女たちがもっと自由であればいいのにー。
ノエル嬢は優秀だ。そんな彼女が自分らしく生きていけないのは可哀想だった。
そのためにも僕が動かなければと思った。
こんなに生徒に対して情熱を持つのはいつぶりだろう。
彼女にテストの際に提出した論文を国王陛下に見せたことを伝えれば、びっくりしていた顔が面白かった。ふらふらと外に出る姿を見れたことがやり遂げ感がでる。
しかし、部屋を出て行ったはずのノエル嬢が10分も経たずに部屋に帰ってきた。
その顔はこわばっている。
「どうしたんだい?」
今にも泣き出しそうな小さな子供の表情を見せた。
「私は・・・、好きなことを諦めないといけないのですか?」
「ノエル君・・・」
たくさん溜め込んでいるのだろう。
「君の気持ちを全て吐いてみなさい」
水色の目から涙が溢れてきた。
嗚咽となる。
「本を読むのはダメ、なの?傷があるから?見られないためには屋敷の中で刺繍をしないといけないの?なんで?なんで好きなようにしちゃダメなのよ」
僕は頷きながら聞くだけしかしなかった。今の彼女に慰めるのではダメだ。言葉だけの希望だけを持たすのは違う。
形として示してあげなくては・・・。
教師としての自分の役割を果たそう。
ライールとよく似た綺麗な銀色の髪と水色の瞳を持つおとなしそう子。左目は髪で隠れているので噂に聞く傷があるのか分からなかった。
そんな子があの論文を書いたと思うと興味が湧いた。
しかも、留学希望。おもしろい。
だが、はじめに抱いた印象とは違った側面もあった。
彼女は、僕の部屋に来るまではどこかおどおどしている。部屋で授業を受けたりや論文を書いているときは何でもないが、一歩外へゆくと別人になる。
彼女は絶えず聞こえてくる対悪意の言葉に怯えていた。敏感に反応して萎縮している。
あぁ・・・。
自信がないのか。
彼女は顔の傷にとらわれている・・・。
でも、彼らはその傷を直接見たことがあるのだろうか?
僕でさえ片手に満たさないぐらいしか見ていない。
彼女は傷を見られないように細心の注意を払っている。僕が見たのも集中している彼女を呼びかけて、「はい?」と無防備に顔を挙げた際にちらりと見えたぐらいなのだ。
色素が薄い顔に確かにあの青黒い傷は目立つ。だが、それがなんなのか。
傷があるだけで偏見を持つことがおかしいのではと思う。
小さくなって生きている彼女が可哀想だ。
きっと僕みたいに『変わり者』には無意識に心を開いているのだろう。
どうにかしてあげたい。
でも難しいことも知っている。
脳裏に王立大図書館に勤める司書の女性を思い起こした。彼女も女性だからと苦労した人物だ。必死に勉強していたのを知っている。
他人に馬鹿にされながらも自分の目標に喰らいついて今の場所に収まっていた。
だが、彼女も自分の領域から出るのを嫌がっているのを知っている。
彼女たちがもっと自由であればいいのにー。
ノエル嬢は優秀だ。そんな彼女が自分らしく生きていけないのは可哀想だった。
そのためにも僕が動かなければと思った。
こんなに生徒に対して情熱を持つのはいつぶりだろう。
彼女にテストの際に提出した論文を国王陛下に見せたことを伝えれば、びっくりしていた顔が面白かった。ふらふらと外に出る姿を見れたことがやり遂げ感がでる。
しかし、部屋を出て行ったはずのノエル嬢が10分も経たずに部屋に帰ってきた。
その顔はこわばっている。
「どうしたんだい?」
今にも泣き出しそうな小さな子供の表情を見せた。
「私は・・・、好きなことを諦めないといけないのですか?」
「ノエル君・・・」
たくさん溜め込んでいるのだろう。
「君の気持ちを全て吐いてみなさい」
水色の目から涙が溢れてきた。
嗚咽となる。
「本を読むのはダメ、なの?傷があるから?見られないためには屋敷の中で刺繍をしないといけないの?なんで?なんで好きなようにしちゃダメなのよ」
僕は頷きながら聞くだけしかしなかった。今の彼女に慰めるのではダメだ。言葉だけの希望だけを持たすのは違う。
形として示してあげなくては・・・。
教師としての自分の役割を果たそう。
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