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43.最終話
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目が覚めた。
大切な長い夢を見ていた。
「セシー?」
目の前にロイがいる。
あの頃と変わらない眼差し。でも、その顔は年月を重ねた証がしっかりと刻まれていた。それでもわたしにとって大事な人。
「ロイ・・・夢を見てたわ・・・」
「どんな?」
「貴方に会って、貴方に助けられた、夢」
「懐かしい夢、だね」
懐かしい。
あれからどれほどの月日が経ったのだろうか。
あれから、一年後ロイの妻になった。
ロイとわたしは『永久の妻』の契約をした。それをすれば側妃持てなくなるというのに、ロイは強引に契約した。わたしは彼の思いを受け入れた。
わたしたちは謳われる。
『母の娼婦』だったこともいつの間にか美談になっていた。
王家の落とし子を身をもって隠した聖女と・・・。そんな娘であるわたしは屈強にたち向かった聖なる乙女だと。
国を追われた少年は聖なる乙女の為に皇帝を目指し、皇帝になった暁に聖なる乙女を探し出し皇妃として迎えたのだとー。
おもしろおかしく・・・。
母の名誉が回復するならばそれもいいかもしれないと、口を挟まないでいると劇にまでなっていたのには驚いた。ステンドグラスにも描かれていた。
それを見てロイと笑らいあったわ。
わたしたちには三人の息子とニ人の娘が生まれた。
その間たくさんの事が起きた。
国境のこぜり合いもあったし、大雨で水害があったことも。病気が蔓延したこともあった。
二人で支えて、協力し合ってきた。
時には周りの力を求めることもあった。
苦しいこともあったし、悲しいことも。でもそれ以上に楽しいこともいっぱい、いっぱいあった。
子育てもそう。たくさん怒って、笑ってみんなで笑い合った。幸せだった。
小さな頃は喧嘩もあったが今では仲の良い子たち。
今はみんな立派になっている。
長男は皇帝になり、二男は騎士になり三男は学者になって皇帝に力を貸している。
長女は公爵家に嫁いだ。二女はグラフィアス国の王太子妃に収まった。
グリフィアス国はわたしの弟であるアルバートが国王になった。お父様の力添えもあったが、勤勉な弟は必死で頑張った。そして、婚約者になったイザベラのおかげもあるー。
そう、イザベラは王妃になった。教育もしっかりできていた彼女以外相応しい人はいなかった。
わたしたちはずっと親友でいた。
お互いに行き来して交流を深めた。
ロイやアルバートが苦言するほど。
子供たちも交流があったため、皇族特有の一途さで二女はイザベラの息子に一目惚れをし必死で自分磨きをして見初めてもらったのだ。
わたしたちは嬉しくて笑い合った。
イザベラは二人の結婚式を見て一年後亡くなった。
病気だった。
わたしに隠していた。
「気を遣われたくないのよ」
そうアルバートに言っていたらしい。
彼女らしくて笑ってしまった。
猫目の眼差しが細くなる姿が容易に想像できた。
行く年も経てば、大事な人も歳をとる。
お祖父様は次男を見た後亡くなった。
老衰だった。ひ孫に囲まれた幸せそうだった。
お父様は事故だった。
長雨で地盤が緩み崖崩れがあった。その現場に赴いていた時二次被害にあったのだ。
助けてられたものの臓器を損傷していた。なんとか息を引き取る寸前に会う事ができた。その顔は満ち足りたものだった。
アナスタシア様、マザー、リチャードさん・・・叔父様。
次々とわたしの前から消えた。
それでも次へと繋がるかけがえのない者たちを残しバトンを渡してー。
辛さのなかの希望を与えてくれた。
今わたしは死の床についている。
わたしの人生に悔いはない。
大事な宝物が目の前にある。
孫やひ孫の小さな手がわたしを握っている。
「母上」
「母様・・・」
「お祖母様」
生きてきた証がここにある。
「セシリア」
「ロイ、起こして、くれる」
「あぁ」
ロイが起き上がらせてくれ後ろから支えてくれた。
みんなな顔がみれる。
「泣かないで。みんなの笑顔がみたいわ」
口が引き攣りながらみんな笑ってくれる。
涙を流しながらのぎこちない笑顔。
鼻を啜る音。
嗚咽を我慢する音。
幸せの音色ね。
こんなにもわたしを愛してくれている。
わたしはロイに身体を預けながら呟いた。
「ロイ。わたしね、お母さんが羨ましかった」
「・・・どうして?」
「死ぬ時、お父様に抱きしめてもらえて。あまりに綺麗で、幸せそうで、いつかわたしも死ぬ時は大事な人に抱きしめられて死にたいって」
「・・・っ」
「幸せだわ」
「セシリア」
「ロイ。すぐに来てはダメよ。ちゃんとこれからを見届けてからきてよ」
「セシリア・・・」
ロイの腕に力が入った。
貴方の腕の中は温かい。
たくさんの思い出とわたしへの愛がこもっているから。
「愛してるわ、みんな。
愛してるわ、ロイ。
幸せだったわ・・・・・・、
ありがとう・・・」
ー皇帝手記ー
母セシリアの亡き三年後、父ロイド亡くなる。
母の遺言通りわたしのなす事を、兄弟たちの様子を見守ってくれた。孫やひ孫とも関わりを持ち楽しそう暮らしていた。穏やかな生活をしていた。
亡くなる時『これで母上に怒られずにすむ』と笑いながら目を閉じた。
二人はずっと仲の良い夫婦だった。
幸せそうな夫婦だったー。
~オスタニア帝国伝記 より抜粋~
ーおわりー
大切な長い夢を見ていた。
「セシー?」
目の前にロイがいる。
あの頃と変わらない眼差し。でも、その顔は年月を重ねた証がしっかりと刻まれていた。それでもわたしにとって大事な人。
「ロイ・・・夢を見てたわ・・・」
「どんな?」
「貴方に会って、貴方に助けられた、夢」
「懐かしい夢、だね」
懐かしい。
あれからどれほどの月日が経ったのだろうか。
あれから、一年後ロイの妻になった。
ロイとわたしは『永久の妻』の契約をした。それをすれば側妃持てなくなるというのに、ロイは強引に契約した。わたしは彼の思いを受け入れた。
わたしたちは謳われる。
『母の娼婦』だったこともいつの間にか美談になっていた。
王家の落とし子を身をもって隠した聖女と・・・。そんな娘であるわたしは屈強にたち向かった聖なる乙女だと。
国を追われた少年は聖なる乙女の為に皇帝を目指し、皇帝になった暁に聖なる乙女を探し出し皇妃として迎えたのだとー。
おもしろおかしく・・・。
母の名誉が回復するならばそれもいいかもしれないと、口を挟まないでいると劇にまでなっていたのには驚いた。ステンドグラスにも描かれていた。
それを見てロイと笑らいあったわ。
わたしたちには三人の息子とニ人の娘が生まれた。
その間たくさんの事が起きた。
国境のこぜり合いもあったし、大雨で水害があったことも。病気が蔓延したこともあった。
二人で支えて、協力し合ってきた。
時には周りの力を求めることもあった。
苦しいこともあったし、悲しいことも。でもそれ以上に楽しいこともいっぱい、いっぱいあった。
子育てもそう。たくさん怒って、笑ってみんなで笑い合った。幸せだった。
小さな頃は喧嘩もあったが今では仲の良い子たち。
今はみんな立派になっている。
長男は皇帝になり、二男は騎士になり三男は学者になって皇帝に力を貸している。
長女は公爵家に嫁いだ。二女はグラフィアス国の王太子妃に収まった。
グリフィアス国はわたしの弟であるアルバートが国王になった。お父様の力添えもあったが、勤勉な弟は必死で頑張った。そして、婚約者になったイザベラのおかげもあるー。
そう、イザベラは王妃になった。教育もしっかりできていた彼女以外相応しい人はいなかった。
わたしたちはずっと親友でいた。
お互いに行き来して交流を深めた。
ロイやアルバートが苦言するほど。
子供たちも交流があったため、皇族特有の一途さで二女はイザベラの息子に一目惚れをし必死で自分磨きをして見初めてもらったのだ。
わたしたちは嬉しくて笑い合った。
イザベラは二人の結婚式を見て一年後亡くなった。
病気だった。
わたしに隠していた。
「気を遣われたくないのよ」
そうアルバートに言っていたらしい。
彼女らしくて笑ってしまった。
猫目の眼差しが細くなる姿が容易に想像できた。
行く年も経てば、大事な人も歳をとる。
お祖父様は次男を見た後亡くなった。
老衰だった。ひ孫に囲まれた幸せそうだった。
お父様は事故だった。
長雨で地盤が緩み崖崩れがあった。その現場に赴いていた時二次被害にあったのだ。
助けてられたものの臓器を損傷していた。なんとか息を引き取る寸前に会う事ができた。その顔は満ち足りたものだった。
アナスタシア様、マザー、リチャードさん・・・叔父様。
次々とわたしの前から消えた。
それでも次へと繋がるかけがえのない者たちを残しバトンを渡してー。
辛さのなかの希望を与えてくれた。
今わたしは死の床についている。
わたしの人生に悔いはない。
大事な宝物が目の前にある。
孫やひ孫の小さな手がわたしを握っている。
「母上」
「母様・・・」
「お祖母様」
生きてきた証がここにある。
「セシリア」
「ロイ、起こして、くれる」
「あぁ」
ロイが起き上がらせてくれ後ろから支えてくれた。
みんなな顔がみれる。
「泣かないで。みんなの笑顔がみたいわ」
口が引き攣りながらみんな笑ってくれる。
涙を流しながらのぎこちない笑顔。
鼻を啜る音。
嗚咽を我慢する音。
幸せの音色ね。
こんなにもわたしを愛してくれている。
わたしはロイに身体を預けながら呟いた。
「ロイ。わたしね、お母さんが羨ましかった」
「・・・どうして?」
「死ぬ時、お父様に抱きしめてもらえて。あまりに綺麗で、幸せそうで、いつかわたしも死ぬ時は大事な人に抱きしめられて死にたいって」
「・・・っ」
「幸せだわ」
「セシリア」
「ロイ。すぐに来てはダメよ。ちゃんとこれからを見届けてからきてよ」
「セシリア・・・」
ロイの腕に力が入った。
貴方の腕の中は温かい。
たくさんの思い出とわたしへの愛がこもっているから。
「愛してるわ、みんな。
愛してるわ、ロイ。
幸せだったわ・・・・・・、
ありがとう・・・」
ー皇帝手記ー
母セシリアの亡き三年後、父ロイド亡くなる。
母の遺言通りわたしのなす事を、兄弟たちの様子を見守ってくれた。孫やひ孫とも関わりを持ち楽しそう暮らしていた。穏やかな生活をしていた。
亡くなる時『これで母上に怒られずにすむ』と笑いながら目を閉じた。
二人はずっと仲の良い夫婦だった。
幸せそうな夫婦だったー。
~オスタニア帝国伝記 より抜粋~
ーおわりー
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