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何度、ロイと二人でお茶を飲んだか。二人で庭を探索したか。
みんなで笑い合ったか。
バルやボブだけではなく、他の小さな子たちも交えて遊ぶ。
わたしの中にかけがえのないものが増えていく。
寂しかった心を温めてくれる。
わたしはこれから何がしたいのか、何ができるのか。
どうすれば、それが叶うのか?
どうすれば、返せるのか?
忙しい時間の合間を縫ってやって来てくれるロイ。
それが嬉しく感じる自分がいる。
笑いかけてくれるだけで幸せになれる自分がいる。
ただ、そこにいてくれるだけで愛おしく想う自分がいる。
自分の気持ちにもう蓋をしたくなかった。
彼の隣に立つにはまだまだ未熟かもしれない。でも、今のわたしには支えてくれる人がたくさんいる。
悩みを聞いてくれる人も、助言をしてくれる人も。力になってくれる人も。諌めてくれる人も。
なら、迷わない。
ロイとまた植物公園に行った。
春は終わりを見せていたが花はまだ満開だった。
それは、わたしが思っていた以上の素晴らしい景色だった。
淡い色から濃い色合いまでさまざまな花が咲き誇り、風に揺られていた。風によって花びらが巻き上げられている。
花嵐だ。
髪にいくつも花びらがくっつく。
風に乗って甘い匂いが漂ってくる。花独特の香りは心を華やかにする。
新芽の黄緑色の柔らかい葉が風に擦れ、ハミングをしているような音を奏でている。
鳥たちは楽しそうに歌っている。
あの声はヒバリの声だろうか。
世界が美しいと感じた。
「いっぱい花がついたね」
そう言って、ロイはわたしの髪についた花びらを一つずつとってくれた。
「ロイ様。以前のお返事をさせてください」
ぴくりと手が止まる。
神妙な面持ちでわたしを見てくる。
「うん」
深呼吸をして、ロイをまっすぐに見た。
「わたし・・・わたしは貴方の隣に立っていたいです」
「うん」
「ずっとわたしを見てくれました。支えてくれました。寄り添ってくれました。安心していられた。わたしはずっと貴方の側でいたいです。こんなわたしでいいのか不安だけど、貴方の力になりたい。貴方が愛してるから」
「うん」
ロイはとろけるような笑顔で抱きしめてくれた。
わたしは彼の胸に顔を埋めた。
温かな日差しの匂いがする。
「ありがとう。セシリア、愛してる」
唇が重なる。
痺れるような感覚。
お互いの顔が間近にあることが恥ずかしかった。
「ロイ、お願いがあるの」
「なに?」
「わたしね、ここのみんなが好きなの。いつも笑顔でいて欲しいと思うの。だからお返しがしたいの。協力してくれる?」
「それは、個人的な僕に?それとも皇帝としての僕に?」
「う~ん・・・。皇帝陛下にお願い、かな」
「それでは、全力をつくそうかな。君も手伝ってくれるんだろう?」
「ふふっ、もちろんよ」
風が吹き、花びらが舞い上がった。
みんなで笑い合ったか。
バルやボブだけではなく、他の小さな子たちも交えて遊ぶ。
わたしの中にかけがえのないものが増えていく。
寂しかった心を温めてくれる。
わたしはこれから何がしたいのか、何ができるのか。
どうすれば、それが叶うのか?
どうすれば、返せるのか?
忙しい時間の合間を縫ってやって来てくれるロイ。
それが嬉しく感じる自分がいる。
笑いかけてくれるだけで幸せになれる自分がいる。
ただ、そこにいてくれるだけで愛おしく想う自分がいる。
自分の気持ちにもう蓋をしたくなかった。
彼の隣に立つにはまだまだ未熟かもしれない。でも、今のわたしには支えてくれる人がたくさんいる。
悩みを聞いてくれる人も、助言をしてくれる人も。力になってくれる人も。諌めてくれる人も。
なら、迷わない。
ロイとまた植物公園に行った。
春は終わりを見せていたが花はまだ満開だった。
それは、わたしが思っていた以上の素晴らしい景色だった。
淡い色から濃い色合いまでさまざまな花が咲き誇り、風に揺られていた。風によって花びらが巻き上げられている。
花嵐だ。
髪にいくつも花びらがくっつく。
風に乗って甘い匂いが漂ってくる。花独特の香りは心を華やかにする。
新芽の黄緑色の柔らかい葉が風に擦れ、ハミングをしているような音を奏でている。
鳥たちは楽しそうに歌っている。
あの声はヒバリの声だろうか。
世界が美しいと感じた。
「いっぱい花がついたね」
そう言って、ロイはわたしの髪についた花びらを一つずつとってくれた。
「ロイ様。以前のお返事をさせてください」
ぴくりと手が止まる。
神妙な面持ちでわたしを見てくる。
「うん」
深呼吸をして、ロイをまっすぐに見た。
「わたし・・・わたしは貴方の隣に立っていたいです」
「うん」
「ずっとわたしを見てくれました。支えてくれました。寄り添ってくれました。安心していられた。わたしはずっと貴方の側でいたいです。こんなわたしでいいのか不安だけど、貴方の力になりたい。貴方が愛してるから」
「うん」
ロイはとろけるような笑顔で抱きしめてくれた。
わたしは彼の胸に顔を埋めた。
温かな日差しの匂いがする。
「ありがとう。セシリア、愛してる」
唇が重なる。
痺れるような感覚。
お互いの顔が間近にあることが恥ずかしかった。
「ロイ、お願いがあるの」
「なに?」
「わたしね、ここのみんなが好きなの。いつも笑顔でいて欲しいと思うの。だからお返しがしたいの。協力してくれる?」
「それは、個人的な僕に?それとも皇帝としての僕に?」
「う~ん・・・。皇帝陛下にお願い、かな」
「それでは、全力をつくそうかな。君も手伝ってくれるんだろう?」
「ふふっ、もちろんよ」
風が吹き、花びらが舞い上がった。
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