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それからの母との時間は短いものだった。
母は起き上がることもできずにベッドの上で毎日を過ごした。
私はロイと花を買いに行く。
皇帝である、ロイに気が引け、何度か遠慮をもうしでたが、「僕以外とは行かせせたくないから」と、付き添ってくれる。
季節を先どりした花を腕いっぱいに買い込む。
母には、寂しい思いをして欲しくなかった。
楽しくいて欲しくて毎日毎日、母の側でいた。お父さんも同じらしく、部屋の外でロイと何かと話し込んでは、部屋に入ってくる。
ロイもお父さんも、この屋敷に仕事場を設けたらしい。
お父さんにいたっては、母の側に机を持ってきているのだからー。
母とマザー、私とおしゃべりをしていると、仕事の手を止め、にこにこと笑っている。
「お仕事、してください」
そう母にいわれると、お父さんは口を尖らせている。
「だって可愛いのに・・・」
大きな子供みたい。
少しだけ『お父さん』と呼ぶのを早まったのてはないかと思うこともあった。
「仕事をしている、かっこよさを見せてあげて、ください」
母の一言で、やる気を見せるお父さん。
笑う母。
マザーと私も笑う。
おじいちゃんとも話す。
母の子供の頃の話を。
私の知らない母が、そこにいた。
生意気な事を言って大人を困らしたこと。
木登りをしたこと・・・。
私と変わらない少女が隣にいるように感じだ。自由に生きた明るい少女がー。
そして、王太子妃教育の過酷さ。
表情を出さないようにする術。外交交渉について。前王妃様からの教育のことを・・・。外部に知られてはいけない事のはず。
政治的に裏切りにあたるのでは?・・・と聞けば、「そんなことを気にしなくても、壊れる時は簡単に壊れるものよ。こんな事で国が潰れるならそれまでのことね」と笑っていた。
母は、あの国を見限ったのだろう。
当然だが・・・。
そのおかげで、私は救われたのだから今更なのではあるのだが・・・。
母の話はとても楽しかった。
だから、だからー、こんなに早いとは思わなかった。
結婚式をして1ヶ月もしないうちに、母はお父さんの腕中で息を引き取った。
最期に母は言った。
「わたくしを忘れてくださいね」
「何を言ってる。僕らは『永久の誓い』をしたんだ。君は『永久の妻』だよ。君の死後、僕が君以外の誰かを娶ろうものなら、神罰が下されるよ」
「マゼル様は・・・、本当に・・・」
「君を愛してるからね」
「貴方に最期に逢えて、幸せ、でしたわ。マゼル様、後はお願い、します」
「うん」
母はこちらを見た。
「お父様、セシリアをお願いします」
「わかった。安心しろ。ひ孫ができるまでは死ぬ気はないからな」
ふふふっと笑う。
「セシリア」
「・・・は、い・・・」
「ごめんなさいね。我儘な母親で。出来損ないの母親で」
頭を振る。
できそこないなんかじゃない。
私のせいだ。
私の所為なのだ。
こいこいと手招く。
母は、近づいた私の手を引っ張った。
いきなりのことで、バランスを崩し母の胸に飛び込む形になった。
母は、私を抱きしめた。
耳元で、囁かれる。
「生まれてきて、ありがとう・・・」
ありがとう?
本当に?
「あなたに会えたことを後悔していないわ。セシリア」
「かあ、さん・・・?」
「・・・セシリア、あし、てるわ」
ゆっくりと目が閉じられた。
息が、呼吸が止まる。
腕の力が失われていく。
「かあさん!かあさんっ!!」
涙が止まらなかった。
ロイが後ろから抱きしめてくれた。
私は泣いた。
泣いた。
誰もが泣いた。
母は笑っていた。
最期まで幸せそうに、笑っていたー。
母は起き上がることもできずにベッドの上で毎日を過ごした。
私はロイと花を買いに行く。
皇帝である、ロイに気が引け、何度か遠慮をもうしでたが、「僕以外とは行かせせたくないから」と、付き添ってくれる。
季節を先どりした花を腕いっぱいに買い込む。
母には、寂しい思いをして欲しくなかった。
楽しくいて欲しくて毎日毎日、母の側でいた。お父さんも同じらしく、部屋の外でロイと何かと話し込んでは、部屋に入ってくる。
ロイもお父さんも、この屋敷に仕事場を設けたらしい。
お父さんにいたっては、母の側に机を持ってきているのだからー。
母とマザー、私とおしゃべりをしていると、仕事の手を止め、にこにこと笑っている。
「お仕事、してください」
そう母にいわれると、お父さんは口を尖らせている。
「だって可愛いのに・・・」
大きな子供みたい。
少しだけ『お父さん』と呼ぶのを早まったのてはないかと思うこともあった。
「仕事をしている、かっこよさを見せてあげて、ください」
母の一言で、やる気を見せるお父さん。
笑う母。
マザーと私も笑う。
おじいちゃんとも話す。
母の子供の頃の話を。
私の知らない母が、そこにいた。
生意気な事を言って大人を困らしたこと。
木登りをしたこと・・・。
私と変わらない少女が隣にいるように感じだ。自由に生きた明るい少女がー。
そして、王太子妃教育の過酷さ。
表情を出さないようにする術。外交交渉について。前王妃様からの教育のことを・・・。外部に知られてはいけない事のはず。
政治的に裏切りにあたるのでは?・・・と聞けば、「そんなことを気にしなくても、壊れる時は簡単に壊れるものよ。こんな事で国が潰れるならそれまでのことね」と笑っていた。
母は、あの国を見限ったのだろう。
当然だが・・・。
そのおかげで、私は救われたのだから今更なのではあるのだが・・・。
母の話はとても楽しかった。
だから、だからー、こんなに早いとは思わなかった。
結婚式をして1ヶ月もしないうちに、母はお父さんの腕中で息を引き取った。
最期に母は言った。
「わたくしを忘れてくださいね」
「何を言ってる。僕らは『永久の誓い』をしたんだ。君は『永久の妻』だよ。君の死後、僕が君以外の誰かを娶ろうものなら、神罰が下されるよ」
「マゼル様は・・・、本当に・・・」
「君を愛してるからね」
「貴方に最期に逢えて、幸せ、でしたわ。マゼル様、後はお願い、します」
「うん」
母はこちらを見た。
「お父様、セシリアをお願いします」
「わかった。安心しろ。ひ孫ができるまでは死ぬ気はないからな」
ふふふっと笑う。
「セシリア」
「・・・は、い・・・」
「ごめんなさいね。我儘な母親で。出来損ないの母親で」
頭を振る。
できそこないなんかじゃない。
私のせいだ。
私の所為なのだ。
こいこいと手招く。
母は、近づいた私の手を引っ張った。
いきなりのことで、バランスを崩し母の胸に飛び込む形になった。
母は、私を抱きしめた。
耳元で、囁かれる。
「生まれてきて、ありがとう・・・」
ありがとう?
本当に?
「あなたに会えたことを後悔していないわ。セシリア」
「かあ、さん・・・?」
「・・・セシリア、あし、てるわ」
ゆっくりと目が閉じられた。
息が、呼吸が止まる。
腕の力が失われていく。
「かあさん!かあさんっ!!」
涙が止まらなかった。
ロイが後ろから抱きしめてくれた。
私は泣いた。
泣いた。
誰もが泣いた。
母は笑っていた。
最期まで幸せそうに、笑っていたー。
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