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「でも・・・マゼルさんは・・・、オスタニア帝国皇帝の叔父であり宰相、です、よね?」

 おそるおそる、一言ずつ確認するように言ってみる。

「知ってたか」

 いえいえ、流石に知っていました。

 でも、言えませんでした。
 ロイのことも。

 言ってしまえば今の関係が壊れそうで、すべてなかったことになりそうで、だからあえて知らないふりをしていました。

 知ってしまった心地よさを離したくなくて、見ないふりをしていた。

 母だけならまだしも、私まで娘扱いするとなると、国を巻き込むことなる。
 でいるべきではないだろうか・・・。
 
 母の最期の幸せは確かに大事。でも・・・。

「君はが護る。君は君らしくていいんだ。それに、セシリア」
「はい?」
「父親にならせて欲しい」

 頬をぽりぽり掻きながら、恥ずかしそうに言ってくる。
 
 何度も聞いた言葉。
 冗談だと思っていたから、気にしていなかったが、改まっていわれると、聞いているこっちも照れてくる。

 どんな顔をすればいいのだろう。

「セシリアと、これからを笑って生きていたい。ダメな時は怒るし、幸せを共有したい。ダメ、かな?」

 この人、本当に偉い人なんだろうか?
 子供みたいに眉をへの字にしてるし、威厳もないし。距離感おかしいし。
 
 甘えていいのかな?
 甘えたい。

 父親ってこんなのかな?
 もっとしっかりしてるんじゃないのかな?
 でも・・・。

 のお父さんではない。

 本当の父は・・・、父と思いたくもないし、父とも呼びたくない。

 ならば、マゼルさんにお父さんでいて欲しい。お父さんであって欲しい。

 勇気をだして、声にしてみる。

「お、とう、さん?」

 天使様がへらりと笑う。
 大きな天使様は子供みたいに涙を浮かべながら笑った。
 
 また、私を抱き上げた。

 私、十五歳だよ。もう直ぐ十六歳。
 もう、大人だよ。

 こんなだっこをしてもらって、喜ぶ歳じゃ・・・ないのに、、なんで、嬉しいんだろ。

 涙がでた。口元を引き締めないと、声が出そうになる。歯が震える。
 
 隣で母が笑っている。

 だけど、次の瞬間母の口から真っ赤な血が溢れ出た。

「母さん!!」
「エリザ!!!」

 大量の血は真っ白なドレスを一瞬にして赤く染め上げた。
 騒然とする周り。
 私を下ろしたお父さんは、母を抱き抱える。
 ロイが指示をだし、マザーが、おじいちゃんが、走る。

 私は何もできず、立ちすくむ。
 怖い。
 母の真っ赤な姿が、何もできない自分が怖かった。

 突きつけられる現実。

 母に残された短い時間を目の当たりにする。
 

 なぜ、神様は私たちの幸せを壊すのだろうか・・・。

 母の幸せな時間をもう少し、もう少しだけ伸ばして欲しい。

 やっと掴めた母の幸せを止めないで欲しい。

 母が可哀想だ。
 お父さんが可哀想だ。
 おじいちゃんが可哀想だ。

 やっと幸せになれると思ったのにー。

 

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