【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

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5章、最終章

27.

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 一ヶ月後、シェイフィード国とトライエル国、アリシニア国、カナント国、テストリア国は協議が行われ、五国協定が結ばれる事になった。

 その調印式には五人の聖女の姿があった。
 
 不可侵条約とともに今後の聖女の事も盛り込まれたのだ。

 必要な時は聖女は力を貸す事。
 『力』を強要してはならない事など、細かく決まった。
 また、シェイフィード国内に置いても、聖女をする事になった。


 [  聖女は国の有益のためにその身を持ってつくすべし  ]
 『血の盟約』
 
 撤廃となったのだ。

 アルベルト新国王はそう決めた。
 新法律にも記載した。

 [聖女、司祭は国の幸せを願う者達である。それを心に刻み、国に尽くすべし]と。

 『血の盟約』の書類が新国王自らの手で、破棄された事で、聖女たちの顔は明るかった。
 シェリルだけは、ウララたちから受ける、毎日のスパルタ教育で、眠そうにしていた。
 目がトロントなりコクリと首が落ちるたびに、頑張って顔をあげる様を生暖かく誰もが見ていた。

 そんなシェリルが調印式に出席したわけは、各国王の要請だったからだ。

 各王たちは、会合に立ち会った聖女たちの生い立ちや『聖女の代償』を聞いて、父性を見せたのだ。


 特に幼く見えるシェリルを猫可愛がりの如く、甘やかそうとする。

 アルベルト新国王もエイドリアンも、可愛い妹ができたように接している。
 
 それをグレンディールは、離れた列から鋭い目でいたのだった。マクロンに足を踏まれながらー。




 グレンディールはアルベルト新国王の口上を聞きながら、苦々しく思い出していた。



 目覚めたシェリルの見舞いに訪れた、アルベルト新国王は第一声に口にしたのだ。

「シェリル嬢。僕と結婚しない?」

 アルベルト新国王の言葉に、グレンディールが慌てて威嚇する。

「国王陛下!!」
「グレン?もう、君は彼女の夫じゃないよ?しかも、結婚は無効だし、白い結婚だったんでしょう?僕が求婚して何が悪いんだい?」
「全てが悪い!!」

「では、わたしが・・・」
「エイドリアン!!貴様もか!!誰も近づくな!」


 アシュリーの冷たい眼差しを溶かすほど熱くなるグレンディール。
 シェリルを抱きしめ、吠えまくった。

 それを押し退けるようにして、シェリルは離れると、ニコニコと笑顔を向けた。
 
「あの~。記憶も定かでない者が、王妃とか無理ですよ?教育だって、ほどほどにしかできませんから。絶対に無理です。
 国王様なら、もっと素晴らしい方が現れますよ。
 だって、格好いいんですから~」

 アルベルト新国王、エイドリアンはその笑顔に陥落。
 きっと、その笑顔で世界征服できるのではと思うが、グレンディールがあまりにうるさく断念しのだった。

 純粋なシェリルが可愛く、妹位置に置くと決めたと同時に二人はグレンディールにもったいなくて思ってのは仕方ない事でもあった。





◇◇◇◇◇
三十話で本編終了になります。
最後までお付き合いください。

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