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5章、最終章
22.グレン視点
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決行は一週間後に決まった。
北の塔の鍵はエイドリアンが掠め取っていた。
どうやって誑かしてきたのか聞いても、にっこりと微笑むだけで答えてくれなかった。
聞いてしまった後々が、怖いことになるのかも知れない。
一週間後、アルベルト殿下は北の塔をでた。
平伏す俺たちに感謝を述べると、エイドリアンからマントを受け取り身につける。
「行くぞ」
第二王子ジルバルト殿下のもとに行く。
颯爽と歩くアルベルト殿下の後ろをついて行く。いつでも、楯突くものは排除できるように。
だが、遮る者は誰もいなかった。
誰もが、アルベルト殿下に平伏した。
一部、忌々しそうに目をやるものがいたが、不利を悟ったのだろう。大人しくしていた。
エイドリアンがしっかりと顔を見ていたとところを見ると、後で粛清対象になるだろうと予測された。
「ジルベルト、久しいな」
アルベルト殿下の整った顔が美しい笑みを作る。
それが恐ろしく感じるのは俺たちだけかも知れない。
アルベルト殿下を知っているからこそわかる。
「兄上?!」
「よくもまあ、好き勝手して、ここまで腐らせたものだな」
「なんです?今更でてきて。勝手に出てきて、また父上に殴られますよ?」
「おまえは、何をやっているのか、わかっているのか?」
「戦ですよ。トライエル国の鉱石資源が有れば、我が国は豊かになれます。そうなれば、シェイフィード国は帝国と称しても構わないほど大国になるでしょう」
「馬鹿か?」
アルベルト殿下が冷たく言い切る。
当たり前だな。
何が帝国だ。
夢を見てどうする。
「他国に恨まれて何が帝国だ。お前らに他国を従わせる器があるとでも思っているのか?度量があるとでも?武力による絶望で従わせて良い国など作れるわけないだろう。人がついてくるわけないだろう!巫山戯るな!!」
相変わらず高潔なやつだ。
だからこそ、この方について行こうと思ってしまうのだがー。
「うるさい!!おい!こいつを牢にいれろ!おい!何故だ?何故誰も動かない!?」
「悪いですね、ジルバルト殿下。騎士達はすでにアルベルト殿下についています。貴方様に人徳がない証拠ですよ」
エイドリアンがアルバルト殿下の一歩後ろからニヒルな笑いを浮かべた。
ブラッドが回り込みジルバルト殿下を捕らえた。
「なっ!!やめろ、わたしは・・・」
「叫ぼうとも、誰も助けてはくれませんよ」
尚も叫び暴れようとするジルバルト殿下を、ブラッドは殴った。その勢いで、床へと倒れる。
「ブラッド!!」
「エイドリアン。こいつを殴らせろ。姉の仇だ。こいつらの所為どれだけの人が不幸になったか・・・」
「ブラッド、やめろ。お前が手を汚すまでもない。父上ともども処刑するんだ。それまでは生かせろ」
「あに、うえ・・・?」
「お前達はやりすぎた。国民の感情を無視をして、私利私欲で動いたツケだ。自分の命を持って償え。お前の道はそれだけだ」
「あっああっ」
凍てつくような眼差しを受け、ジルベルトはうつむき震えた。
誰も同情などしない。
誰もが冷めた眼差しでジルバルトを眺めた。
地下牢へと連れて行かれる、ジルバルトを見送ったあと、アルベルト殿下は玉座に座った。
一斉に彼に平伏す。
「まだ、終わっていない。次は、あの男を落とす。時間との勝負だ。わたしはここを動くことができない。グレン、ガイアス、ヘンドリック、ケイン。お前達にあの男を捕らえてくることを命ずる。そして、この戦を終わらせてこい!」
「「「「はっ」」」」
「グレン、そんなに気が気でないだろう?戦が終わったなら、直ぐに助けに行ってやれ」
っ・・・・・・・・・。
わざと、この場で言いやがったな・・・。
お前らも、ニヤニヤと見るな!!
「はっ、ありがとうございます・・・」
顔には出さず、深く一礼すると立ち上がった。
北の塔の鍵はエイドリアンが掠め取っていた。
どうやって誑かしてきたのか聞いても、にっこりと微笑むだけで答えてくれなかった。
聞いてしまった後々が、怖いことになるのかも知れない。
一週間後、アルベルト殿下は北の塔をでた。
平伏す俺たちに感謝を述べると、エイドリアンからマントを受け取り身につける。
「行くぞ」
第二王子ジルバルト殿下のもとに行く。
颯爽と歩くアルベルト殿下の後ろをついて行く。いつでも、楯突くものは排除できるように。
だが、遮る者は誰もいなかった。
誰もが、アルベルト殿下に平伏した。
一部、忌々しそうに目をやるものがいたが、不利を悟ったのだろう。大人しくしていた。
エイドリアンがしっかりと顔を見ていたとところを見ると、後で粛清対象になるだろうと予測された。
「ジルベルト、久しいな」
アルベルト殿下の整った顔が美しい笑みを作る。
それが恐ろしく感じるのは俺たちだけかも知れない。
アルベルト殿下を知っているからこそわかる。
「兄上?!」
「よくもまあ、好き勝手して、ここまで腐らせたものだな」
「なんです?今更でてきて。勝手に出てきて、また父上に殴られますよ?」
「おまえは、何をやっているのか、わかっているのか?」
「戦ですよ。トライエル国の鉱石資源が有れば、我が国は豊かになれます。そうなれば、シェイフィード国は帝国と称しても構わないほど大国になるでしょう」
「馬鹿か?」
アルベルト殿下が冷たく言い切る。
当たり前だな。
何が帝国だ。
夢を見てどうする。
「他国に恨まれて何が帝国だ。お前らに他国を従わせる器があるとでも思っているのか?度量があるとでも?武力による絶望で従わせて良い国など作れるわけないだろう。人がついてくるわけないだろう!巫山戯るな!!」
相変わらず高潔なやつだ。
だからこそ、この方について行こうと思ってしまうのだがー。
「うるさい!!おい!こいつを牢にいれろ!おい!何故だ?何故誰も動かない!?」
「悪いですね、ジルバルト殿下。騎士達はすでにアルベルト殿下についています。貴方様に人徳がない証拠ですよ」
エイドリアンがアルバルト殿下の一歩後ろからニヒルな笑いを浮かべた。
ブラッドが回り込みジルバルト殿下を捕らえた。
「なっ!!やめろ、わたしは・・・」
「叫ぼうとも、誰も助けてはくれませんよ」
尚も叫び暴れようとするジルバルト殿下を、ブラッドは殴った。その勢いで、床へと倒れる。
「ブラッド!!」
「エイドリアン。こいつを殴らせろ。姉の仇だ。こいつらの所為どれだけの人が不幸になったか・・・」
「ブラッド、やめろ。お前が手を汚すまでもない。父上ともども処刑するんだ。それまでは生かせろ」
「あに、うえ・・・?」
「お前達はやりすぎた。国民の感情を無視をして、私利私欲で動いたツケだ。自分の命を持って償え。お前の道はそれだけだ」
「あっああっ」
凍てつくような眼差しを受け、ジルベルトはうつむき震えた。
誰も同情などしない。
誰もが冷めた眼差しでジルバルトを眺めた。
地下牢へと連れて行かれる、ジルバルトを見送ったあと、アルベルト殿下は玉座に座った。
一斉に彼に平伏す。
「まだ、終わっていない。次は、あの男を落とす。時間との勝負だ。わたしはここを動くことができない。グレン、ガイアス、ヘンドリック、ケイン。お前達にあの男を捕らえてくることを命ずる。そして、この戦を終わらせてこい!」
「「「「はっ」」」」
「グレン、そんなに気が気でないだろう?戦が終わったなら、直ぐに助けに行ってやれ」
っ・・・・・・・・・。
わざと、この場で言いやがったな・・・。
お前らも、ニヤニヤと見るな!!
「はっ、ありがとうございます・・・」
顔には出さず、深く一礼すると立ち上がった。
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