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5章、最終章
19.シェリル視点
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木々がお生い茂り、太陽の光も届かない森の中を歩いていた。
食糧の不足も深刻であり、怪我人も動けるようになったことから、移動することに決めた。
兵士さんの一人に、今の状況を説明してもらった。
やはり、昨夜のことさえ覚えていない。
昨日は何をしていたのだろうか?
何を話をしていたのだらうか?
わたしは一体、いつから記憶がないのだろう。
昨日も戦いをしていた。その前の日も?
でも、国の名前が違う気がする・・・。
今は考えないでいよう。
考えても、どうにもならない。
今すべき事は全員を連れて帰る事なのだ。
アシュリーやアリスのいる場所に。
お姉様たちの元に。
帰る。
それだけ。
腰に差した短刀の存在を触って、確認する。
重く感じる。
わたしは・・・、人を刺したのだろうか・・・。
知らない方がいい?
現実を受け止めて、きちんと罪を償うべきなのか・・・。
知る事が怖かった。
「聖女さま、行きましょう」
「はい」
声をかけられ、歩き出す。
慣れない道。道なき道を進む。
彼らの歩調に合わせて歩くのは、正直辛かった。
だんだん足の裏が痛くなってくる。足の指がジクジクと痛んだ。
脛は張ってくる。泣き出したいほど痛い。
でも、文句など言えるはずない。
彼らだって、早く帰りたいのだ。わたしの我儘で、予定を狂わすわけにはいかない。
必死に彼らについていく。
息が切れてくる。
でも、悟られてはいけないのだ。
早く、早く帰るのだ。
立ち止まってはいけない。
「敵だ!!!」
先行を歩く兵士が知らせてくる。
見つかった?!
異様な緊張感があたりを支配する。
息を殺し、小さな音さえ立てられいほど神経を使って茂みに隠れる。
「うあーっ」
相手が襲ってくる。
見つかったのだ。
兵士が剣を抜き、相手を斬りつける。
血を流し倒れる。
見たくない。
息が、胸が苦しい。
いやだ。
なんで、なんで、殺し合うの!!
悔しい。
同じ人間なのに。
どうして戦うのだろう。
そんな事を思っても、わたしは明日には記憶にはないのだろう。
そして同じ事を幾度も考え、思うのだろう。
自分の生きる価値はあるのだろうか・・・。
涙が自然に流れた。
見られてはいけない。
戦う彼らに申し訳ない。
相手側も何人かいたのだろう。
次々に木の影から出てきて、剣をわたしたちにむけてきた。
腰の短剣を抜いて、相手に向けた。
剣を持つ手が震える。
怖い・・・。
「女だ!女は殺すな!」
「おい、そんなに震えてたら、自分を刺すぞ」
卑下した声に鳥肌がたつ。
剣を持つから震えてるわけではない。
こんな状況だからだ怖いのだ。
食糧の不足も深刻であり、怪我人も動けるようになったことから、移動することに決めた。
兵士さんの一人に、今の状況を説明してもらった。
やはり、昨夜のことさえ覚えていない。
昨日は何をしていたのだろうか?
何を話をしていたのだらうか?
わたしは一体、いつから記憶がないのだろう。
昨日も戦いをしていた。その前の日も?
でも、国の名前が違う気がする・・・。
今は考えないでいよう。
考えても、どうにもならない。
今すべき事は全員を連れて帰る事なのだ。
アシュリーやアリスのいる場所に。
お姉様たちの元に。
帰る。
それだけ。
腰に差した短刀の存在を触って、確認する。
重く感じる。
わたしは・・・、人を刺したのだろうか・・・。
知らない方がいい?
現実を受け止めて、きちんと罪を償うべきなのか・・・。
知る事が怖かった。
「聖女さま、行きましょう」
「はい」
声をかけられ、歩き出す。
慣れない道。道なき道を進む。
彼らの歩調に合わせて歩くのは、正直辛かった。
だんだん足の裏が痛くなってくる。足の指がジクジクと痛んだ。
脛は張ってくる。泣き出したいほど痛い。
でも、文句など言えるはずない。
彼らだって、早く帰りたいのだ。わたしの我儘で、予定を狂わすわけにはいかない。
必死に彼らについていく。
息が切れてくる。
でも、悟られてはいけないのだ。
早く、早く帰るのだ。
立ち止まってはいけない。
「敵だ!!!」
先行を歩く兵士が知らせてくる。
見つかった?!
異様な緊張感があたりを支配する。
息を殺し、小さな音さえ立てられいほど神経を使って茂みに隠れる。
「うあーっ」
相手が襲ってくる。
見つかったのだ。
兵士が剣を抜き、相手を斬りつける。
血を流し倒れる。
見たくない。
息が、胸が苦しい。
いやだ。
なんで、なんで、殺し合うの!!
悔しい。
同じ人間なのに。
どうして戦うのだろう。
そんな事を思っても、わたしは明日には記憶にはないのだろう。
そして同じ事を幾度も考え、思うのだろう。
自分の生きる価値はあるのだろうか・・・。
涙が自然に流れた。
見られてはいけない。
戦う彼らに申し訳ない。
相手側も何人かいたのだろう。
次々に木の影から出てきて、剣をわたしたちにむけてきた。
腰の短剣を抜いて、相手に向けた。
剣を持つ手が震える。
怖い・・・。
「女だ!女は殺すな!」
「おい、そんなに震えてたら、自分を刺すぞ」
卑下した声に鳥肌がたつ。
剣を持つから震えてるわけではない。
こんな状況だからだ怖いのだ。
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