【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

3章、サウロス山脈魔討伐

番外編、ニーナの恐怖面談

　今、わたしはマクロン様のご実家に来ています。

　緊張しています。

　めの前に座るマクロン様のご両親の目が痛いです。軽蔑しています。

　理由はわかっています。

　やはり、自分の行いです。

　図に乗ってグレン様に寄生してた事に対して･･･。
　えぇ、わたしは宣言しました。
　何があっても図々しく生きると。

　でも、今は揺らいでいます。

　それは、シェリル様の事が、あるから。

　あの方は『代償』を厭わず、わたしの病気を治してくれていたのです。
　知らなかった･･･なんて、済まされる事ではありません。

　代償が『記憶』。
　
　それを知って、それを見て、ショックをうけました。

　わたしの事を忘れている。
　心臓がギュッとなりました。

　私だったら泣きます。
　泣くだけでは済まない。
　世界が怖くなるでしょう。
　取り残された気になると思います。

　シェリル様は何度経験したの？

　それを考るだけで手が震えました。


　なのに、わたしは病気を治っのをいいことに、自分の幸せを優先してしまった･･･。
　目先のことばかりみて、アルザイド家のことや、マクロン様の家の事など考えていなかった。

　周りの評価を受け入れたわ。受け入れた気でいた。

　でも、それだけではいけなかったのよ。
　自分の立場をもっと理解すべきだった･･･。

　「ニーナさん、その顔からして自分のことを見つめ出したのかしら？」

　マクロンさまのお母様が言われます。
　パチンと扇が音を立てて閉じる。
　にこやかな表情に反して目は一切笑っていません。
　これほど恐ろしいものはありません。

「･･･はい」
「実際、メイドとして、働いていることが、どれだけ図々しいかも？」
「はい。シェリル様の温情を、いいように解釈しておりました」
「確かにあなたとマクロンの結婚については許したわ。だって、愚か者でお似合いだったから」

　ふふふっ
　
　と笑われます。
　真っ赤な唇が弧を描きます。

　隣にいるマクロン様も蒼白･･･。

「マクロンは三男ですから、継ぐ爵位はないもの。グレン様が領主だから、今は側近として身を立てているだけ。
　それなのに、図に乗って･･･。
　末っ子だから甘やかしすぎたのかしら？
　グレン様お馬鹿さんを諌めず、果てには発情期の猫みたいにどうどうと乳繰りあったんですってね？アルザイド辺境伯家に恩義も忘れて。
　はっ、情けない。すぐさま除籍してやりたい」　

　バキン

　扇をへし折りました。すぐさま、執事さんが替わりの扇を差し出しました。

　それを受け取ると、何事もなかったようにお茶に口をつけます。

　マクロン様のお父様は何も口に出されません。
　じっと私たちを見つめているだけ。
　一挙一動を見ているようで怖い。


「すぐにでも結婚を認めたけど、気が変わったわ。だって、二人とも阿保すぎるもの。少しでも自覚が生まれて、汚名を返上してくるか、落ちるとこまで落ちると思って見てたのに、残念！
　あのグレン様お馬鹿さんも、３年間の猶予が与えられたんだし。あなたたちにも与えてあげるわ。マクロン、ニーナさん！！
　そうね、ニーナさん、3年間私の元で働きなさい。
　聖女様のメイドになるにしても今のあなたには無理だわ。でも、やる気があるなら、耐えて見なさい。マクロンに会わず3年耐えたら、その時は認めてあげるわ」

　挑発的な瞳。
　負けたく無い。

　わたし･･･シェリル様に守ってもらうのは嫌。次はあの方を守りたい。

「お願いします」

　頭を下げた。


「マクロン。うかうかしていると婚約解消もありうるかもね･･･」

　紅い唇がクイッと上がるのが視界の隅で微かに見えた。