【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

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3章、サウロス山脈魔討伐

番外編、グレンの補足

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 その光は山脈の神殿からでもよく見えた。

 光の粒が舞い落ちる。
 手の上で解けるように消えた。

 その光のせいかわからないが、急激に魔獣の出没が減り出した。強さも半減したように討伐がサクサクと進んだ。

 瘴気溜まりも潰すこともでき、予定より1日早く山を降りた。
 3番隊は洞穴の調査をして既に帰っていた。

 帰るとサウセストでいるはずのアリスがいた。

 帰ってきた我々に言う。

「シェリル様はまだ眠っています。お見舞いはお断りします。起きましたらこちらかお教えしますので、絶対に部屋には来ないでください」

 それだけを言うと踵をかえした。

 しかし、気になるものは気になるので、気配を消してシェリルの部屋に行く。
 ニーナも合わせてもらえないらしく消沈していた。

 その日は皆揃ってしまった。

 中の雰囲気が気になり体重がかかった。
 見事なまでにドアは開き崩れ落ちた。


 シェリルは起きていた。
 
 喜ぶ。


 安心した。

 しかし、それは覆される。


 「あの、あなた方は誰ですか?」

 なんと言った?

 ダレデスカ?

 どう言う・・・ことだ?


 アシュリーに父の執務室に連れていかれ説明された。

 『聖女の制限』?
 『代償』?

 初めて聞く言葉。

 シェリルの代償は『記憶』だと言う。

 
 全て忘れたのか?

 ざっと血の気がひいたのがわかった。

 俺はまだ、謝っていない。お礼も言っていない。

 手が震えた。

 罪悪感・・・いや、後悔が押し寄せて来た。

 愚かすぎる。
 自分が愚かだ。

 時間が巻き戻れたら・・・。

 なかったことに・・・できるわけがない!!



 奴らは前向きだった。
 駆け足でシェリルの元へむかう。




 俺は父上と話し合い。
 自分の愚かな話を・・・。

 だが、話を聞いていくうちに、俺の心はズタズタになった。
 実力だけ、としてしか見られていなかったのか・・・。あの聖女ども・・・。

 俺の廃嫡に関してはしばらく見送られることになった。
 
 シェリルを守るために。


 ふと気づく。
 アシュリーをみる。

 父はさっきなんと言った?

 と呼ばなかったか・・・?


 それに気づいたのかは自嘲気味に笑いながら話し出した。


「前に言いましたよね。わたしは11歳で冒険者になったと。
 わたしの村は貧しい村です。人減らしも普通でしたし、飢餓で亡くなるものも少なくはありませんでした。
 だからこそわたしは冒険者になりました。母のお腹にいた子供のためにも稼ごうと・・・。
 3年経って家に帰ると母の腕の中に赤ちゃんがいたんです。
 3年経って乳飲み子なわけはない。
 両親を問い詰めると売ったと言うんです。赤い目だから高く売れたと。
 自分が行いを恨みましたよ。
 一年後、冒険者依頼で立ち寄った街であの子を見かけました。でも、一瞬の事でいなくなってしまった。愚か者と罵っていただいてかまいませんよ。

 それから冒険者をしながら探しました。
 7年前にアレクディア様にお聞きして初めてあの子の行方がわかりました。
 すぐに神殿に訪ねました。
 レニー様に会い安心しました。ですが、依頼を一つ終わらして帰ると・・・
 あの子の記憶にわたしはいませんでした。
 ですのでわたしシェリルの側でいる事を選んだのです。見た目など気にしません。スカート姿など些細な事です。 
 わたしはあの子のとしてここにいます。あの子の幸せを願うものとして」


 こいつの強い理由がわかった。
 なぜ、こいつが俺に討伐を競うようようもってきたのか・・・。





 俺は、こいつに試されていたんだー。

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