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3章、サウロス山脈魔討伐

26.

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 アレクディアの執務室にグレンディールとブラッド、マクロン、アシュリー、そして呼び出されたロイディクが座っていた。

「ここにいるついでだ。そろそろ話をしておこうか」

 アレクディアが言う。

 ここで話す事柄があるとすればただ一つ。
 グレンディールのについてしかない。

「グレン、何故今まで、わたしが何も言わなかったかわかるか?」
「・・・正直に言ってわかりません。ニーナの事ですぐにも責任追求があってもおかしくないとは思っていました。廃位についてはこの討伐以降になるとは思ってはいましたが・・・」  

 アレクディアは鼻で笑う。

「そうだな。ザックにも口出しするなとは手紙は送ったが、お前には送ってないな。様子を見ていたと言うのは建前で、シェリルを護るためと言うのが本音だな。まあ、攫われたのは誤算だったが、それにより収穫もあったから五分五分だろう」
「何が五分五分ですか?」
「そうだろう、。もし、を回避するなら聖女たちが先に言っていただろう・・・」
「・・・そう、ですね・・・」

 諦めたような深いため息。

「あの彼女たちのことだ。我らは手のひらで踊らされてるんだろうな」

 アレクディアが苦笑いする。
 

「父上、どう事ですか。説明してください」

 グレンディールが叫ぶようにして言った。
 真剣な眼差しでグレンディールを見やった。

「ことの発端は四年前からだ。聖女ウララ様たちがシェリルの代償ー『記憶消失』のことを案じられたんだ。

 その白羽の矢がたったのが辺境伯だ。権力、実力を兼ね揃えている。国王でも無下にはできない存在。
 聖女の地位は危う。国王が絡んでいるから特に。被害を受けるのは周り。一般人なら、それを人質にされかねない。
 そうなれば彼女たちはどうしても動かざる得ない。そんな面からして辺境伯の地位は有効だったんだ。

 しかも、年頃もちょうどいい。彼女たちは我々に相談してきた。こちらにしても申し分はないからな、少しずつ家督を子供たちに譲っていった。もちろんお前も含めてだ。
 の彼女たちもあの国王にうまく掛け合った。
 自分らの子供を残し聖女を増やす。あの国王にすれば魅力的だったんだろう。なかなか聖女が育たないのだから。
 彼女たちはそれぞれの辺境伯に嫁ぐように策略を練ったようだ。
うまく乗せられたのは国王のほうだろう」


「ではなぜ、シェリルは俺のところへ?」

 アレクディアの表情が一瞬固まる。 
 目をグレンディールから逸らしながらモゴモゴと説明をした。

「それは・・・、その・・・丁度よかった、からだ。
 
 ニーナの事は王都まで伝わっていた。彼女たちはそれも使ったんだ。
 ニーナ、一筋のお前ならシェリルにと。少なくとも三年は何もないとー。彼女がニーナの病気を治せばなおのこと、シェリルに目はいかないだろうから、三年後には白い結婚により離婚をするだろうと言って・・・。

 どんな待遇になろうともシェリルが自暴自棄になるわけはないだろうから・・・。そして、お前の力なら建前の妻だとしても安全に暮らせるだろうと。国王からの圧力や刺客からでも、ニーナを守るついでに守ってくれるだろうと・・・。
 
 まあ、誤算としてニーナがマクロンを選んだことと、お前が馬鹿な契約を結んだことであったがな。ハハッ」

 酷い内容。
 つまり噂を逆手に使われていた事が判明した。人格云々の話ではない。シェリルの為だけを考えた計画。シェリルの身の安全だけの結婚。
 甘い理由など、どこにもなかった。
 魂が身体から脱出寸前の事実。
 身から出た大錆。
 
「・・・・・・・・・・・・」


「とまあ、お前のしでかしには言いたい事は山ほどあるが、お前の廃位は今は未定だ。三年はシェリルの夫としていてもらわなくては困る。
 三年の間にシェリルを逃そうとしているからその間は守って欲しい。

 そう考えるとお前しかいないんだ。はっきり言って、ロイは人望が厚くてもお前ほどの実力がまだない。もしもの時、彼女を守れなくては意味がないからな。

 その三年で挽回するのか、このまま頼りない領主として認知され、廃位するかは、お前に任せる」

「つまり俺は都合のいい人間だったと?」
「簡単にいえばそう言う事だな」


 ハハハと笑う。

 グレンディールはこの場で突っ伏したかった。
 隣に座るマクロンも青ざめている。



「どんな理由だろうがマクロン、お前も同様だ。グレン様を諌めることもせず、シェリル様の事に対しても不十分だった」
「も、申し訳、ありません・・・」

 冷たいブラッドの目をみて項垂れたのだった。








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