83 / 150
3章、サウロス山脈魔討伐
26.
しおりを挟む
アレクディアの執務室にグレンディールとブラッド、マクロン、アシュリー、そして呼び出されたロイディクが座っていた。
「ここにいるついでだ。そろそろ話をしておこうか」
アレクディアが言う。
ここで話す事柄があるとすればただ一つ。
グレンディールのやらかしについてしかない。
「グレン、何故今まで、わたしが何も言わなかったかわかるか?」
「・・・正直に言ってわかりません。ニーナの事ですぐにも責任追求があってもおかしくないとは思っていました。廃位についてはこの討伐以降になるとは思ってはいましたが・・・」
アレクディアは鼻で笑う。
「そうだな。ザックにも口出しするなとは手紙は送ったが、お前には送ってないな。様子を見ていたと言うのは建前で、シェリルを護るためと言うのが本音だな。まあ、攫われたのは誤算だったが、それにより収穫もあったから五分五分だろう」
「何が五分五分ですか?」
「そうだろう、アシュリード。もし、あれを回避するなら聖女たちが先に言っていただろう・・・」
「・・・そう、ですね・・・」
諦めたような深いため息。
「あの彼女たちのことだ。我らは手のひらで踊らされてるんだろうな」
アレクディアが苦笑いする。
「父上、どう事ですか。説明してください」
グレンディールが叫ぶようにして言った。
真剣な眼差しでグレンディールを見やった。
「ことの発端は四年前からだ。聖女ウララ様たちがシェリルの代償ー『記憶消失』のことを案じられたんだ。
その白羽の矢がたったのが辺境伯だ。権力、実力を兼ね揃えている。国王でも無下にはできない存在。
聖女の地位は危う。国王が絡んでいるから特に。被害を受けるのは周り。一般人なら、それを人質にされかねない。
そうなれば彼女たちはどうしても動かざる得ない。そんな面からして辺境伯の地位は有効だったんだ。
しかも、年頃もちょうどいい。彼女たちは我々に相談してきた。こちらにしても申し分はないからな、少しずつ家督を子供たちに譲っていった。もちろんお前も含めてだ。
演技派の彼女たちもあの国王にうまく掛け合った。
自分らの子供を残し聖女を増やす。あの国王にすれば魅力的だったんだろう。なかなか聖女が育たないのだから。
彼女たちはそれぞれの辺境伯に嫁ぐように策略を練ったようだ。
うまく乗せられたのは国王のほうだろう」
「ではなぜ、シェリルは俺のところへ?」
アレクディアの表情が一瞬固まる。
目をグレンディールから逸らしながらモゴモゴと説明をした。
「それは・・・、その・・・丁度よかった、からだ。
ニーナの事は王都まで伝わっていた。彼女たちはそれも使ったんだ。
ニーナ、一筋のお前ならシェリルに手を出さないと。少なくとも三年は絶対に何もないとー。彼女がニーナの病気を治せばなおのこと、シェリルに目はいかないだろうから、三年後には白い結婚により離婚をするだろうと言って・・・。
どんな待遇になろうともシェリルが自暴自棄になるわけはないだろうから・・・。そして、お前の力なら建前の妻だとしても安全に暮らせるだろうと。国王からの圧力や刺客からでも、ニーナを守るついでに守ってくれるだろうと・・・。
まあ、誤算としてニーナがマクロンを選んだことと、お前が馬鹿な契約を結んだことであったがな。ハハッ」
酷い内容。
つまり噂を逆手に使われていた事が判明した。人格云々の話ではない。シェリルの為だけを考えた計画。シェリルの身の安全だけの結婚。
甘い理由など、どこにもなかった。
魂が身体から脱出寸前の事実。
身から出た大錆。
「・・・・・・・・・・・・」
「とまあ、お前のしでかしには言いたい事は山ほどあるが、お前の廃位は今は未定だ。三年はシェリルの夫としていてもらわなくては困る。
三年の間にシェリルを逃そうとしているからその間は守って欲しい。
そう考えるとお前しかいないんだ。はっきり言って、ロイは人望が厚くてもお前ほどの実力がまだない。もしもの時、彼女を守れなくては意味がないからな。
その三年で挽回するのか、このまま頼りない領主として認知され、廃位するかは、お前に任せる」
「つまり俺は都合のいい人間だったと?」
「簡単にいえばそう言う事だな」
ハハハと笑う。
グレンディールはこの場で突っ伏したかった。
隣に座るマクロンも青ざめている。
「どんな理由だろうがマクロン、お前も同様だ。グレン様を諌めることもせず、シェリル様の事に対しても不十分だった」
「も、申し訳、ありません・・・」
冷たいブラッドの目をみて項垂れたのだった。
「ここにいるついでだ。そろそろ話をしておこうか」
アレクディアが言う。
ここで話す事柄があるとすればただ一つ。
グレンディールのやらかしについてしかない。
「グレン、何故今まで、わたしが何も言わなかったかわかるか?」
「・・・正直に言ってわかりません。ニーナの事ですぐにも責任追求があってもおかしくないとは思っていました。廃位についてはこの討伐以降になるとは思ってはいましたが・・・」
アレクディアは鼻で笑う。
「そうだな。ザックにも口出しするなとは手紙は送ったが、お前には送ってないな。様子を見ていたと言うのは建前で、シェリルを護るためと言うのが本音だな。まあ、攫われたのは誤算だったが、それにより収穫もあったから五分五分だろう」
「何が五分五分ですか?」
「そうだろう、アシュリード。もし、あれを回避するなら聖女たちが先に言っていただろう・・・」
「・・・そう、ですね・・・」
諦めたような深いため息。
「あの彼女たちのことだ。我らは手のひらで踊らされてるんだろうな」
アレクディアが苦笑いする。
「父上、どう事ですか。説明してください」
グレンディールが叫ぶようにして言った。
真剣な眼差しでグレンディールを見やった。
「ことの発端は四年前からだ。聖女ウララ様たちがシェリルの代償ー『記憶消失』のことを案じられたんだ。
その白羽の矢がたったのが辺境伯だ。権力、実力を兼ね揃えている。国王でも無下にはできない存在。
聖女の地位は危う。国王が絡んでいるから特に。被害を受けるのは周り。一般人なら、それを人質にされかねない。
そうなれば彼女たちはどうしても動かざる得ない。そんな面からして辺境伯の地位は有効だったんだ。
しかも、年頃もちょうどいい。彼女たちは我々に相談してきた。こちらにしても申し分はないからな、少しずつ家督を子供たちに譲っていった。もちろんお前も含めてだ。
演技派の彼女たちもあの国王にうまく掛け合った。
自分らの子供を残し聖女を増やす。あの国王にすれば魅力的だったんだろう。なかなか聖女が育たないのだから。
彼女たちはそれぞれの辺境伯に嫁ぐように策略を練ったようだ。
うまく乗せられたのは国王のほうだろう」
「ではなぜ、シェリルは俺のところへ?」
アレクディアの表情が一瞬固まる。
目をグレンディールから逸らしながらモゴモゴと説明をした。
「それは・・・、その・・・丁度よかった、からだ。
ニーナの事は王都まで伝わっていた。彼女たちはそれも使ったんだ。
ニーナ、一筋のお前ならシェリルに手を出さないと。少なくとも三年は絶対に何もないとー。彼女がニーナの病気を治せばなおのこと、シェリルに目はいかないだろうから、三年後には白い結婚により離婚をするだろうと言って・・・。
どんな待遇になろうともシェリルが自暴自棄になるわけはないだろうから・・・。そして、お前の力なら建前の妻だとしても安全に暮らせるだろうと。国王からの圧力や刺客からでも、ニーナを守るついでに守ってくれるだろうと・・・。
まあ、誤算としてニーナがマクロンを選んだことと、お前が馬鹿な契約を結んだことであったがな。ハハッ」
酷い内容。
つまり噂を逆手に使われていた事が判明した。人格云々の話ではない。シェリルの為だけを考えた計画。シェリルの身の安全だけの結婚。
甘い理由など、どこにもなかった。
魂が身体から脱出寸前の事実。
身から出た大錆。
「・・・・・・・・・・・・」
「とまあ、お前のしでかしには言いたい事は山ほどあるが、お前の廃位は今は未定だ。三年はシェリルの夫としていてもらわなくては困る。
三年の間にシェリルを逃そうとしているからその間は守って欲しい。
そう考えるとお前しかいないんだ。はっきり言って、ロイは人望が厚くてもお前ほどの実力がまだない。もしもの時、彼女を守れなくては意味がないからな。
その三年で挽回するのか、このまま頼りない領主として認知され、廃位するかは、お前に任せる」
「つまり俺は都合のいい人間だったと?」
「簡単にいえばそう言う事だな」
ハハハと笑う。
グレンディールはこの場で突っ伏したかった。
隣に座るマクロンも青ざめている。
「どんな理由だろうがマクロン、お前も同様だ。グレン様を諌めることもせず、シェリル様の事に対しても不十分だった」
「も、申し訳、ありません・・・」
冷たいブラッドの目をみて項垂れたのだった。
34
お気に入りに追加
3,396
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
めぐめぐ
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。魔法しか取り柄のないお前と』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公が、パーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー短編。
※思いつきなので色々とガバガバです。ご容赦ください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
※単純な話なので安心して読めると思います。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~
五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。
「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」
ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。
「……子供をどこに隠した?!」
質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。
「教えてあげない。」
その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。
(もう……限界ね)
セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。
「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」
「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」
「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」
「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」
セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。
「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」
広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。
(ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)
セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。
「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」
魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。
(ああ……ついに終わるのね……。)
ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」
彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる