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3章、サウロス山脈魔討伐
22.
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「では、戻ります」
あっさりとした言葉にグレンディールたちは驚いた。
「今からか?どうやって?」
騎士たちはまだ討伐の任務が残っている。
余程の事がない限りは山を降りない。
シェリルはゴソゴソと自分の万能袋をあさり転移方陣の書かれた紙を取り出した。
「コレで帰ります」
あらかじめ用意していたのだろう。
グレンディールたちは呆れたように二人を見た。
「わたしたちはこれから広場へ行き最後の仕上げをします。そうすれば魔獣も減るはずです」
「そうか。わかった」
「あと・・・」
シェリルは再び万能袋の中を探り、ポーションを大量にとり出していく。
騎士たちが引くように見ていた。
「これを、神殿に置いといてください。真空容器に入れているので半永久に使える品物ですから、ここに置いて置くと便利かと・・・」
ベシッ
グレンディールの手加減デコピンがはいる。
それでも痛かったのか、額を抑えた。
「いっ!!」
「「「グレン様!!」」」
「シェリル!」
「やりすぎだ!そこまで要求はしてない」
「でも・・・」
「過保護者も止めろ!」
「・・・・・・」
「お前が倒れたら悲しむ奴らが大勢いるんだ。少しはわからんか!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二つの沈黙。
「ごめん、なさい」
「・・・・・・」
シュンっとした表情。
絆されそうになるのをグッと押さえる。
「無理すんなよ」
「・・・・・・」
「無理するのか?」
「ちょっと?」
テヘッと笑う。
はあ~、と盛大なため息をグレンディールはついた。
何を言ってもやり通すのだろう。
「後でアシュリーとアリス、ハイセン医師、タルクに盛大に怒られろ!!」
「ええーっ」
シェリルの大ブーイングが起こったのだった。
周りは笑いを噛み殺していた。
移転方陣を綺麗にしく。
アシュリーが方陣に入る前にグレンディールに近づいて来た。
「しばらくシェリルは魔力切れを起こして寝込むと思います。起きてもわたしが許可をするまでは部屋に入らないようにしてください。みなさんも守ってください、いいですね!」
「わ、わかった」
アシュリーの眼光の強さに皆頷いた。
二人は移転方陣な上に立つと消えた。
紙の方陣は燃え尽きたのだ。
*******
シェリルとアシュリーは転移で戻って来るとすぐに広場へと来た。
陽は傾き。夕焼けの中、長い影帽子が伸びている。
シェリルは 水晶のような透明の大きな石
の台座の元へ寄った。
手を広げ四方の守護の力を感じとる。地脈空気、あらゆる感覚。
深呼吸をし、心を通わせる。
神経を巡らせ、一つに結びつけてゆく。
チリチリと肌に感覚を覚える。
400年前の聖女の感覚を身に感じる。
優しく、正義感のある気配。
人々を慈しんでいた思い。
それを感じていた。
紡ぐ。
言葉を。
祈りを。
感謝を。
愛しさを。
優しさを。
想いを。
歌のように口に乗せる。
古代語の不思議な感覚。
聖女としての力を最大限に使う。
自分が持つ力。
浄化、癒し、結界。
三つを組み合わせる事でより強固な力へと変貌する。
その代わり制限が大きくなる。
今はそのことを考えない。
この地に住む者のために惜しみなく使う。
力は光になり温かな灯火に変わる。
光は増し空へと真っ直ぐに伸びた。
パシッと音と共に四散したのだった。
人々は何事かと空を見上げた。
驚きの声があがり、騒ぎになりかけた。
しかし、それは少しのこと。
それは雨のように降り注ぐ光は人々の心を癒し、落ち着かせるものだった。
人々は祈った。
そうしなければならないと思ってー。
アシュリーは気を失ったシェリルを抱きしめてた。
その顔には笑みはなかった。
屋敷に帰るとアリスが出迎えた。
唇を真一文字にしてー。
あっさりとした言葉にグレンディールたちは驚いた。
「今からか?どうやって?」
騎士たちはまだ討伐の任務が残っている。
余程の事がない限りは山を降りない。
シェリルはゴソゴソと自分の万能袋をあさり転移方陣の書かれた紙を取り出した。
「コレで帰ります」
あらかじめ用意していたのだろう。
グレンディールたちは呆れたように二人を見た。
「わたしたちはこれから広場へ行き最後の仕上げをします。そうすれば魔獣も減るはずです」
「そうか。わかった」
「あと・・・」
シェリルは再び万能袋の中を探り、ポーションを大量にとり出していく。
騎士たちが引くように見ていた。
「これを、神殿に置いといてください。真空容器に入れているので半永久に使える品物ですから、ここに置いて置くと便利かと・・・」
ベシッ
グレンディールの手加減デコピンがはいる。
それでも痛かったのか、額を抑えた。
「いっ!!」
「「「グレン様!!」」」
「シェリル!」
「やりすぎだ!そこまで要求はしてない」
「でも・・・」
「過保護者も止めろ!」
「・・・・・・」
「お前が倒れたら悲しむ奴らが大勢いるんだ。少しはわからんか!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二つの沈黙。
「ごめん、なさい」
「・・・・・・」
シュンっとした表情。
絆されそうになるのをグッと押さえる。
「無理すんなよ」
「・・・・・・」
「無理するのか?」
「ちょっと?」
テヘッと笑う。
はあ~、と盛大なため息をグレンディールはついた。
何を言ってもやり通すのだろう。
「後でアシュリーとアリス、ハイセン医師、タルクに盛大に怒られろ!!」
「ええーっ」
シェリルの大ブーイングが起こったのだった。
周りは笑いを噛み殺していた。
移転方陣を綺麗にしく。
アシュリーが方陣に入る前にグレンディールに近づいて来た。
「しばらくシェリルは魔力切れを起こして寝込むと思います。起きてもわたしが許可をするまでは部屋に入らないようにしてください。みなさんも守ってください、いいですね!」
「わ、わかった」
アシュリーの眼光の強さに皆頷いた。
二人は移転方陣な上に立つと消えた。
紙の方陣は燃え尽きたのだ。
*******
シェリルとアシュリーは転移で戻って来るとすぐに広場へと来た。
陽は傾き。夕焼けの中、長い影帽子が伸びている。
シェリルは 水晶のような透明の大きな石
の台座の元へ寄った。
手を広げ四方の守護の力を感じとる。地脈空気、あらゆる感覚。
深呼吸をし、心を通わせる。
神経を巡らせ、一つに結びつけてゆく。
チリチリと肌に感覚を覚える。
400年前の聖女の感覚を身に感じる。
優しく、正義感のある気配。
人々を慈しんでいた思い。
それを感じていた。
紡ぐ。
言葉を。
祈りを。
感謝を。
愛しさを。
優しさを。
想いを。
歌のように口に乗せる。
古代語の不思議な感覚。
聖女としての力を最大限に使う。
自分が持つ力。
浄化、癒し、結界。
三つを組み合わせる事でより強固な力へと変貌する。
その代わり制限が大きくなる。
今はそのことを考えない。
この地に住む者のために惜しみなく使う。
力は光になり温かな灯火に変わる。
光は増し空へと真っ直ぐに伸びた。
パシッと音と共に四散したのだった。
人々は何事かと空を見上げた。
驚きの声があがり、騒ぎになりかけた。
しかし、それは少しのこと。
それは雨のように降り注ぐ光は人々の心を癒し、落ち着かせるものだった。
人々は祈った。
そうしなければならないと思ってー。
アシュリーは気を失ったシェリルを抱きしめてた。
その顔には笑みはなかった。
屋敷に帰るとアリスが出迎えた。
唇を真一文字にしてー。
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