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3章、サウロス山脈魔討伐
21.グレン視点
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シェリルが先に歩こうとするのでアシュリーに止められた。
俺が先頭になって松明をを掲げながら歩く。
サウス樹海とは違い、一本道。
奥へゆくと、そこには悲惨な光景が待っていた。
気分が悪くなるような悪臭。
口と鼻を押さえてしまう。
全員が・・・やせ細り・・・餓死していた。
牢の中の小さな遺体たち。
そして、牢の前にも・・・。
「魔獣が増えたことで人の出入りができなかった・・・と言ったところですね・・・」
アシュリーが見て言った。
「魔獣がいるところに、どうしてあるのかと思えば・・・」
「腕のいい魔術師がいるわね。入り口にも方陣を書いて魔獣や人から隠してたのね」
「ではなぜ、今回はわかったんだ?」
「あの方陣の効力が切れたみたい。描いた本人が死んだか、方陣に血がついての効力切れか・・・」
牢に近づくシェリルにアシュリーが声をかける。
「シェリル」
「祈るだけよ」
手を組み祈りを捧げる。
歌声のような言葉が紡がれる。
古代語なのだろう、意味までは理解出来なかった。
空気だけが軽くなるのがわかった。悪臭がわずかながら薄らいだ気もする。
「討伐後、捜査に入るようにする」
屋敷に連絡を入れなければならない。
この地が荒らされないようにも・・・。
外に出ると、魔術師の一人に連絡を取るように指示する。
3番隊をここに来させて現場保存させる事にする。
「いつ来れそうだ?」
「明後日の朝になりそうです」
「そうか」
明後日・・・。待つ時間が惜しい。
神殿まではあと目と鼻の先だと言うのに・・・。
「マクロン隊は?」
「明日の朝には合流できます」
「なら、マクロン隊がつき次第、神殿にゆく」
「シェリル、いいか?」
「わかりました」
急遽、テントの位置をこの場に移動する。
移動のリスクを考えれば良くない事だが、この場の保存のためにやむ得ない。
その晩、シェリルは眠れないのか、テントの中でゴソゴソと寝返りを幾度もうっている音が夜遅くまで聞こえてきたのだった。
やはりと言えるだろう。朝起きて来たシェリルは隈を作っていた。
誰もそれについては追求しなかった。
マクロン隊がくると、人数を減らして神殿に向かう。
洞穴から北東に登ったところにそれはあった。それまでの道にも魔獣がいて、戦った。
傷がついた古い建物。いくども魔獣によって傷つけられたのだろう。それでも、しっかりと荘厳なまでに立っていた。
「確かにここだわ。まだかろうじて守護の力がある」
重い扉を開けて全員ではいる。
「山脈内の安全地帯ね。建物自体に加護がかかってる」
内部へと足を進める。
赤い絨毯が引かれた一際広い室内に黒い岩があった。
石碑とも言えない。
どこからか持って来たようなゴツゴツとした岩。
岩の前に石板があった。
シェリルは読めるのか、それをじっと見ていた。
「北の守護石」
岩に手を置くと、そこから膨大な風が生まれた。
シェリルの結っていた紐がとれ、銀色の髪がなびく。キラキラと輝く髪が幻想的だった。
「シェリル!!」
「大丈夫。コレが手助けしてくれるって。ねぇ、グレン様」
「なんだ?」
風の威力が凄すぎて怒鳴るように返してしまった。
振り返ったシェリルの真紅色の瞳が俺を見できた。
「討伐後の予定に各神殿の改修工事をしてくれませんか?」
「改修工事?」
「やはり、信仰の差でも力の維持は違います。立派なものでなくていいのでてきますか?」
「時間がかかるかもしれないがする!」
「お願いしますね」
シェリルの手から発する風は部屋をも壊すかのようなものだった。
目を閉じて、祈る。
暴風の中、何事もないように、祈る。
聞こえるのは歌声。
それがザンッと突如消える。ハラハラと光の粒が降り注ぐ。
終わったのか?
なんだったのだろうか・・・。
シェリルは石板の上に手を置いた。
美しい光が模様を描いていた。
誰もが彼女の仕事に目を奪われたのだった。
「終わりました」
そこには聖女としてのシェリルが立っていた。
俺が先頭になって松明をを掲げながら歩く。
サウス樹海とは違い、一本道。
奥へゆくと、そこには悲惨な光景が待っていた。
気分が悪くなるような悪臭。
口と鼻を押さえてしまう。
全員が・・・やせ細り・・・餓死していた。
牢の中の小さな遺体たち。
そして、牢の前にも・・・。
「魔獣が増えたことで人の出入りができなかった・・・と言ったところですね・・・」
アシュリーが見て言った。
「魔獣がいるところに、どうしてあるのかと思えば・・・」
「腕のいい魔術師がいるわね。入り口にも方陣を書いて魔獣や人から隠してたのね」
「ではなぜ、今回はわかったんだ?」
「あの方陣の効力が切れたみたい。描いた本人が死んだか、方陣に血がついての効力切れか・・・」
牢に近づくシェリルにアシュリーが声をかける。
「シェリル」
「祈るだけよ」
手を組み祈りを捧げる。
歌声のような言葉が紡がれる。
古代語なのだろう、意味までは理解出来なかった。
空気だけが軽くなるのがわかった。悪臭がわずかながら薄らいだ気もする。
「討伐後、捜査に入るようにする」
屋敷に連絡を入れなければならない。
この地が荒らされないようにも・・・。
外に出ると、魔術師の一人に連絡を取るように指示する。
3番隊をここに来させて現場保存させる事にする。
「いつ来れそうだ?」
「明後日の朝になりそうです」
「そうか」
明後日・・・。待つ時間が惜しい。
神殿まではあと目と鼻の先だと言うのに・・・。
「マクロン隊は?」
「明日の朝には合流できます」
「なら、マクロン隊がつき次第、神殿にゆく」
「シェリル、いいか?」
「わかりました」
急遽、テントの位置をこの場に移動する。
移動のリスクを考えれば良くない事だが、この場の保存のためにやむ得ない。
その晩、シェリルは眠れないのか、テントの中でゴソゴソと寝返りを幾度もうっている音が夜遅くまで聞こえてきたのだった。
やはりと言えるだろう。朝起きて来たシェリルは隈を作っていた。
誰もそれについては追求しなかった。
マクロン隊がくると、人数を減らして神殿に向かう。
洞穴から北東に登ったところにそれはあった。それまでの道にも魔獣がいて、戦った。
傷がついた古い建物。いくども魔獣によって傷つけられたのだろう。それでも、しっかりと荘厳なまでに立っていた。
「確かにここだわ。まだかろうじて守護の力がある」
重い扉を開けて全員ではいる。
「山脈内の安全地帯ね。建物自体に加護がかかってる」
内部へと足を進める。
赤い絨毯が引かれた一際広い室内に黒い岩があった。
石碑とも言えない。
どこからか持って来たようなゴツゴツとした岩。
岩の前に石板があった。
シェリルは読めるのか、それをじっと見ていた。
「北の守護石」
岩に手を置くと、そこから膨大な風が生まれた。
シェリルの結っていた紐がとれ、銀色の髪がなびく。キラキラと輝く髪が幻想的だった。
「シェリル!!」
「大丈夫。コレが手助けしてくれるって。ねぇ、グレン様」
「なんだ?」
風の威力が凄すぎて怒鳴るように返してしまった。
振り返ったシェリルの真紅色の瞳が俺を見できた。
「討伐後の予定に各神殿の改修工事をしてくれませんか?」
「改修工事?」
「やはり、信仰の差でも力の維持は違います。立派なものでなくていいのでてきますか?」
「時間がかかるかもしれないがする!」
「お願いしますね」
シェリルの手から発する風は部屋をも壊すかのようなものだった。
目を閉じて、祈る。
暴風の中、何事もないように、祈る。
聞こえるのは歌声。
それがザンッと突如消える。ハラハラと光の粒が降り注ぐ。
終わったのか?
なんだったのだろうか・・・。
シェリルは石板の上に手を置いた。
美しい光が模様を描いていた。
誰もが彼女の仕事に目を奪われたのだった。
「終わりました」
そこには聖女としてのシェリルが立っていた。
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