49 / 150
2章、サウス樹海の中
15.
しおりを挟む
エルバスは一通りの話を聞き終えると天井を仰いだ。
「まだ、アリスとやらを見てはないが、そいつはギルド登録は?」
「してません。とある事情でできませんから」
「おいおい、アシュ。俺とお前の関係だ。正直になろうや」
「おまけがいます」
隣を指差す。
エルバスは気にしていない。
「おまけはおまけだろ。口は、だしやしない」
「おい!」
「今ここにはあんたの味方はいやせんよ。あいつら全員、リルの味方だ」
「はっ?」
目を丸くするグレンディールを憐れみの目で眺める。
「あんな、リルは冒険者だから、みんな身元は追求はしてない。聖女だとわかっていても知らんぷりしている。本人も言ったことはない。
だが、辺境伯様の奥方が聖女だと言うのは、公然の事実として、知られてんだ。あの赤い目は隠しようもないだろう。
なのに、碌でもない噂が回ってる。
俺たちはどっちを信じると思う?見たものを信じるのが俺たちだ。お前も冒険者の端くれだから、わかってるだろ?
なら、導かされるのは一つ。辺境伯は聖女をしいたげている。誰もがそう考えて当然だよな。
俺たちはリルが好きだ。あんたより、な。
悪いが、グレン坊。おまえの味方は、ここにはおらん」
ゴンッ
グレンディールは撃沈した。
いないものとして、話が再びはじまる。
「んんっ、話は戻す。おまけは気にせず教えてくれ」
「では、ここだけの話しで。アリスは元暗殺者です。指名手配が出ています。今はリルのメイド兼護衛です」
「はあ、そういうことか」
「内密に」
「わかった。ちなみにやっぱり?」
「はい、リルが勿論落としました」
「あの笑顔をみりゃあ、落ちるわな~」
既に落ちたもの意見。
ここにいる冒険者たちはシェリルの笑顔見たさにいる。
特に年嵩のものは、娘を孫を見るような眼差しだ。
幾人かは自分の子供や孫に会いたくなって去って行ったものもいるぐらい、保護欲を掻き立てていた。
「アシュリー様」
エルバスの後ろにアリスがいた。
窓も扉も開いていない。
「アリス、どこから入ってきましたか?それにわざわざどうしました?子供たちは?」
「上からです。聖女様から連絡が入りました。子供たちはニーナが見てくれていますので、こちらを優先しました」
どこからかピンクの鳥『マリーちゃん』を取り出した。
マリーちゃんが机の上・・・突っ伏しているグレンディールの頭にわざわざ乗って胸を逸らしたかと思うと、小鳥の口から女性たちの声が聞こえてきた。
『久しぶりね。アシュリー』
『アシュリー、元気かしら?』
『聞こえるか?アシュー』
『はあい、アシュリー』
「お久しぶりです。ウララ様、エステル様、ティティ様、フィアル様」
久しぶりの聖女たちの声だった。
◇◇◇◇◇
沸騰中のため、しばらく1話更新なります。
「まだ、アリスとやらを見てはないが、そいつはギルド登録は?」
「してません。とある事情でできませんから」
「おいおい、アシュ。俺とお前の関係だ。正直になろうや」
「おまけがいます」
隣を指差す。
エルバスは気にしていない。
「おまけはおまけだろ。口は、だしやしない」
「おい!」
「今ここにはあんたの味方はいやせんよ。あいつら全員、リルの味方だ」
「はっ?」
目を丸くするグレンディールを憐れみの目で眺める。
「あんな、リルは冒険者だから、みんな身元は追求はしてない。聖女だとわかっていても知らんぷりしている。本人も言ったことはない。
だが、辺境伯様の奥方が聖女だと言うのは、公然の事実として、知られてんだ。あの赤い目は隠しようもないだろう。
なのに、碌でもない噂が回ってる。
俺たちはどっちを信じると思う?見たものを信じるのが俺たちだ。お前も冒険者の端くれだから、わかってるだろ?
なら、導かされるのは一つ。辺境伯は聖女をしいたげている。誰もがそう考えて当然だよな。
俺たちはリルが好きだ。あんたより、な。
悪いが、グレン坊。おまえの味方は、ここにはおらん」
ゴンッ
グレンディールは撃沈した。
いないものとして、話が再びはじまる。
「んんっ、話は戻す。おまけは気にせず教えてくれ」
「では、ここだけの話しで。アリスは元暗殺者です。指名手配が出ています。今はリルのメイド兼護衛です」
「はあ、そういうことか」
「内密に」
「わかった。ちなみにやっぱり?」
「はい、リルが勿論落としました」
「あの笑顔をみりゃあ、落ちるわな~」
既に落ちたもの意見。
ここにいる冒険者たちはシェリルの笑顔見たさにいる。
特に年嵩のものは、娘を孫を見るような眼差しだ。
幾人かは自分の子供や孫に会いたくなって去って行ったものもいるぐらい、保護欲を掻き立てていた。
「アシュリー様」
エルバスの後ろにアリスがいた。
窓も扉も開いていない。
「アリス、どこから入ってきましたか?それにわざわざどうしました?子供たちは?」
「上からです。聖女様から連絡が入りました。子供たちはニーナが見てくれていますので、こちらを優先しました」
どこからかピンクの鳥『マリーちゃん』を取り出した。
マリーちゃんが机の上・・・突っ伏しているグレンディールの頭にわざわざ乗って胸を逸らしたかと思うと、小鳥の口から女性たちの声が聞こえてきた。
『久しぶりね。アシュリー』
『アシュリー、元気かしら?』
『聞こえるか?アシュー』
『はあい、アシュリー』
「お久しぶりです。ウララ様、エステル様、ティティ様、フィアル様」
久しぶりの聖女たちの声だった。
◇◇◇◇◇
沸騰中のため、しばらく1話更新なります。
41
お気に入りに追加
3,396
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
めぐめぐ
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。魔法しか取り柄のないお前と』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公が、パーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー短編。
※思いつきなので色々とガバガバです。ご容赦ください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
※単純な話なので安心して読めると思います。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~
五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。
「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」
ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。
「……子供をどこに隠した?!」
質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。
「教えてあげない。」
その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。
(もう……限界ね)
セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。
「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」
「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」
「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」
「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」
セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。
「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」
広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。
(ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)
セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。
「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」
魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。
(ああ……ついに終わるのね……。)
ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」
彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる