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1章、契約の内容
12.
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ギルドに戻ってきた、二人の前にエルバスは青い顔で現れた。動きがゼンマイ仕掛けの人形のようにカクカクしている。
「どうしましたか?」
「どうもこうもねぇ!あのポーションなんなんだ?」
意味がわからない。
エルバスは二人を奥の部屋に引っ張るように連れていくと、机を叩いた。
「どう言うことだ!あのポーション、質が高すぎる。ここじゃぁ、売れねぇ!!」
「嘘っ?」
「嘘じゃねぇ。ここじゃぁ、ポーションは足んねぇから、高値で取引されるんだ。初級のでも中級並の値段がするのがあたりまえなんだぞ。
それなのに、あれは質が高い。誰も彼もが手がでねぇ品物になる。売るとしたら騎士隊に売るぐらいだろ・・・。
あんたが『翠の聖女』と言われている理由はよくわかった。でだ、どうにかなんねぇか?」
「つまり?」
「そ、そのな・・・」
言い淀むエルバスをじっと伺う。
「質をあまり落とさず、大量にかつ、安く・・・できねぇか・・・?」
「経済も回す?」
「そ、それはもちろん、その方がいいに決まってるが・・・」
最後はボソボソと小さな声だった。
「でしたら、提案ですが、一度皆さんの意見を聞きたいです」
「意見?」
「はい、今、持ち運びにも便利な丸薬を考えてはいるのですが、ギルマスさんもご存じだと思いますが、ポーションも取りすぎると、身体治癒能力の低下や魔力酔い、品物によっては依存を起こします。それを抑えれば、今度は治癒効能が低下します。現役の冒険者さんの意見を聞かせてもらいたいのです」
「丸薬・・・夢見たいな品物だな。そりゃあ・・・そんなものができるなら、協力するが・・・それがさっきの話と、どうつながる?」
腕を組み考えてみるが、エルバスにはわからなかった。
シェリルはアシュリーを見て頷くと、エルバスを真正面から見据えて、自分の考えを述べ出した。
「簡単に言えばモニターになっていただきたいです。無料で渡すので、使ったあとアンケートに答えてもらいたいのです。より多くのデータがあれば作りやすい。ですが・・・」
「冒険者は、はっきり言って荒い。時にはルールを破る。貴方にはその取りまとめをしていただきたいのです。それができるならば、ご協力できます」
「しかしだ、収益は?」
「初めは、初級ポーションの少し質を落としたのを半値で下ろします。丸薬のモニターは一つのパーティに一種類。喧嘩にならないように10チーム、順番にしてもらいます。あと、ポーションの材料・・・魔獣素材などは委託させてください」
「質を落としたポーション・・・」
「簡単に言えば、初級ポーションを聖水で水増しですね」
エルバスは考える。
怪我が絶えない地で、死者を出さず、いかにしていくかは、自分にかかっているのだ。ギルドマスターとして、どう動けばいいのか考えた。
「わかった。それでお願いする。今回のポーションは・・・」
「騎士に売りつけて構いませんよ」
「しかし、今はその代金・・・」
「売った後に支払ってください。あと、アシュのも鑑定お願いします。あっ、でも、アシュのはきちんとください。この後買い食いしたいので」
子供らしい発言に苦笑いをする。
ふと、真顔になり言いにくそうに口火を切った。
「聖女さん、あんた、伯爵に嫁いだんだよな?」と。
「どうしましたか?」
「どうもこうもねぇ!あのポーションなんなんだ?」
意味がわからない。
エルバスは二人を奥の部屋に引っ張るように連れていくと、机を叩いた。
「どう言うことだ!あのポーション、質が高すぎる。ここじゃぁ、売れねぇ!!」
「嘘っ?」
「嘘じゃねぇ。ここじゃぁ、ポーションは足んねぇから、高値で取引されるんだ。初級のでも中級並の値段がするのがあたりまえなんだぞ。
それなのに、あれは質が高い。誰も彼もが手がでねぇ品物になる。売るとしたら騎士隊に売るぐらいだろ・・・。
あんたが『翠の聖女』と言われている理由はよくわかった。でだ、どうにかなんねぇか?」
「つまり?」
「そ、そのな・・・」
言い淀むエルバスをじっと伺う。
「質をあまり落とさず、大量にかつ、安く・・・できねぇか・・・?」
「経済も回す?」
「そ、それはもちろん、その方がいいに決まってるが・・・」
最後はボソボソと小さな声だった。
「でしたら、提案ですが、一度皆さんの意見を聞きたいです」
「意見?」
「はい、今、持ち運びにも便利な丸薬を考えてはいるのですが、ギルマスさんもご存じだと思いますが、ポーションも取りすぎると、身体治癒能力の低下や魔力酔い、品物によっては依存を起こします。それを抑えれば、今度は治癒効能が低下します。現役の冒険者さんの意見を聞かせてもらいたいのです」
「丸薬・・・夢見たいな品物だな。そりゃあ・・・そんなものができるなら、協力するが・・・それがさっきの話と、どうつながる?」
腕を組み考えてみるが、エルバスにはわからなかった。
シェリルはアシュリーを見て頷くと、エルバスを真正面から見据えて、自分の考えを述べ出した。
「簡単に言えばモニターになっていただきたいです。無料で渡すので、使ったあとアンケートに答えてもらいたいのです。より多くのデータがあれば作りやすい。ですが・・・」
「冒険者は、はっきり言って荒い。時にはルールを破る。貴方にはその取りまとめをしていただきたいのです。それができるならば、ご協力できます」
「しかしだ、収益は?」
「初めは、初級ポーションの少し質を落としたのを半値で下ろします。丸薬のモニターは一つのパーティに一種類。喧嘩にならないように10チーム、順番にしてもらいます。あと、ポーションの材料・・・魔獣素材などは委託させてください」
「質を落としたポーション・・・」
「簡単に言えば、初級ポーションを聖水で水増しですね」
エルバスは考える。
怪我が絶えない地で、死者を出さず、いかにしていくかは、自分にかかっているのだ。ギルドマスターとして、どう動けばいいのか考えた。
「わかった。それでお願いする。今回のポーションは・・・」
「騎士に売りつけて構いませんよ」
「しかし、今はその代金・・・」
「売った後に支払ってください。あと、アシュのも鑑定お願いします。あっ、でも、アシュのはきちんとください。この後買い食いしたいので」
子供らしい発言に苦笑いをする。
ふと、真顔になり言いにくそうに口火を切った。
「聖女さん、あんた、伯爵に嫁いだんだよな?」と。
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