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1章、契約の内容
11.
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太陽が真上を過ぎた頃、アシュリーがゆったりと帰ってきた。行く時と変わりのない姿だが、その顔付きはスッキリとしている。紫の目の色が幾分濃くなっていた。
「アシュ、お疲れ様。どうだった?」
「完璧です。わたしを誰だと?」
「Aランクのアシュ、です」
「リルはどうでしたか?」
「豊作。レアものもあったわ。少しだけとって、おまじないかけたから、次来た時もまた採れるよ」
おまじない、と聞いてアシュリーの眉が歪む。あまりシェリルに聖女の力を使わせたくなかった。
「大丈夫だって。おまじない程度は影響ないって言ってるでしょ!それより、アシュ、ここ、大事にされてるみたいだから、薬草全般が認識されてないみたい。気づく者にしかわからないようになってるよ」
興奮気味に喋るシェリルを、珍しく思いながら、話を聞いた。
持参した食事を万能袋から取り出し、二人で食べる。
「そうそう、後で紹介したい子がいます」
「んっ?」
リスのように頬にいっぱい詰め込んだシェリルが顔を向ける。
ムグムグと言葉にならない彼女に呆れながらアシュリーは言う。
「リスにならないで食べなさい。お行儀が悪いです」
コクコクと頷き、手渡された水を飲む。
「ごめんなさい。紹介したい子?」
「はい、可愛いですよ」
ニカリと悪戯っ子のようにアシュリーは笑った。
滅多に見れない顔に期待が膨らみ、まだ手に持っていた物を口に詰め込み過ぎて、むせて、アシュリーに怒られた。
食べ終わり一息ついた頃、アシュリーが森の中へと入っていった。
数分後、蒼い馬と共に帰ってくる。
「リル。この子がこの中に入れるようにできますか?」
「うん」
シェリルは近づき、その馬の前に立つ。
「はじめまして、わたしはシェリル。あなたも知ってる通り、この中には敵意があるものや悪いものは入れない。敵意をむけたり、悪い事をしないなら、あなたや、あなたの一族も入れる。約束、できる?」
蒼い馬はブルリと鼻をならした。
「おいで」
ゆっくりと入ってくる。
「アシュ、この子は?」
「伝説級・・・賢蒼馬です」
「あの?すごく『賢くて早く走る蒼い馬』と言われるあのアルヴィス?」
「はい。鑑定したところ間違いありません」
シェリルが手を持っていくと、賢蒼馬はフンっと顔を背ける。アシュに対してだけ好ましく思っているようだった。
「テイマーするの?」
「そのつもりはないのですが・・・」
困り顔。なぜなら、賢蒼馬はアシュリーの服をしきりにつついていたからだ。
「してあげたら?」
「わたしの主人はシェリルです。その主人を乗せることも出来ないようなら友達で十分です」
ガーン・・・。
賢蒼馬が顎がパカリと開き、青快の目がうるうると潤んでいる。
「そうでしょう。あの城からここまでの行き来するのに馬が必要なんですよ。毎回歩くには時間がかかります。シェリルを乗せて走る馬が必要なのであって、シェリルを認めず乗せることができないならば、この場の友で十分でしょう?」
容赦のない言葉に、人間めいた賢蒼馬は次第にフルフル震えだしフヒーン、フヒーンと泣きだした。
「アシュ、泣いてるよ」
「ですが・・・」
「乗せて、くれる、よねっ?」
ブンブンブンと首を縦に振る。蒼い立髪がバッサバッサと揺れる。
「ほらぁ~」
「・・・しかたないですね。シェリル優先です。それが無理なら捨てます、からね」
ブンブンブン
「では、いいでしょう。・・・そうですね・・・『ケヴィン』がいいですね」
こうして賢蒼馬はアシュリーにテイマーされたのだった。
「アシュ、お疲れ様。どうだった?」
「完璧です。わたしを誰だと?」
「Aランクのアシュ、です」
「リルはどうでしたか?」
「豊作。レアものもあったわ。少しだけとって、おまじないかけたから、次来た時もまた採れるよ」
おまじない、と聞いてアシュリーの眉が歪む。あまりシェリルに聖女の力を使わせたくなかった。
「大丈夫だって。おまじない程度は影響ないって言ってるでしょ!それより、アシュ、ここ、大事にされてるみたいだから、薬草全般が認識されてないみたい。気づく者にしかわからないようになってるよ」
興奮気味に喋るシェリルを、珍しく思いながら、話を聞いた。
持参した食事を万能袋から取り出し、二人で食べる。
「そうそう、後で紹介したい子がいます」
「んっ?」
リスのように頬にいっぱい詰め込んだシェリルが顔を向ける。
ムグムグと言葉にならない彼女に呆れながらアシュリーは言う。
「リスにならないで食べなさい。お行儀が悪いです」
コクコクと頷き、手渡された水を飲む。
「ごめんなさい。紹介したい子?」
「はい、可愛いですよ」
ニカリと悪戯っ子のようにアシュリーは笑った。
滅多に見れない顔に期待が膨らみ、まだ手に持っていた物を口に詰め込み過ぎて、むせて、アシュリーに怒られた。
食べ終わり一息ついた頃、アシュリーが森の中へと入っていった。
数分後、蒼い馬と共に帰ってくる。
「リル。この子がこの中に入れるようにできますか?」
「うん」
シェリルは近づき、その馬の前に立つ。
「はじめまして、わたしはシェリル。あなたも知ってる通り、この中には敵意があるものや悪いものは入れない。敵意をむけたり、悪い事をしないなら、あなたや、あなたの一族も入れる。約束、できる?」
蒼い馬はブルリと鼻をならした。
「おいで」
ゆっくりと入ってくる。
「アシュ、この子は?」
「伝説級・・・賢蒼馬です」
「あの?すごく『賢くて早く走る蒼い馬』と言われるあのアルヴィス?」
「はい。鑑定したところ間違いありません」
シェリルが手を持っていくと、賢蒼馬はフンっと顔を背ける。アシュに対してだけ好ましく思っているようだった。
「テイマーするの?」
「そのつもりはないのですが・・・」
困り顔。なぜなら、賢蒼馬はアシュリーの服をしきりにつついていたからだ。
「してあげたら?」
「わたしの主人はシェリルです。その主人を乗せることも出来ないようなら友達で十分です」
ガーン・・・。
賢蒼馬が顎がパカリと開き、青快の目がうるうると潤んでいる。
「そうでしょう。あの城からここまでの行き来するのに馬が必要なんですよ。毎回歩くには時間がかかります。シェリルを乗せて走る馬が必要なのであって、シェリルを認めず乗せることができないならば、この場の友で十分でしょう?」
容赦のない言葉に、人間めいた賢蒼馬は次第にフルフル震えだしフヒーン、フヒーンと泣きだした。
「アシュ、泣いてるよ」
「ですが・・・」
「乗せて、くれる、よねっ?」
ブンブンブンと首を縦に振る。蒼い立髪がバッサバッサと揺れる。
「ほらぁ~」
「・・・しかたないですね。シェリル優先です。それが無理なら捨てます、からね」
ブンブンブン
「では、いいでしょう。・・・そうですね・・・『ケヴィン』がいいですね」
こうして賢蒼馬はアシュリーにテイマーされたのだった。
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