【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

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1章、契約の内容

6.

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 赤毛に緑色の目のガッチリした男。体格に反して、愛嬌のある顔立ちをしている。

「あなたは・・・?」
「俺は、一番騎士隊隊長のアルドっす。奥様はどこかお出掛けっすか?」
「シェリルでいいわよ」
「しかし・・・」
「形ばかりの奥さまに気を遣わないで。だから、わたしがどこに行こうと気にしなくていいわよ」

 シェリルの軽い感じの言い方に、アルドは気まずそうにポリポリと頭をかいた。

「やっぱりっすか?」
「やっぱり?」
「グレン様やっちまいましたか?」
「どう意味するのかわかんないけど、そうなんじゃない?」

 不思議に思い、首を傾げる。
 その可愛らしい幼い行動にアルドは目を見張った。
 
「えっと・・・すまないっす」
「謝らないで。わたし、困ってないもの」
「でも・・・」
「これからね、ギルドに行くの」
「ギルドっすか?」
「うん、薬の材料が欲しいのよ。だから何も見なかった事にしてくれたらいいなぁ・・・。もちろん向こうでは身分は内緒にしておくから、心配しないで」
「それは、いいっすけど・・・」
「じゃあ、行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい」

 シェリルはアルドに手を振るとアシュリーを伴い去って行った。




***

 残されたアルドは困ったような顔だった。

「おい、あれが奥様か?」
 
 木陰から、三人の騎士が出てきた。二番騎士隊長、茶色の髪に緑の目のスラリとした体型のライク。三番騎士隊長の金糸の髪に青い目のインテリ風トマー、四番隊長の赤茶髪に青い目のマッチョのニック、だ。

 顔をつき合わせるように集まると小さな声で話し合いだす。

「幼いよな」
「何歳だ?」
「15歳らしいぞ」
「それより幼いだろう?」
「聖女だよな・・・」
「戦争経験してんだよな・・・」

 思うところがありすぎるのか彼らはブツブツと呟く。

主人あるじもどうなんだ?ニーナ様とやっぱり、・・・だよな?」
「言うな。まあ、そうだろうな・・・」
「このこと言うか?」
「いや、言わなくていいよな」
「言わなくていいだろう!!」
「そういや奥様・・・シェリル様か、薬って言ったよな」
「ああっ」
「相談してみるか?」
「いいかもな。薬が作れるなら、相談してみよう」

 彼らは頷く。
 それも白々しく。
 
「で、あの侍女何もんだ?」

 ライクの言葉に一様に動きを止めた。

「絶対、俺たちに気付いてたよな」
「お前、言うなよ」
「わざわざ避けてた話題をだすか?」
「しかし!」
「こえーよ。」
「気づいてたどころか、殺気放ってたぞ」
「シェリル様の事バラすなって、脅してたよな」
「グレン様以来の危機を感じたぞ」
「そうか?」
「ライク、鈍い・・・」
 
 彼らは部下たちが呼びに来るまで語らっていた。
 
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