奏世の歌使い〜鳥籠を失くした金糸雀は、楽園創造の旋律を謳う〜

華宮理子

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始奏―とある世界線の約束

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──◼️◼️、僕の声、聞こえてる?◼️◼️は耳がいいから、僕の声が届くはずだけど。

1回、声の主が言葉を切る。何かが落ちていく、重い音が響き渡った。

──届いていると思って、今から僕は独り言を言うね。

──君がこうなってから、今日で10年経った。そう、君の誕生日だ。

──今、君が見ているのはどんな景色だろうか。パパがくれた本みたいな感じかな。いつか見れたらいいな。

──まあ、見えないんだけどね。

──こっちの様子は知りたい?■■は知りたいって言ってたけど……■■が知ると、ショックを受けるだろうしやめておこう。

──こんな日には……盛大に君の好物を食べさせてあげたいな。

──……嘘ついた。ごめん。本当だったら、さ……。

嗚咽が混じっていて、声が聞き取れない。轟音がひとつ、ふたつ、彼の言葉を遮るように鳴る。

──こんなことになるんだったら、もっと食べられたら、よかったのにね。

──可哀想だと、君のことは思わないよ、■■。だって、そう言ったら君の覚悟と笑顔を裏切ることになるでしょ?

──でもさ……

──なんでこうも、人ってさ。嫌なのが多いんだろうね。
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