268 / 280
第267話 それとこれとは……
しおりを挟む
ともかく。
異世界の状況はわかった。
ルナの救出も、真子の安全も、帝国の存続も。
アルテマたちがもたらす支援物資に運命が委ねられている。
そのためにはやはり難陀《なんだ》をどうにかし、開門揖盗《デモン・ザ・ホール》を復活させねばならない。
「偽島よ。魔法陣《ソーラーパネル》の設置はどうなっている?」
「あらかた終了している。誠司の指示どおり裏山を中心にして半径3キロの範囲、六芒星を形作るように配置した。これで本当にアマテラスを召喚できるのか? アルテマ殿」
偽島は和解してからアルテマを殿付きで呼ぶ。
おそらく今後、異世界との交流を意識してでの敬称だろう。
なんだかむず痒いが、馴れ馴れしくされるよりは丁度良い距離感だとアルテマも思っていた。
「……こればっかりはな。やってみないことには」
「切り札が不確定というのも、作戦としてはお粗末では?」
「ならばもっと時間をかけて確実にやつを仕留められる方法をみつけるか?」
「……いや、それこそ論外です。私は親として何を犠牲にしてでも真子を護ってやらねばいけません」
「むぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぼ、ぼ、ぼ、僕も!! ル、ル、ルナちゅわぁんっ!!」
「そうだな。それにこうしている間にも犠牲者は増えてくるかもしれない」
真子を飲み込んでから難陀《なんだ》の活動は止まっている。
しかしいつ何時また動き出すかわからない。悠長にしている暇はない。
「絶対にだめじゃ!!」
難陀《なんだ》の元に赴《おもむ》く意思を元一に伝えたアルテマたち。
するとやはりというか当然というか、即答で却下された。
「お前たち、あいつにワシらがどんな目にあわされたか忘れたか!?」
考えられないという形相で四人を睨んできた。
ここは鉄の結束荘、職員室。
取り調べから帰ってきた村長と元一の二人。
魔物騒動に関しては、知らぬ存ぜぬ。
証拠の画像や映像を突きつけられてもシラを切り通してきた。
アルテマが魔法を使っている場面などバッチリ収められていたが、とにかく何も知らないと言い通した。
すると知事や公安の連中は意外とあっさり引き下がってくれた。
もちろん元一たちの言葉を信じたわけではない。
あまりにぶっ飛んだ超常現象に、どう扱っていいのかわからないと言ったのが本音だろう。
「……もちろんわかっている。しかしお父さ――――げふん、元一よ」
「アルテマちゃん、いいんだよ!!」
興奮するぬか娘をよそに、真子が異世界に渡っていた事実。切羽詰まったいまの戦況などを説明した。
「そ……そうか……生きていたか。それはなりよりじゃ。よかったの、よかったのう偽島よ、じゅるるるるるるるるるるチーーーーンッ!!!!」
真子の無事を聞いて他人事ではなく安心し、泣きじゃくる元一。
ちり紙から鼻水が溢れそうになっている。
「はい……ありがとうございます。……記憶は失っているようですが五体満足で帝国の庇護下に置かれています」
「ほうか、それでも体が無事やったらなんでもええで!!」
「おう、そうだな。記憶もきっと戻せるだろう。そうだろう依茉《えま》」
話を聞いて盛り上がる飲兵衛と六段。
とりあえず真子だけでも助かって何よりの朗報だとみなは喜んだ。
「こ、公式にはアルテマでたのむ……」
「なんだ照れとるのか? まぁ、いいだろう名前などどっちでもいい」
昔そうしたように頭をグリグリなでてくれる六段。
懐かしすぎる感触に、また色んな思い出が呼び起こされてほっこりするアルテマ。
六段もまた、一緒にラジオ体操をした昔を思い出していた。
「はい、私特製ぬか漬けカレーだよ、めしあがれ」
夕飯時になったので、気を利かしたぬか娘がカレーを作ってくれた。
結束荘では材料がないとき、たまにコレが出てきたりする。
「……う……ま、まぁ……食えないこともないんやが……なんやあっさりしすぎてる気がするのぉ……」
微妙な顔でポリポリ食べている飲兵衛。
福神漬けや、らっきょうの代打も兼ねているのでとても経済的だが、いかんせんコクが足りなさすぎる。
「こないだワシが分けてやった熊肉はどうしたんじゃ?」
「やだなぁゲンさん。そんなのとっくに食べちゃったよね、みんな」
「味噌煮込みに生姜焼き……うまかったなぁぁ~~~~」
「……熊カツに熊バーグ……おいしかった……ぐうぐう」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕はシンプルに熊汁が好きでござる、もぐもぐ……」
「たまのお肉だからね。取り合いして食べちゃったエヘヘ」
「……また分けてやるわい」
「食事を終えたら、あらためて話し合いましょう。いいですか元一さん?」
娘が心配な偽島はそもそも食欲がないようだ。
せっかくのカレーにもほとんど手を付けず、真剣な顔で食い下がってくる。
「わかっとる」
難しい顔をして元一はうなずいた。
異世界の状況はわかった。
ルナの救出も、真子の安全も、帝国の存続も。
アルテマたちがもたらす支援物資に運命が委ねられている。
そのためにはやはり難陀《なんだ》をどうにかし、開門揖盗《デモン・ザ・ホール》を復活させねばならない。
「偽島よ。魔法陣《ソーラーパネル》の設置はどうなっている?」
「あらかた終了している。誠司の指示どおり裏山を中心にして半径3キロの範囲、六芒星を形作るように配置した。これで本当にアマテラスを召喚できるのか? アルテマ殿」
偽島は和解してからアルテマを殿付きで呼ぶ。
おそらく今後、異世界との交流を意識してでの敬称だろう。
なんだかむず痒いが、馴れ馴れしくされるよりは丁度良い距離感だとアルテマも思っていた。
「……こればっかりはな。やってみないことには」
「切り札が不確定というのも、作戦としてはお粗末では?」
「ならばもっと時間をかけて確実にやつを仕留められる方法をみつけるか?」
「……いや、それこそ論外です。私は親として何を犠牲にしてでも真子を護ってやらねばいけません」
「むぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぼ、ぼ、ぼ、僕も!! ル、ル、ルナちゅわぁんっ!!」
「そうだな。それにこうしている間にも犠牲者は増えてくるかもしれない」
真子を飲み込んでから難陀《なんだ》の活動は止まっている。
しかしいつ何時また動き出すかわからない。悠長にしている暇はない。
「絶対にだめじゃ!!」
難陀《なんだ》の元に赴《おもむ》く意思を元一に伝えたアルテマたち。
するとやはりというか当然というか、即答で却下された。
「お前たち、あいつにワシらがどんな目にあわされたか忘れたか!?」
考えられないという形相で四人を睨んできた。
ここは鉄の結束荘、職員室。
取り調べから帰ってきた村長と元一の二人。
魔物騒動に関しては、知らぬ存ぜぬ。
証拠の画像や映像を突きつけられてもシラを切り通してきた。
アルテマが魔法を使っている場面などバッチリ収められていたが、とにかく何も知らないと言い通した。
すると知事や公安の連中は意外とあっさり引き下がってくれた。
もちろん元一たちの言葉を信じたわけではない。
あまりにぶっ飛んだ超常現象に、どう扱っていいのかわからないと言ったのが本音だろう。
「……もちろんわかっている。しかしお父さ――――げふん、元一よ」
「アルテマちゃん、いいんだよ!!」
興奮するぬか娘をよそに、真子が異世界に渡っていた事実。切羽詰まったいまの戦況などを説明した。
「そ……そうか……生きていたか。それはなりよりじゃ。よかったの、よかったのう偽島よ、じゅるるるるるるるるるるチーーーーンッ!!!!」
真子の無事を聞いて他人事ではなく安心し、泣きじゃくる元一。
ちり紙から鼻水が溢れそうになっている。
「はい……ありがとうございます。……記憶は失っているようですが五体満足で帝国の庇護下に置かれています」
「ほうか、それでも体が無事やったらなんでもええで!!」
「おう、そうだな。記憶もきっと戻せるだろう。そうだろう依茉《えま》」
話を聞いて盛り上がる飲兵衛と六段。
とりあえず真子だけでも助かって何よりの朗報だとみなは喜んだ。
「こ、公式にはアルテマでたのむ……」
「なんだ照れとるのか? まぁ、いいだろう名前などどっちでもいい」
昔そうしたように頭をグリグリなでてくれる六段。
懐かしすぎる感触に、また色んな思い出が呼び起こされてほっこりするアルテマ。
六段もまた、一緒にラジオ体操をした昔を思い出していた。
「はい、私特製ぬか漬けカレーだよ、めしあがれ」
夕飯時になったので、気を利かしたぬか娘がカレーを作ってくれた。
結束荘では材料がないとき、たまにコレが出てきたりする。
「……う……ま、まぁ……食えないこともないんやが……なんやあっさりしすぎてる気がするのぉ……」
微妙な顔でポリポリ食べている飲兵衛。
福神漬けや、らっきょうの代打も兼ねているのでとても経済的だが、いかんせんコクが足りなさすぎる。
「こないだワシが分けてやった熊肉はどうしたんじゃ?」
「やだなぁゲンさん。そんなのとっくに食べちゃったよね、みんな」
「味噌煮込みに生姜焼き……うまかったなぁぁ~~~~」
「……熊カツに熊バーグ……おいしかった……ぐうぐう」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕はシンプルに熊汁が好きでござる、もぐもぐ……」
「たまのお肉だからね。取り合いして食べちゃったエヘヘ」
「……また分けてやるわい」
「食事を終えたら、あらためて話し合いましょう。いいですか元一さん?」
娘が心配な偽島はそもそも食欲がないようだ。
せっかくのカレーにもほとんど手を付けず、真剣な顔で食い下がってくる。
「わかっとる」
難しい顔をして元一はうなずいた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
傭兵アルバの放浪記
有馬円
ファンタジー
変わり者の傭兵アルバ、誰も詳しくはこの人間のことを知りません。
アルバはずーっと傭兵で生きてきました。
あんまり考えたこともありません。
でも何をしても何をされても生き残ることが人生の目標です。
ただそれだけですがアルバはそれなりに必死に生きています。
そんな人生の一幕
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる