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第222話 1G時代かよ!?
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ということで――――。
「ちょ……ちょっとモジョ、ふ、フラフラするな!! 落っこちる」
「……ぐ……し、仕方ないだろう……お、重いんだから……」
アルテマを肩車しながら声を絞り出すモジョ。
重さで足が震えヨタヨタと、姿勢を安定させることができない。
そんな不安定な中、アルテマは懸命に腕を伸ばしてモジョの携帯を空に掲げる。
そうやって、少しでもゴーレムに近づこうという作戦だが……。
「し、失礼な!! わ、私は重くなんかないぞ!! それどころか異世界時代よりゴッソリと体重が減って大喜びしているところだ!!」
「そりゃあ……子供に戻っているんだから……か、軽いんだろうよ……」
真っ赤になって恥じるアルテマ。
モジョは普段の運動不足が祟《たた》っているようだ。
上下繋がった二人はそのままフラフラと電柱の方へとよろめいていく。
「バ……バカ、そ、そっちに行くと……っ!??」
「あ~~……ぁぅ、足が言うことをきかない……」
ゴーレムの射程圏内に入ってしまった二人は、
――――しゅっ――べしんっ!!!!
――――ばちゃぁぁぁあぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁんっ!!!!
伸びてきたワイヤーの鞭にひっぱたかれ、田んぼに飛ばされてしまった。
「――ぶはっ!! ば、馬鹿者っ!! だからソッチに行くなと!!」
「げほっげほっ!! うげぇ……泥が……口の中に……」
泥だらけになって這い出てくる二人。
鞭を横腹にくらってしまったアルテマは涙目で擦《さす》っている。
「……で、画面は……動いたのか……?」
「あいたたた……うん? ああ、え~~~~っと……。う~~~~む、ま、まぁ……動いては……いるかな?」
画面の中のジルはまた少し変化していた。
今度は完全に床に落ちてしまい、寒いのか、猫の香箱座りのように丸まってしまっていた。
「…………う~~む、かわいい……。だが……また静止しているな……。やっぱり一瞬だけじゃダメか……。どうにかして安定した足場で……ちょっと待ってろ」
そう言うとモジョは近くの民家へと走っていった。
「……最初っからこうすれば良かったんじゃないか……?」
「まぁ……そう言うな、いい足場が借りられたんだから良かったじゃないか……」
三角に立てられた立派な脚立。
その上でアルテマがボヤいた。
モジョは揺れないように、下で脚立の足を持ってくれている。
アルテマは久しぶりにこの世界の道具に感動していた。
この『脚立』という折りたたみ式のハシゴ……めちゃくちゃ便利じゃないかと。
伸ばせばハシゴ。畳めば高所にとどく足場となり、しかも『アルミ』などという軽くて丈夫な金属のおかげで非力な自分でも軽く持ち上げられる。
この道具を帝国に伝えることができれば、建築技師たちの仕事効率も大幅にアップし、それだけ国の発展も早まることだろう。
地味だが、素晴らしい技術だとアルテマは高く評価した。
しかし、それを伝えるには開門揖盗《デモン・ザ・ホール》の再通は必須。
「ど、どうだ……画面は動いているか……?」
ゴーレムが反応しないギリギリの位置を見極めて上に登った。
掲げた携帯の画面を見てみると――――、
「お……お? う、動いている……? 動いているぞ……ん?」
香箱座りで寝ているジル。
かすかにだが、背中が息のリズムで揺れていた。
だがそれも動いたり止まったり、ノイズも走ってどうにもおぼつかない。
「お、やったな。じゃ、じゃあそのままで呼びかけてみろ……上手く行けば会話できるかもしれない」
「師匠~~~~っ!! 私です!! アルテマです!! お休みのところ申し訳ありません!! 応答願います!! ししょ~~~~~~~~~~~うっ!!!!」
叫んでみるが、画面の中のジルは何の反応も示さない。
「……聞こえなかったのかな……じゃ、じゃあもう一度……」
すぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
大きく息を吸い込んで気合を充填するアルテマ。
「しぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~しょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~うっっっ!!!! 聞こえますかっ!! アルテマですよ!! あなたの可愛い娘弟子のアルテマでぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っすっ!!!! もしもぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っしっあぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!」
額に青筋。唾を飛ばしまくって絶叫してみるが、
「……どうだ?」
「…………だ、だめだ……ウンともスンとも反応してくれない」
「そうか……」
モジョは少し考えて、
「だったらもうちょっとだけゴーレムに近づけないか? ……もしかしたらまだ電波が弱くて不完全なのかもしれない……」
本来の開門揖盗《デモン・ザ・ホール》であれば、相手に繋がる前に鐘が鳴る。
これもそのようにプログラムしたつもりだったが、うまく作動したようすはない。
あればその時点でジルになにかの反応があるはずだから。
考えられるとしたら、コチラからの勝手な一方通行でムコウの景色を受信しているだけの可能性。
そうだとしたら、コチラ側の送信が弱い――――つまりもっとゴーレムに接触しなければならないことが予想できるが。
「……こ、こうか?」
アルテマが手をゴーレム側に伸ばした途端――――、
――――しゅっ――べしんっ!!!! ――――ばちゃぁぁぁああぁんっ!!!!
また、さっきと同じことを繰り返してしまった。
「……ぬぅ、やはりダメか……まいったなこりゃ……。お~~~~い無事かぁアルテマ~~~~?」
頭をポリポリ。
田んぼに刺さったアルテマを助けに、嫌々ながらも泥土に足をつけるモジョ。
そんなとき、
「お~~~~~~~~ぃ、アルテマちゃぁ~~~~~~~ぁん……」
遠くからアルテマを探す、ぬか娘の声が聞こえてきた。
「ちょ……ちょっとモジョ、ふ、フラフラするな!! 落っこちる」
「……ぐ……し、仕方ないだろう……お、重いんだから……」
アルテマを肩車しながら声を絞り出すモジョ。
重さで足が震えヨタヨタと、姿勢を安定させることができない。
そんな不安定な中、アルテマは懸命に腕を伸ばしてモジョの携帯を空に掲げる。
そうやって、少しでもゴーレムに近づこうという作戦だが……。
「し、失礼な!! わ、私は重くなんかないぞ!! それどころか異世界時代よりゴッソリと体重が減って大喜びしているところだ!!」
「そりゃあ……子供に戻っているんだから……か、軽いんだろうよ……」
真っ赤になって恥じるアルテマ。
モジョは普段の運動不足が祟《たた》っているようだ。
上下繋がった二人はそのままフラフラと電柱の方へとよろめいていく。
「バ……バカ、そ、そっちに行くと……っ!??」
「あ~~……ぁぅ、足が言うことをきかない……」
ゴーレムの射程圏内に入ってしまった二人は、
――――しゅっ――べしんっ!!!!
――――ばちゃぁぁぁあぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁんっ!!!!
伸びてきたワイヤーの鞭にひっぱたかれ、田んぼに飛ばされてしまった。
「――ぶはっ!! ば、馬鹿者っ!! だからソッチに行くなと!!」
「げほっげほっ!! うげぇ……泥が……口の中に……」
泥だらけになって這い出てくる二人。
鞭を横腹にくらってしまったアルテマは涙目で擦《さす》っている。
「……で、画面は……動いたのか……?」
「あいたたた……うん? ああ、え~~~~っと……。う~~~~む、ま、まぁ……動いては……いるかな?」
画面の中のジルはまた少し変化していた。
今度は完全に床に落ちてしまい、寒いのか、猫の香箱座りのように丸まってしまっていた。
「…………う~~む、かわいい……。だが……また静止しているな……。やっぱり一瞬だけじゃダメか……。どうにかして安定した足場で……ちょっと待ってろ」
そう言うとモジョは近くの民家へと走っていった。
「……最初っからこうすれば良かったんじゃないか……?」
「まぁ……そう言うな、いい足場が借りられたんだから良かったじゃないか……」
三角に立てられた立派な脚立。
その上でアルテマがボヤいた。
モジョは揺れないように、下で脚立の足を持ってくれている。
アルテマは久しぶりにこの世界の道具に感動していた。
この『脚立』という折りたたみ式のハシゴ……めちゃくちゃ便利じゃないかと。
伸ばせばハシゴ。畳めば高所にとどく足場となり、しかも『アルミ』などという軽くて丈夫な金属のおかげで非力な自分でも軽く持ち上げられる。
この道具を帝国に伝えることができれば、建築技師たちの仕事効率も大幅にアップし、それだけ国の発展も早まることだろう。
地味だが、素晴らしい技術だとアルテマは高く評価した。
しかし、それを伝えるには開門揖盗《デモン・ザ・ホール》の再通は必須。
「ど、どうだ……画面は動いているか……?」
ゴーレムが反応しないギリギリの位置を見極めて上に登った。
掲げた携帯の画面を見てみると――――、
「お……お? う、動いている……? 動いているぞ……ん?」
香箱座りで寝ているジル。
かすかにだが、背中が息のリズムで揺れていた。
だがそれも動いたり止まったり、ノイズも走ってどうにもおぼつかない。
「お、やったな。じゃ、じゃあそのままで呼びかけてみろ……上手く行けば会話できるかもしれない」
「師匠~~~~っ!! 私です!! アルテマです!! お休みのところ申し訳ありません!! 応答願います!! ししょ~~~~~~~~~~~うっ!!!!」
叫んでみるが、画面の中のジルは何の反応も示さない。
「……聞こえなかったのかな……じゃ、じゃあもう一度……」
すぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
大きく息を吸い込んで気合を充填するアルテマ。
「しぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~しょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~うっっっ!!!! 聞こえますかっ!! アルテマですよ!! あなたの可愛い娘弟子のアルテマでぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っすっ!!!! もしもぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っしっあぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!」
額に青筋。唾を飛ばしまくって絶叫してみるが、
「……どうだ?」
「…………だ、だめだ……ウンともスンとも反応してくれない」
「そうか……」
モジョは少し考えて、
「だったらもうちょっとだけゴーレムに近づけないか? ……もしかしたらまだ電波が弱くて不完全なのかもしれない……」
本来の開門揖盗《デモン・ザ・ホール》であれば、相手に繋がる前に鐘が鳴る。
これもそのようにプログラムしたつもりだったが、うまく作動したようすはない。
あればその時点でジルになにかの反応があるはずだから。
考えられるとしたら、コチラからの勝手な一方通行でムコウの景色を受信しているだけの可能性。
そうだとしたら、コチラ側の送信が弱い――――つまりもっとゴーレムに接触しなければならないことが予想できるが。
「……こ、こうか?」
アルテマが手をゴーレム側に伸ばした途端――――、
――――しゅっ――べしんっ!!!! ――――ばちゃぁぁぁああぁんっ!!!!
また、さっきと同じことを繰り返してしまった。
「……ぬぅ、やはりダメか……まいったなこりゃ……。お~~~~い無事かぁアルテマ~~~~?」
頭をポリポリ。
田んぼに刺さったアルテマを助けに、嫌々ながらも泥土に足をつけるモジョ。
そんなとき、
「お~~~~~~~~ぃ、アルテマちゃぁ~~~~~~~ぁん……」
遠くからアルテマを探す、ぬか娘の声が聞こえてきた。
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