暗黒騎士様の町おこし ~魔族娘の異世界交易~

盛り塩

文字の大きさ
上 下
220 / 292

第219話 敵に回したくない

しおりを挟む
「し、師匠っ!! ししょーーーーうっ!!??」

 濡れた薄布。
 透き通ったそれから見えるジルの肌はとても70代には見えない。
 どうみても二十歳《ハタチ》そこそこのハリと、クビレをもったその見事な裸に、モジョは同性でありながらも、ちょっと赤面する。

「アニオタたちがいなくて良かった……」

 なんなら……ぬか娘もいなくて良かった。
 そう思いハンカチで頬を拭った。
 アルテマが必死になってジルに呼びかけるが、画面の中のジルは静止画像。
 当然反応は返ってこなかった。
 女魔神像の下、魔法水が溜まった槽から水を汲み、それを頭からかぶって祈りを捧げている。まるで誰かの無事を願っているかのように、真剣な表情をしていた。

「お、おいモジョ!? どうなっている?? なぜ師匠は反応してくれないんだ? 声が届いていないのか!??」
「お……落ち着け落ち着け、そもそも止まっている相手に反応を求めてもしょうがないだろう、さっきも言ったが、これがいまの電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》の限界だ。……というか……そもそもなぜジルさんの姿が映るのだろう……??」

 モジョもいまいち状況を掴みかねているようす。
 しかしそれにはアルテマが答えとなる情報を教えてくれた。

「そ、それは……アレだろう? 師匠のアイアンゴーレムを媒体として電波(?)を飛ばしているのなら、おそらくその受信先は師匠の周辺になる。なぜならあのゴーレムは師匠と精神世界で繋がっているのだからな」
「……精神世界?」
「精神世界というのは悪魔族や天使のブタ野郎どもが――――」

 説明しようとしたアルテマを手で制するモジョ。

「いや……いい。その辺りの理屈はいま聞いてもわからん……。それよりも、そういう原理ならば……もしかしてそのゴーレムをどうにかして強化すれば、通信速度も早まって滑らかに交信ができるようになるかもしれないな……」
「そういうものなのか……??」
「開門揖盗《デモン・ザ・ホール》の魔法が、こちらの回線と同じような原理ならばきっとな……。ゴーレムが媒体として機能しているんだ……たぶん互換性があるのだと思う……しかし……自分で言っておいてなんだが、強化ってどうすればいいのだろうな……」
「そこは魔法の分野だ。私に任せてもらおう。とにかくゴーレムのようすを見に行ってみよう。話はそれからだ」
「……そうだな。ちょっと待ってろ……」

 そう言うと、モジョはキーボードをカチャカチャカチャと、物凄い勢いで叩きはじめた。その指先はアルテマでさえも追えないくらい。

「おお……な、なんて複雑奇っ怪な指さばき……」

 普段寝ぼけてばかりのモジョだったが、いまはまるで覚醒したかのようにものすごい技術を披露している。
 無数のキーを的確に、意味を持って叩く様《さま》は神業と言う他ない。
 もし世界が繋がって帝国にもPC文化がもたらされるようになったら、モジョにはぜひ最高待遇の高文官として帝国に迎え入れたいものだ。

 いや、電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》などととんでもない技術を作り出してしまう彼女を、他の国にでも取られでもしたら大事《おおごと》。その時には何としてでも専属契約を結ばねばならない。
 電光石火で作業を片付けるモジョの背を、ちょっと引き気味に眺めながらアルテマはそう誓った。




「――――……て、おい、アルテマ。何をそんなところで立ち止まっているんだ?」

 仮説橋梁の真ん中、ちょうど隣集落との境目でアルテマは立ち止まった。
 大きな鞄を背負ったモジョは不思議そうに振り向いて首をかしげた。
 ゴーレム化した電線は隣集落にある。そこに向かうため、どうしてもこの橋は渡ってしまわなければならない。

「い……いやその……私はこの先には行けないのだ。蹄沢集落から出てはイケナイと固い約束を交わしている」
「……ああ……そういうのあったな。でも……良いんじゃないか? 事情が事情なんだから……」
「そういうわけにはいかない。……それに約束を破ってしまったら、きっと罰が落ちてしまう。魔神は約束破りにはうるさいんだ。……見逃してはくれないだろう」
「……そんなものなのか」
「そんなものだ。だから我ら魔族は決して嘘をつかない」
「……こっちの世界では〝嘘をつかない〟って言ってるやつが一番嘘つきなんだがな?」

 疑わしい顔を向けるモジョ。
 アルテマはちょっと口をへの時にすると、ツツツと視線を横にやる。

「……いやまぁそりゃ……たまぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~にはあるぞ? あるけども、基本的にはつかないし……ついたらついたで、ちゃんとあとで謝る!!」
「じゃあ――――」

 ――――タランタラ~~。タランタラ~~。タランタラッタラッタタッタ。タランタラ~~。タランタラ~~。タランタラッタタン――――……。

 言いかけたモジョのスマホにまた連絡が入る。
 アニオタからだった。

「――――おう……うん……うん。……そうか……わかった」

 暗い顔で電話を切るモジョ。

「アニオタからだ。……元一の容態が思ったより良くないらしい。……化学治療だけだと、明日……明後日を乗り切るのは……」
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサーーーーーーーーーーーーイッ!!!!」

 魔神だろうが神だろうが。
 大事な人を救う障害になるのなら、いくらでも喧嘩を売ってやる。
 そんな覚悟のもと、アルテマは全力で一線を超えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

処理中です...