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第218話 プロトタイプ
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「電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》!??」
言われた言葉の意味を理解できず、頭の上に無数の〝?〟を浮かべるアルテマ。
まぁ、それも仕方ないよな。と、モジョは苦笑いを浮かべる。
インターネット回線を通じて異世界と交信する。
コッチ側の人間でも到底信じられない絵空事を、科学文明においては遅れている異世界人のアルテマが理解できるはずもないだろうから。
「ああ……もしモノになれば、コレを通じて魔法の使用も可能になるんじゃないかと思ってな……。ほら、以前ジルさんも開門揖盗《デモン・ザ・ホール》を通じて異世界から魔法を使ってくれただろう?」
「通信ゲーブルのときか……ああ、たしかに開門揖盗《デモン・ザ・ホール》は声や物質と同じく魔法も飛ばすことができる……」
「……それはつまり、魔神とやらの信仰も繋がっているということだろう?」
「そうなるな。……しかしその電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》とやらがどんなものか……見てみないことにはわからない」
「……ちょうど、さっきプロトタイプ版を打ち終わったところだ」
そう言ってソフトを立ち上げる。
アルテマの巫女姿をロゴ化したシンボル。それをクリックするとランチャーが立ち上がる。これにはかつてヨウツベがもらっていた異世界の絵画『見渡しの丘』がデザインに使われており、モジョならではのこだわりが感じられた。
しばらく待つと画面が切り替わる。
そして映し出された映像を見て、アルテマは口をポカンと開けた。
ノイズだらけでかなり見ずらい景色だったが、それはどこか高いところから見下ろした街の風景。
以前見た草原の景色と違ったことにモジョは眉を寄せたが、アルテマは口を開けたまま目をまん丸に見開いて、
「こ……これはシュテーンライブルからの城下町……?」
そう細くつぶやいた。
「シュテーンライブル?」
「我が帝国の本城だ。映っているのはそのバルコニーからの景色……しかしどうしてこんなものが……!?」
「……へぇ~~……そうなのか……どうしてだろうな……?」
「いや、お前がわからなくてどうする!?」
首を傾げるモジョの体を揺すって文句を言うアルテマ。
「いや……だからプロトタイプだと言っただろう? ……わたしにだってわからないコトのほうが多いんだ……とりあえず原理を説明するとだな……」
モジョは、この回線とアイアンゴーレムの関係性について説明した。
聞いたアルテマは頭からプスプスと煙を上げる。
「あ~~……うん……。その……つまりこの世界のデジタル信号? が、師匠のアイアンゴーレムを通過することによって……なんだろう? ……どうにかなって異世界へと繋がってしまっていると……?」
「……そうそう、そんな感じ……。ホント、どうにかなってって言うのはいい表現だ……わたしも正直細かいところはまったくわかっていない。……とにかく思いつきの発想でやってみたらうまくいった」
「うまく……いくものなのか??」
「回線速度が安定していなかったので、それを調べていたのがきっかけなんだが……説明いるか?」
モジョの問いに、無言で首を横に振るアルテマ。
これ以上わけのわからんカタカナを詰め込まれたら、頭がどうにかなってしまいそうだからだ。
「ともかく……この景色は師匠のアイアンゴーレムが繋げてくれているモノなのだな?」
「たぶんな。……それ以外考えられない」
アルテマは少し考え込んで質問した。
「……これ、画面が止まっているように見えるのだが。動画にはできないのか?」
「うん? う~~~~ん……いろいろ調べたんだが……どうにも、コッチで言うところの通信速度が足らないようでな、すぐ固まってしまうんだ。だから動画にはできないが……こうやって再読み込みすれば、次の景色に切り替わるはず……」
前回はただの草原。飛ぶ龍や、風になびく草が確認できた程度だった。
それからすぐに警察が入ってきたため検証はできなかったが、景色が様変わりしているところを見ると、なにか移動するものを視点しているのかもしれない。
そう思いエンターキーを押し、次の景色を表示させる。
すると出てきたのは――――
「げっ!?」
「え? あ、し……師匠っ!???」
出てきたのは、スケスケの薄布一枚で水浴びをしているジルの姿だった。
「……山から滑落《かつらく》したと聞きましたが、それは本当なんですか?」
疑わしい目で医者が六段を睨んでくる。
六段は顔面に青筋をいっぱいに浮かべてそれを睨み返した。
同じことを聞かれるのはこれで五回目だからだ。
「しつこいな……本当だと言っとるだろうが。……疑うのなら本人に直接聞けばいいだろう。完璧に治療して目覚めさせた後でなっ!!」
言われた医者は目線を外し軽いため息を吐く。
「……偽島誠さんの方は重症ですが、命に問題はないでしょう。……しかし有手《あるで》さんの方は……高齢ですから……ここ二、三日が山となってくるでしょう」
「ゲンさんはこんなことでは死なんっ!! そんじゃそこらの若者よりもよっぽど頑丈なジジイなんだ!! 二十年前ワシが軽トラで撥《は》ね飛ばしたときもピンピンして怒り狂ってきたもんだっ!!」
「二十年も経てば人は衰えますよ(てか、すごいなオイ)……ともかく、遺族の方には万一のことを考えて心構えをしておくように、お伝え下さい……」
事務的に頭を下げるとその医者は去っていった。
六段は窓越しに見える元一の姿を見て、無念そうに消え入る声でつぶやいた。
「……お前……せっかく……のに。……これからだった……ろ……絶対に死ぬんじゃないぞ……!!」
言われた言葉の意味を理解できず、頭の上に無数の〝?〟を浮かべるアルテマ。
まぁ、それも仕方ないよな。と、モジョは苦笑いを浮かべる。
インターネット回線を通じて異世界と交信する。
コッチ側の人間でも到底信じられない絵空事を、科学文明においては遅れている異世界人のアルテマが理解できるはずもないだろうから。
「ああ……もしモノになれば、コレを通じて魔法の使用も可能になるんじゃないかと思ってな……。ほら、以前ジルさんも開門揖盗《デモン・ザ・ホール》を通じて異世界から魔法を使ってくれただろう?」
「通信ゲーブルのときか……ああ、たしかに開門揖盗《デモン・ザ・ホール》は声や物質と同じく魔法も飛ばすことができる……」
「……それはつまり、魔神とやらの信仰も繋がっているということだろう?」
「そうなるな。……しかしその電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》とやらがどんなものか……見てみないことにはわからない」
「……ちょうど、さっきプロトタイプ版を打ち終わったところだ」
そう言ってソフトを立ち上げる。
アルテマの巫女姿をロゴ化したシンボル。それをクリックするとランチャーが立ち上がる。これにはかつてヨウツベがもらっていた異世界の絵画『見渡しの丘』がデザインに使われており、モジョならではのこだわりが感じられた。
しばらく待つと画面が切り替わる。
そして映し出された映像を見て、アルテマは口をポカンと開けた。
ノイズだらけでかなり見ずらい景色だったが、それはどこか高いところから見下ろした街の風景。
以前見た草原の景色と違ったことにモジョは眉を寄せたが、アルテマは口を開けたまま目をまん丸に見開いて、
「こ……これはシュテーンライブルからの城下町……?」
そう細くつぶやいた。
「シュテーンライブル?」
「我が帝国の本城だ。映っているのはそのバルコニーからの景色……しかしどうしてこんなものが……!?」
「……へぇ~~……そうなのか……どうしてだろうな……?」
「いや、お前がわからなくてどうする!?」
首を傾げるモジョの体を揺すって文句を言うアルテマ。
「いや……だからプロトタイプだと言っただろう? ……わたしにだってわからないコトのほうが多いんだ……とりあえず原理を説明するとだな……」
モジョは、この回線とアイアンゴーレムの関係性について説明した。
聞いたアルテマは頭からプスプスと煙を上げる。
「あ~~……うん……。その……つまりこの世界のデジタル信号? が、師匠のアイアンゴーレムを通過することによって……なんだろう? ……どうにかなって異世界へと繋がってしまっていると……?」
「……そうそう、そんな感じ……。ホント、どうにかなってって言うのはいい表現だ……わたしも正直細かいところはまったくわかっていない。……とにかく思いつきの発想でやってみたらうまくいった」
「うまく……いくものなのか??」
「回線速度が安定していなかったので、それを調べていたのがきっかけなんだが……説明いるか?」
モジョの問いに、無言で首を横に振るアルテマ。
これ以上わけのわからんカタカナを詰め込まれたら、頭がどうにかなってしまいそうだからだ。
「ともかく……この景色は師匠のアイアンゴーレムが繋げてくれているモノなのだな?」
「たぶんな。……それ以外考えられない」
アルテマは少し考え込んで質問した。
「……これ、画面が止まっているように見えるのだが。動画にはできないのか?」
「うん? う~~~~ん……いろいろ調べたんだが……どうにも、コッチで言うところの通信速度が足らないようでな、すぐ固まってしまうんだ。だから動画にはできないが……こうやって再読み込みすれば、次の景色に切り替わるはず……」
前回はただの草原。飛ぶ龍や、風になびく草が確認できた程度だった。
それからすぐに警察が入ってきたため検証はできなかったが、景色が様変わりしているところを見ると、なにか移動するものを視点しているのかもしれない。
そう思いエンターキーを押し、次の景色を表示させる。
すると出てきたのは――――
「げっ!?」
「え? あ、し……師匠っ!???」
出てきたのは、スケスケの薄布一枚で水浴びをしているジルの姿だった。
「……山から滑落《かつらく》したと聞きましたが、それは本当なんですか?」
疑わしい目で医者が六段を睨んでくる。
六段は顔面に青筋をいっぱいに浮かべてそれを睨み返した。
同じことを聞かれるのはこれで五回目だからだ。
「しつこいな……本当だと言っとるだろうが。……疑うのなら本人に直接聞けばいいだろう。完璧に治療して目覚めさせた後でなっ!!」
言われた医者は目線を外し軽いため息を吐く。
「……偽島誠さんの方は重症ですが、命に問題はないでしょう。……しかし有手《あるで》さんの方は……高齢ですから……ここ二、三日が山となってくるでしょう」
「ゲンさんはこんなことでは死なんっ!! そんじゃそこらの若者よりもよっぽど頑丈なジジイなんだ!! 二十年前ワシが軽トラで撥《は》ね飛ばしたときもピンピンして怒り狂ってきたもんだっ!!」
「二十年も経てば人は衰えますよ(てか、すごいなオイ)……ともかく、遺族の方には万一のことを考えて心構えをしておくように、お伝え下さい……」
事務的に頭を下げるとその医者は去っていった。
六段は窓越しに見える元一の姿を見て、無念そうに消え入る声でつぶやいた。
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