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第133話 人生の決断
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「そうか……どうやら俺は勘違いをしていたようだな。よもやアルテマよ、お前がそんな苦労をしているとはな……ううぅ……」
借りたシャツの裾で鼻水を拭いつつ涙ぐむクロード。
アルテマの作り話をすっかり信じ込んでしまったようだ。
貸したヨウツベはものすごく嫌そうな顔をしている。
「けっきょくどんな作り話をしたんじゃ? アルテマのやつは」
お茶を用意しにいっていた占いさんが帰ってきた。
熱々のほうじ茶をみなに配りながら訊いてくる。
「あ、しー、しーーっ!! いまちょうど終わったところだよ」
配るのを手伝いながら、ざっくりと説明してあげるぬか娘。
それによると、
クロードが消えた後、聖王国は弔い合戦を打ち上げ、総攻撃を開始。
奮戦の結果、みごと帝国軍を圧倒した。
そしてその勢いのまま帝都に進撃。
防衛に徹した帝国軍だったが、勢いに乗った聖王国軍の前にあえなく打ち崩され、領土の大半を占領されてしまう。
そんな状態の中、帝国は姫を人質に停戦を打診。
聖王国はそれを受け入れ、前線を維持したまま、占領街の治安回復を行っている。
事実上、敗北となってしまった帝国軍はほぼ壊滅状態。
国の経済や流通も混乱を極め、民衆は飢えと病気に侵され一刻も早い復興を求められている。
そんな中アルテマはジルと協力し、聖王国の許可を得て、復興支援のための物資を異世界に送っている。
と言う設定。
「ほお……つまりもう戦争は終わってアルテマは敗戦の将。送っている物資はあくまで民衆のためで、聖王国の驚異にはならない、と。……なるほどのう、上手い嘘をつきおるのう」
面白そうにアルテマを見る占いさん。
こういう悪巧みは嫌いじゃなさそうである。
「ワシは気に入らんがな。たとえ嘘でも負けただなどと……死んでも言いたくない」
六段は納得のいかない顔つき。
「そりゃお前さん、男だからじゃろ? 女はな、最後に利を得られるならば一時のプライドなんぞ簡単に捨てられるもんよ」
カカカカと笑う占いさん。
クロードはそんな女の嘘八百にコロリと騙され、話を信じきってしまっていた。
「まぁ、そういうことだから……戦争はもう終わったも同然で、我々が争う理由ももうないんだよ。納得してくれたか?」
「もちろんだ。……そういうことならばもっと早く言ってくれれば良かったのだ。そうすれば私もくだらない賊の真似事など……おおっと、これは内緒だったゴニョゴニョ……」
もっと早くもクソも、いま思いついてテキトーにでっち上げた話だからな。
こんなに簡単に騙せるとわかっていたら、私ももっと早く言ってたよ。と、アルテマは心の中でベロを出した。
なにはともあれ、これでこいつに狙われることもなくなった。
物資の転送も今後ははかどるだろう。
やれやれ一件落着だ――――と言いたいが、もう一つ問題が残っていた。
「ああ、そうそう。それでアレだ、この娘の服を脱がしてやってくれんか?」
「アルテマちゃん、言い方気をつけてね」
約束どおり、呪われた鎧(鏡)の解呪を求めるアルテマ。
雑な言い方とクロードの視線に妙な羞恥心が湧き上がってしまう。
「うむ、かまわないぞ。しかし良いのか? これは結構値が張る品物だぞ」
「……え? 値が張るって、この鎧が? ……いくらくらい!?」
快く引き受けてくれようとするクロードだが、なんだが聞き捨てならないことを言い。思わず値段を聞いてしまうぬか娘。
「異世界とこっちの相場が確定しとらんから確かなことは言えないが、その一式ひとつで並の領主の城くらいなら買えるはずだ」
「誰か、計算」
ぬか娘の目配せに、アニオタが携帯をこすりまくる。
「城、建築費用 西洋……。え~~~と、大体……400~1500億円くらいと出ているござるな」
「「な・ん・だ・と・!!」」
その回答に異世界組の二人以外、全員の声がハモった。
「こ、こ、こ、これが……こんな金属ビキニが1500億!??」
「並の領主、だ。700億くらいだと俺は思うぞ?」
「そ、そ、そ、それでもエグいよ!! え~~~~なにそれ!?? なんでそんな高価なもんが送られてきたの!? これと何交換したっけ??」
「だから、キミの漬物だよ」
と、ヨウツベ。
「あああ~~~そうだった、そうだった。えええ!?? なんでそんな物がこんな貴重品と釣り合っちゃったの~~おかしくない!??」
「食文化とはそれほどまでに価値のあるものと言うことだ。ぬか娘よ、お前が帝国に授けてくれた知恵は城一棟に匹敵するものだと魔神様が判断されたのだろうよ。うろたえることはない、それはお前が手にするべき正当な品だ」
「ア……アルテマちゃん……」
自分の趣味がまさかこんな高い評価を受けるなんて……ぬか娘は感動で目に涙をためた。小学校からこの歳になるまで、小さな賞状くらいしかもらったことのない凡女《ぼんな》にとってそれは天にも昇るように嬉しい言葉だった。
「ん、ん、ん、ん、んでも、これ呪いを解いちゃったらどうなるの……ま、まさか消えてなくなるとか!??」
「いや、どうなるのだクロード?」
アルテマも聖魔法についてはそこまで詳しくない。
まさか消えることはないと思うが……。
「呪いは効果の副産物のようなものだ。解呪をすればそれはただの鎧に変わる」
「ね……値段的には……?」
「そうだな。剣、盾も合わせて5000円くらいじゃないだろうか? 中古だからな」
「ないない(ヾノ・∀・`)ナイナイ。それはない。解呪やめます。私、このままで生きていきます」
ガチャガチャチーンと金の鳴る音を頭から響かせて、ぬか娘は今後の人生を痴女として生きるのを決心したのだった。
借りたシャツの裾で鼻水を拭いつつ涙ぐむクロード。
アルテマの作り話をすっかり信じ込んでしまったようだ。
貸したヨウツベはものすごく嫌そうな顔をしている。
「けっきょくどんな作り話をしたんじゃ? アルテマのやつは」
お茶を用意しにいっていた占いさんが帰ってきた。
熱々のほうじ茶をみなに配りながら訊いてくる。
「あ、しー、しーーっ!! いまちょうど終わったところだよ」
配るのを手伝いながら、ざっくりと説明してあげるぬか娘。
それによると、
クロードが消えた後、聖王国は弔い合戦を打ち上げ、総攻撃を開始。
奮戦の結果、みごと帝国軍を圧倒した。
そしてその勢いのまま帝都に進撃。
防衛に徹した帝国軍だったが、勢いに乗った聖王国軍の前にあえなく打ち崩され、領土の大半を占領されてしまう。
そんな状態の中、帝国は姫を人質に停戦を打診。
聖王国はそれを受け入れ、前線を維持したまま、占領街の治安回復を行っている。
事実上、敗北となってしまった帝国軍はほぼ壊滅状態。
国の経済や流通も混乱を極め、民衆は飢えと病気に侵され一刻も早い復興を求められている。
そんな中アルテマはジルと協力し、聖王国の許可を得て、復興支援のための物資を異世界に送っている。
と言う設定。
「ほお……つまりもう戦争は終わってアルテマは敗戦の将。送っている物資はあくまで民衆のためで、聖王国の驚異にはならない、と。……なるほどのう、上手い嘘をつきおるのう」
面白そうにアルテマを見る占いさん。
こういう悪巧みは嫌いじゃなさそうである。
「ワシは気に入らんがな。たとえ嘘でも負けただなどと……死んでも言いたくない」
六段は納得のいかない顔つき。
「そりゃお前さん、男だからじゃろ? 女はな、最後に利を得られるならば一時のプライドなんぞ簡単に捨てられるもんよ」
カカカカと笑う占いさん。
クロードはそんな女の嘘八百にコロリと騙され、話を信じきってしまっていた。
「まぁ、そういうことだから……戦争はもう終わったも同然で、我々が争う理由ももうないんだよ。納得してくれたか?」
「もちろんだ。……そういうことならばもっと早く言ってくれれば良かったのだ。そうすれば私もくだらない賊の真似事など……おおっと、これは内緒だったゴニョゴニョ……」
もっと早くもクソも、いま思いついてテキトーにでっち上げた話だからな。
こんなに簡単に騙せるとわかっていたら、私ももっと早く言ってたよ。と、アルテマは心の中でベロを出した。
なにはともあれ、これでこいつに狙われることもなくなった。
物資の転送も今後ははかどるだろう。
やれやれ一件落着だ――――と言いたいが、もう一つ問題が残っていた。
「ああ、そうそう。それでアレだ、この娘の服を脱がしてやってくれんか?」
「アルテマちゃん、言い方気をつけてね」
約束どおり、呪われた鎧(鏡)の解呪を求めるアルテマ。
雑な言い方とクロードの視線に妙な羞恥心が湧き上がってしまう。
「うむ、かまわないぞ。しかし良いのか? これは結構値が張る品物だぞ」
「……え? 値が張るって、この鎧が? ……いくらくらい!?」
快く引き受けてくれようとするクロードだが、なんだが聞き捨てならないことを言い。思わず値段を聞いてしまうぬか娘。
「異世界とこっちの相場が確定しとらんから確かなことは言えないが、その一式ひとつで並の領主の城くらいなら買えるはずだ」
「誰か、計算」
ぬか娘の目配せに、アニオタが携帯をこすりまくる。
「城、建築費用 西洋……。え~~~と、大体……400~1500億円くらいと出ているござるな」
「「な・ん・だ・と・!!」」
その回答に異世界組の二人以外、全員の声がハモった。
「こ、こ、こ、これが……こんな金属ビキニが1500億!??」
「並の領主、だ。700億くらいだと俺は思うぞ?」
「そ、そ、そ、それでもエグいよ!! え~~~~なにそれ!?? なんでそんな高価なもんが送られてきたの!? これと何交換したっけ??」
「だから、キミの漬物だよ」
と、ヨウツベ。
「あああ~~~そうだった、そうだった。えええ!?? なんでそんな物がこんな貴重品と釣り合っちゃったの~~おかしくない!??」
「食文化とはそれほどまでに価値のあるものと言うことだ。ぬか娘よ、お前が帝国に授けてくれた知恵は城一棟に匹敵するものだと魔神様が判断されたのだろうよ。うろたえることはない、それはお前が手にするべき正当な品だ」
「ア……アルテマちゃん……」
自分の趣味がまさかこんな高い評価を受けるなんて……ぬか娘は感動で目に涙をためた。小学校からこの歳になるまで、小さな賞状くらいしかもらったことのない凡女《ぼんな》にとってそれは天にも昇るように嬉しい言葉だった。
「ん、ん、ん、ん、んでも、これ呪いを解いちゃったらどうなるの……ま、まさか消えてなくなるとか!??」
「いや、どうなるのだクロード?」
アルテマも聖魔法についてはそこまで詳しくない。
まさか消えることはないと思うが……。
「呪いは効果の副産物のようなものだ。解呪をすればそれはただの鎧に変わる」
「ね……値段的には……?」
「そうだな。剣、盾も合わせて5000円くらいじゃないだろうか? 中古だからな」
「ないない(ヾノ・∀・`)ナイナイ。それはない。解呪やめます。私、このままで生きていきます」
ガチャガチャチーンと金の鳴る音を頭から響かせて、ぬか娘は今後の人生を痴女として生きるのを決心したのだった。
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