暗黒騎士様の町おこし ~魔族娘の異世界交易~

盛り塩

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第114話 謎の珍走団

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 ――――バシュウンンンンンンッ!!!!
 ラグエルの光が軽トラに触れた瞬間、その車体が綺麗さっぱり消えてなくなった。

「うそぉーーーーーーーーっ!??」
「お!? おぉぉっ!??」

 おまけに着ている服もすべて消されてしまったぬか娘とアニオタは、素っ裸のまま空中に投げ出され、そのまま田んぼの中にダイブしてしまう。

「ぶへぇーーーーーーーーっ!???」
「おがもがもがががががががががっ!????」

 青々しい稲と泥のクッションでなんとか怪我なく着地できたが、積んでいた種芋は道の真ん中に散乱してしまっていた。
 そこに、

「いまだ、行け!! お前たち!!」
「ヒョーーーーーーーーーーイっ!!!!」

 聞き覚えのある声が聞こえると、茂みの中からクロードが金髪をなびかせさっそうと現れる。さらにそれに合わせて周囲から十数人の偽島組作業員たちが奇声をあげて出現した。

「あ、こ、コラーーーーッ!! 盗るな!! 盗るなあんたら~~~~っ!!!!」

 わかりやすく盗人のほっかむりを巻いた作業員たちは、ちらばった種芋に群がると次々と拾い上げ風呂敷に詰めていく。
 あっという間に全てを回収し終えると、

「ふはははははっ!! 残念だったなアルテマのしもべたちよ、お前たちの大切な荷は我ら『暁の愚連隊』がいただいた!! これに懲りたら帝国への援助など、小賢しい真似は考えぬことだな。ではさらばだ!!」

 作業員と同じくほっかむりを巻いたクロード丸出しのクロードは『総長』とデコレーションされた背中をキラキラ光らせ、どうやって隠していたか、草むらの中からヤンキー仕様全開のトゲトゲバイクを発進させるとウイリーしながら去っていった。
 作業員、もとい愚連隊員たちもそれを追って同じようなバイクで退散していく。

 あとに残ったのは、アホ丸出しの竹やりマフラーから吐き出された爆音の残響と、風呂敷袋からこぼれ落ち、道を転がるわずかな種芋だけだった。




「なぁ~~にぃ~~暴走族に襲われたじゃと~~~~~~~~っ!!??」
「ゔん……ゔぃぃ……いや、暴走族っていうか……うぅぅ……暴走族のコスプレしたクロードたちになんだけどね……ぐす……ぐす」

 鉄の結束荘の職員室。そこに元一の驚いた声が響きわたる。
 素っ裸にゴザを巻き付けただけという、みすぼらしい格好で帰ってきたぬか娘とアニオタ。
 一体どうしたことだと事情を聞いたら、カクカクシカジカ何たることだ。

「ほ、ほ、本人たちは『暁の愚連隊』って名乗って……いちおう正体隠してるつもりだったけど……全然隠れてなかったんだな、む、む、むしろ自己主張がは、は、はげはげ、はっくしょんっ!!」
「ああ、間違いない。それはクロードあのバカだ。おのれクロード……正面対決で敵わぬとみるや盗賊に扮し補給線を襲ってくるとは……騎士にあるまじき卑劣な手段を使いおって!! 見下げ果てた男だ!!」

 一度ならず二度までも貴重な物資を奪われてしまった。
 なにより非戦闘員である二人を襲うとは卑怯この上ない。
 アルテマはおやつの栗まんじゅうを握りしめながら憤慨した。

「うぅぅぅぅ……アルテマぢゃ~~んアルテマぢゃ~ん……帰り道……すっごい見られた、指差された、写真撮られた……私もうだめ……生きていけない、お願い……仇とって~~~~お~~いおいおいおい……」

 モジョがかけてくれたシーツに包まり、すすり泣くぬか娘。
 面白い格好をして歩いている男女がいるぞ、と近所の子供にからかわれ、色々と屈辱的なちょっかいをかけられながら帰ってきたようである。

「あのなぁ、ほんなんやったら電話すればよかったやろうが……ヒック」
「あ、あの魔法で……全部消されたわよ……うぅぅ……私の携帯~~」
「中古で良ければ、僕がいっぱい持ってるからあげるよ。アニオタもとりあえずそれで急場をしのいでくれ。車は……」

 まいったなと頭をかきつつヨウツベが元一を見る。

「車はまた手配しておく、しかしまた同じようなことをされてはかなわんな……なにか対抗策を考えんと、このままじゃいつまでもジルさんを待たせてしまうことになるからのぅ……」

 一度送っだだけのあの量では、いくら育てたところで収穫量は知れている。
 今冬の飢えをしのぐには、まだまだ送ってやなねばならない。
 それも大至急で、だ。
 なのにここにきてうっとおしい邪魔が……。
 難しい顔をして対策に悩む元一。
 そこにモジョがボソリと意見を言ってくる。

「……やつの魔法は加工物だけを消して自然物には効果がない。……そうだなアルテマ?」
「うん? ま……まあ、いかにもそうだが?」
「…………ならば車体に網でもかけて、葉付きの枝を無数に刺してみたらたらどうだ……? ……そうやって葉っぱで車体を覆えばあの魔法も防げるだろう?」
「おお、そうか。そうじゃな、名案じゃな」

 いいぞと手を叩く元一だが、

「……いや、その作戦は帝国兵もよく使っていたがやつにはもう一つ、風の魔法ザキエルがある。半端な防御など、すべて吹き飛ばされてしまい無意味なのだ」
「……むむむ、そ、そうか……なるほどな。弱点を補う魔法を持っているってことか……意外と賢いやつだな」
「個人戦はともかく集団や馬車に対しての戦闘力は優秀なやつだったよ。あいつ一人に我が帝国軍はどれだけの馬具と兵装を無駄にしたかわからん」
「……そうか……となるとほかの手段は……」

 強力ボンドかなんかで葉っぱを貼り付けたらどうか? 
 そんなアイデアも出たが、そこまで手を加えてしまうと加工物認定されてしまい消されてしまうそうだ。
 粘り気のある天然樹液なんかも同様。
 元一や六段に一緒に乗ってもらい護衛してもらうとの作戦も出たが、バカをボコすだけならともかく、放たれたラグエルの魔法を撃ち落とす術がないと、これも解決策としては不十分だった。

 う~~~~~~~~ん……。
 頭を悩ませる一同。
 そんなときに――――どたどたどた!!

「お、おい!! 外のボートが破壊されてるぞ!!」
「「なにぃっ!??」」

 六段が血相を変えながら、職員室に入ってきた。
 その言葉におどろく一同。

「なんじゃそれは!? いったいどういうことじゃっ!!」
「わ。わからん!! と、とにかくソコにこんなものが刺さっていた!!」

 彼の手には一本の矢文が握られていた。
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