109 / 274
第108話 マジカル☆ミコブラック
しおりを挟む
ちゃらら、ちゃらら~~ちゃらららっちゃっちゃ~~♪
ちゃらら、ちゃらら~~ちゃらららっちゃっちゃ~~♪
ちゃちゃらちゃ~~らっらちゃ~~らっら、ちゃららっちゃららちゃんっ♪
誰だ 誰だ 誰だ
闇のかなたに踊る影
赤い袴の ミコブラ~~ック
命をかけて 飛び出せば
暗黒魔法 火の玉だ
飛べ 飛べ 飛べ ミコブラ~~ック
行け 行け 行け ミコブラ~~ック
世界は二つ 世界は二つ
おお マジカル~~☆ ミコブラ~~~~クッ!!
主演 謎の少女アルテマ
主題歌
作詞・作曲 斎藤 順
歌 萩野 真琴
監督・撮影 野木 真司
CG制作 木下 佑美
制作『マジカル☆ミコブラック制作委員会』
近日公開予定。
動画を再生してみると、どこかで聞いたことのある粗末な替え歌とともに特撮戦隊ばりのアクションシーン盛りだくさんのOPが流れる。
マジカル☆ミコブラックと名乗る巫女姿の魔法少女が、悪の怪人作業員たちを暗黒魔法を駆使してバッタバッタと倒していく構成で、舞台はこの付近の河川敷になっているようだ。
「な、な、な……なんですか……これは……?」
ヒクヒクと頬をひくつかせ、ワンワナと肩を震わせる偽島。
聞かれたヨウツベはしれっと半笑いで、
「見ての通り我々『マジカル☆ミコブラック制作委員会』が自費制作した特撮動画ですよ。ご覧の動画サイト他、さまざまなコンテンツで同時配信していくつもりですからお暇があればぜひお楽しみ下さい。あ、ちなみに第一話は『襲撃☆不法工事の怪人作業人』となっておりますので」
言いながら偽島たちを撮り続けた。
サブカメとしてぬか娘もスマホを回している。
「ふ、ふざけないで下さいっ!! なにがマジカル☆ミコブラックですか!! こんなもの流して、いったいどういう……」
バカにするなと怒る偽島だが、OP映像をよくよく見ると魔法で吹き飛ばされているのは前回やられた自分たち。
いちおう顔に黒塗り仮面の加工がされているが、それ以外はまんま自分たちの格好だったのですぐにわかった。
使われている魔法や炎もすべて本当に使われた異世界魔法だったが、この映像の中では特殊効果CGとして説明されている。
つまり……これは、
「き、き、き、汚いまねを……」
言いたいことが理解できて、偽島は怒りと悔しさで歯をギリギリと鳴らす。
「この動画は今日の朝方にアップしました。なのでこれ以降、あなたがいくらアルテマさんの魔法を、姿を、異世界人の証拠だとばら撒いたところで、すべては僕のチャンネルの宣伝にしかなりません。それでも撒き散らしたいのならご自由にどうぞ。良い収益にさせてもらいますので」
見るとこの予告動画だけですでに再生回数が万を超えている。
コメント欄には『だれこの子役、可愛くね?』『特殊効果すげえ』『素人でここまで凝った演出するのな狂気』など、なかなかに評判で、当然のことながら誰一人これが本当に起こった事件で、魔法も本物だと夢にも思っていない。
そしてこれからも思うことはないだろう。
これで偽島の持つ証拠映像の価値はゼロになった。
対策を打った。とはこのことだったのだ。
おかげでアルテマたちは夜中まで撮影につきあわされ、最後まで編集していヨウツベはけっきょく一睡もしていない。
「……お……おのれ、おのれ、おのれ……」
濡れた髪の毛からシュウシュと音をたてて顔を赤くする偽島。
ああすればこう、こうすればああ。
ここの連中は何かをするたびすぐさま対抗策を立ち上げて邪魔してくる。
うっとおしいことこの上ない。
「……と、言うことだ。残念だったな小便タレ小僧、くっくっく」
不敵に笑い、憂いることなくアモンの炎を手に宿すアルテマ。
もう怖いものは何もないぞ? と、その顔は余裕に満ちている。
「さっきまでの勝ち誇った顔はどこに行ったクソメガネ?」
六段もその拳に魔法の加護を宿して凄んで見せた。
「……ぐ」
対抗手段を封じられ、脂汗を滲ませ後ずさる偽島。
川に飛び込んでいた作業員たちもそれぞれ上がってきているが、二人の迫力に押され、すでに戦意はないようだ。
みなヤクザまがいのゴロツキや半グレ上がりの連中ばかりだったが、人間同士の喧嘩とはわけが違う。
とくにアルテマからは現代日本人にはない強烈なプレッシャーを感じ、その可愛らしい外見を突き抜けて、恐ろしさすら感じていた。
――――そんなところに、
「……いくら強がっていても、所詮は本物の戦を知らぬ現代日本人よ。俺ら異世界人の放つ殺気の前には子供同然か……」
そうため息を吐き、車から下りてきたのはもう一人の異世界人――クロード。
追い詰められた偽島は、助かったとばかりに彼の元へと逃げ走る。
「すみません九郎さん、計画は失敗に終わりました……。まさかやつらこんな手段を使ってくるとは思いもよりませんでしたので……。申し訳ないですが、部下が避難するまで奴らを引き付けておいてくれませんか……?」
「クロード、だ。……いいだろう。……そもそも俺は貴様の計略などあてにはしていない。俺はただあの女を……アルテマの首を持ち帰りたいだけよ」
そして両手に灯すラグエルの光。
ここに、アルテマVSクロード。第二戦の膜が切って落とされようとしていた。
ちゃらら、ちゃらら~~ちゃらららっちゃっちゃ~~♪
ちゃちゃらちゃ~~らっらちゃ~~らっら、ちゃららっちゃららちゃんっ♪
誰だ 誰だ 誰だ
闇のかなたに踊る影
赤い袴の ミコブラ~~ック
命をかけて 飛び出せば
暗黒魔法 火の玉だ
飛べ 飛べ 飛べ ミコブラ~~ック
行け 行け 行け ミコブラ~~ック
世界は二つ 世界は二つ
おお マジカル~~☆ ミコブラ~~~~クッ!!
主演 謎の少女アルテマ
主題歌
作詞・作曲 斎藤 順
歌 萩野 真琴
監督・撮影 野木 真司
CG制作 木下 佑美
制作『マジカル☆ミコブラック制作委員会』
近日公開予定。
動画を再生してみると、どこかで聞いたことのある粗末な替え歌とともに特撮戦隊ばりのアクションシーン盛りだくさんのOPが流れる。
マジカル☆ミコブラックと名乗る巫女姿の魔法少女が、悪の怪人作業員たちを暗黒魔法を駆使してバッタバッタと倒していく構成で、舞台はこの付近の河川敷になっているようだ。
「な、な、な……なんですか……これは……?」
ヒクヒクと頬をひくつかせ、ワンワナと肩を震わせる偽島。
聞かれたヨウツベはしれっと半笑いで、
「見ての通り我々『マジカル☆ミコブラック制作委員会』が自費制作した特撮動画ですよ。ご覧の動画サイト他、さまざまなコンテンツで同時配信していくつもりですからお暇があればぜひお楽しみ下さい。あ、ちなみに第一話は『襲撃☆不法工事の怪人作業人』となっておりますので」
言いながら偽島たちを撮り続けた。
サブカメとしてぬか娘もスマホを回している。
「ふ、ふざけないで下さいっ!! なにがマジカル☆ミコブラックですか!! こんなもの流して、いったいどういう……」
バカにするなと怒る偽島だが、OP映像をよくよく見ると魔法で吹き飛ばされているのは前回やられた自分たち。
いちおう顔に黒塗り仮面の加工がされているが、それ以外はまんま自分たちの格好だったのですぐにわかった。
使われている魔法や炎もすべて本当に使われた異世界魔法だったが、この映像の中では特殊効果CGとして説明されている。
つまり……これは、
「き、き、き、汚いまねを……」
言いたいことが理解できて、偽島は怒りと悔しさで歯をギリギリと鳴らす。
「この動画は今日の朝方にアップしました。なのでこれ以降、あなたがいくらアルテマさんの魔法を、姿を、異世界人の証拠だとばら撒いたところで、すべては僕のチャンネルの宣伝にしかなりません。それでも撒き散らしたいのならご自由にどうぞ。良い収益にさせてもらいますので」
見るとこの予告動画だけですでに再生回数が万を超えている。
コメント欄には『だれこの子役、可愛くね?』『特殊効果すげえ』『素人でここまで凝った演出するのな狂気』など、なかなかに評判で、当然のことながら誰一人これが本当に起こった事件で、魔法も本物だと夢にも思っていない。
そしてこれからも思うことはないだろう。
これで偽島の持つ証拠映像の価値はゼロになった。
対策を打った。とはこのことだったのだ。
おかげでアルテマたちは夜中まで撮影につきあわされ、最後まで編集していヨウツベはけっきょく一睡もしていない。
「……お……おのれ、おのれ、おのれ……」
濡れた髪の毛からシュウシュと音をたてて顔を赤くする偽島。
ああすればこう、こうすればああ。
ここの連中は何かをするたびすぐさま対抗策を立ち上げて邪魔してくる。
うっとおしいことこの上ない。
「……と、言うことだ。残念だったな小便タレ小僧、くっくっく」
不敵に笑い、憂いることなくアモンの炎を手に宿すアルテマ。
もう怖いものは何もないぞ? と、その顔は余裕に満ちている。
「さっきまでの勝ち誇った顔はどこに行ったクソメガネ?」
六段もその拳に魔法の加護を宿して凄んで見せた。
「……ぐ」
対抗手段を封じられ、脂汗を滲ませ後ずさる偽島。
川に飛び込んでいた作業員たちもそれぞれ上がってきているが、二人の迫力に押され、すでに戦意はないようだ。
みなヤクザまがいのゴロツキや半グレ上がりの連中ばかりだったが、人間同士の喧嘩とはわけが違う。
とくにアルテマからは現代日本人にはない強烈なプレッシャーを感じ、その可愛らしい外見を突き抜けて、恐ろしさすら感じていた。
――――そんなところに、
「……いくら強がっていても、所詮は本物の戦を知らぬ現代日本人よ。俺ら異世界人の放つ殺気の前には子供同然か……」
そうため息を吐き、車から下りてきたのはもう一人の異世界人――クロード。
追い詰められた偽島は、助かったとばかりに彼の元へと逃げ走る。
「すみません九郎さん、計画は失敗に終わりました……。まさかやつらこんな手段を使ってくるとは思いもよりませんでしたので……。申し訳ないですが、部下が避難するまで奴らを引き付けておいてくれませんか……?」
「クロード、だ。……いいだろう。……そもそも俺は貴様の計略などあてにはしていない。俺はただあの女を……アルテマの首を持ち帰りたいだけよ」
そして両手に灯すラグエルの光。
ここに、アルテマVSクロード。第二戦の膜が切って落とされようとしていた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢の兄になったのですが、どうやら妹に執着されてます。そして何故か攻略対象からも溺愛されてます。
七彩 陽
ファンタジー
異世界転生って主人公や何かしらイケメン体質でチートな感じじゃないの!?ゲームの中では全く名前すら聞いたことのないモブ。悪役令嬢の義兄クライヴだった。
しかしここは魔法もあるファンタジー世界!ダンジョンもあるんだって! ドキドキワクワクして、属性診断もしてもらったのにまさかの魔法使いこなせない!?
この世界を楽しみつつ、義妹が悪役にならないように後方支援すると決めたクライヴは、とにかく義妹を歪んだ性格にしないように寵愛することにした。
『乙女ゲームなんて関係ない、ハッピーエンドを目指すんだ!』と、はりきるのだが……。
実はヒロインも転生者!
クライヴはヒロインから攻略対象認定され、そのことに全く気付かず義妹は悪役令嬢まっしぐら!?
クライヴとヒロインによって、乙女ゲームは裏設定へと突入! 世界の破滅を防げるのか!?
そして何故か攻略対象(男)からも溺愛されて逃げられない!? 男なのにヒロインに!
異世界転生、痛快ラブコメディ。
どうぞよろしくお願いします!
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
転生貴族の魔石魔法~魔法のスキルが無いので家を追い出されました
月城 夕実
ファンタジー
僕はトワ・ウィンザー15歳の異世界転生者だ。貴族に生まれたけど、魔力無しの為家を出ることになった。家を出た僕は呪いを解呪出来ないか探すことにした。解呪出来れば魔法が使えるようになるからだ。町でウェンディを助け、共に行動をしていく。ひょんなことから魔石を手に入れて魔法が使えるようになったのだが・・。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる