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第107話 お好きなように
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――――ぎゃきゃきゃきゃきゃっ!!!!
黒炎に包まれた川辺の広場に、猛スピートで突っ込んでくるワゴン車。
タイヤを滑らせ止まるなり、中から転がり出てくる偽島誠。
「な、な、な、なんですかこれはーーーーっ!!!!」
燃える重機やトラックを見て金切り声を上げる。
そして対岸に立っているアルテマに気がつくと、拡声器を取り出し、
「ま、またあなたですか、この子供巫女め!! 昨日あれだけ忠告したのにまだ性懲りもなく!! いいのですか? あなたの正体、全世界にバラしますよ!!」
額に青あざを何本も浮かべて、携帯を振りかざした。
その中にはアルテマが異世界人だと証明するデータがいくつも入っていて、クリック一つでネット上にばら撒かれるように設定してある。
これを脅迫材料に、二度と工事の邪魔をしないよう忠告したのだが、あの子供巫女は事態を理解しているのか、いないのか。まったく恐れるようすもなく大事な部下たちを全滅させてしまっている。
「いますぐ火を消してそこからどきなさい!! さもなくば――――」
言いながら偽島は、いまのこの光景も画面に収めつつ、アルテマをアップに動画を回し始めた。
「この場面もライブ配信で流しますよ!!」
動画投稿サイトを開けて忠告する。
しかしアルテマは何も恐れず、ただ眠そうなあくびを浮かべるだけ。
「な、な、な、な、なんですか、その余裕の表情は!? ……ははぁん、さてはあなた、私がやろうとしている事をわかっていませんね? まぁ……それは異世界から来た田舎者。我々世界の高度文明を理解できないのは致し方ないでしょう。よろしい、あなたでは話になりません。保護者を呼んでもらいましょう。誰ですか? 昨日のおかしな弓を持った爺さんですか? 誰でもいいです、さあ、出てきなさい。そして忠告を無視した報いを」
「――――アモン」
どごんっ!!!!
「ぐわっしゃらっしゃちゃちゃちゃちゃ!???」
がちゃがちゃわめく偽島の足元から、有無を言わさずアモンの炎が噴出した。
下から股間を焼かれた偽島は奇っ怪な叫び声を上げながらプレハブ小屋の流しへと突撃し、下半身に水をかけまくる。
「ぺらぺらぺらぺらと相変わらず耳障りな男だなお前は……」
――――しゅうぅぅぅぅぅぅ……。
余韻の湯気を立ちのぼらせる偽島に、イラついた目を向けるアルテマ。
ただでさえムカつくインテリ気取りの高い声が、寝不足な状態だといつもの五倍はストレスに感じる。
とくに撃つ気はなかったのだが、反射的にやってしまった。
「……お、おのれおのれ!! いいでしょう、わかりました!! あなたがそういう態度に出るのなら私ももう容赦はしませんよ!! やりますよ? いいんですか、本当にやりますからね!??」
「ああ、勝手にすればいいだろう」
怒り心頭で凄《すご》む偽島に、そう返したのは六段だった。
「なに!? ……貴様、昨日血祭りにしてやったジジイですね? 勝手にすればいいとはどういうことです!? まさかあなたまで状況を理解していないということじゃないでしょうね?」
「だれが血祭りじゃい!! あんなものはただのかすり傷だ、一晩寝たら跡すら残っとらんわ!!」
まあそれは大げさだったが。
「ともかく、クソメガネよ!! お前の卑怯な企みなんぞ、もはやとっくに対策済みだと言っとるんだ!! ワシらはここから動かん!! 工事も認めるつもりはない!! わかったらお前こそ出ていけぃっ!!!!」
「対策? は、ははは、馬鹿なことを言ってはいけません。そんなもの用意できるわけがありませんよ」
データを持っているのはこっちだ。
仮にこのスマホを奪われるか壊されるかしたところで、複製データはとっくに事務所のPCに映してある。個人情報がうんぬんカンヌン言うつもりだとしても、そんなもの会社の弁護士に任せれば、はした金ですぐに解決できるだろう。
なにを対策しようが動画を流すことは止められやしない。
どんな問題があろうとも、流してしまえば大きなダメージを負うのは向こうのほうなのだ。
「どうせ悔し紛れのハッタリでしょう? もし、やれたとしても、せいぜいが民事に訴え出ることくらいでしょうが、生憎うちの会社はその類の――――」
「いえいえ、裁判なんて。そんな大げさなことしませんよ?」
その声は少し上の方から聞こえた。
見ると、アルテマの背後の古ぼけた校舎。
昨日の魔法で破損した数々の穴。
それを粗末な板やダンボールで塞いだ不格好なその建物の二階から、かすかに見覚えのある顔が覗いていた。
その男――ヨウツベはわりと高級そうなカメラでこちらを撮影しながら、横の窓に向かって何か合図を送る。
すると、その窓との間に丸めてあった布の束がハラリと解け、
『愛と正義の巫女戦士・マジカル☆ミコブラック』
とペンキで雑に書かれた垂れ幕が、でろん、と広がった。
「な、な、な!?? マジカル……ミコブラック?? なんのつもりですか??」
それを唖然と見つめる偽島に、垂れ幕の端を支えているぬか娘が怒りの声で、
「マジカル『☆』ミコブラック!! 星を忘れないで!! ここ重要なんだから、私昨日寝ないで考えたんだから!!」
怒鳴ってくる。
だから何なんだと困惑している偽島にヨウツベが言った。
「詳しいことはいま送ったURLを御覧くださ~~い」
「URL……だとう?」
スマホを見ると、偽島組公式HP宛にたしかにそれが送られてきていた。
開けると、某有名動画サイトに繋がってすぐに動画のサムネイルが表示される。
そこには垂れ幕と同じタイトルが七色のコロコロしたフォントで光っており、画面の中央には、妙にダサい決めポーズで、赤黒く燃える竹刀を掲げた子供巫女が映っていた。
黒炎に包まれた川辺の広場に、猛スピートで突っ込んでくるワゴン車。
タイヤを滑らせ止まるなり、中から転がり出てくる偽島誠。
「な、な、な、なんですかこれはーーーーっ!!!!」
燃える重機やトラックを見て金切り声を上げる。
そして対岸に立っているアルテマに気がつくと、拡声器を取り出し、
「ま、またあなたですか、この子供巫女め!! 昨日あれだけ忠告したのにまだ性懲りもなく!! いいのですか? あなたの正体、全世界にバラしますよ!!」
額に青あざを何本も浮かべて、携帯を振りかざした。
その中にはアルテマが異世界人だと証明するデータがいくつも入っていて、クリック一つでネット上にばら撒かれるように設定してある。
これを脅迫材料に、二度と工事の邪魔をしないよう忠告したのだが、あの子供巫女は事態を理解しているのか、いないのか。まったく恐れるようすもなく大事な部下たちを全滅させてしまっている。
「いますぐ火を消してそこからどきなさい!! さもなくば――――」
言いながら偽島は、いまのこの光景も画面に収めつつ、アルテマをアップに動画を回し始めた。
「この場面もライブ配信で流しますよ!!」
動画投稿サイトを開けて忠告する。
しかしアルテマは何も恐れず、ただ眠そうなあくびを浮かべるだけ。
「な、な、な、な、なんですか、その余裕の表情は!? ……ははぁん、さてはあなた、私がやろうとしている事をわかっていませんね? まぁ……それは異世界から来た田舎者。我々世界の高度文明を理解できないのは致し方ないでしょう。よろしい、あなたでは話になりません。保護者を呼んでもらいましょう。誰ですか? 昨日のおかしな弓を持った爺さんですか? 誰でもいいです、さあ、出てきなさい。そして忠告を無視した報いを」
「――――アモン」
どごんっ!!!!
「ぐわっしゃらっしゃちゃちゃちゃちゃ!???」
がちゃがちゃわめく偽島の足元から、有無を言わさずアモンの炎が噴出した。
下から股間を焼かれた偽島は奇っ怪な叫び声を上げながらプレハブ小屋の流しへと突撃し、下半身に水をかけまくる。
「ぺらぺらぺらぺらと相変わらず耳障りな男だなお前は……」
――――しゅうぅぅぅぅぅぅ……。
余韻の湯気を立ちのぼらせる偽島に、イラついた目を向けるアルテマ。
ただでさえムカつくインテリ気取りの高い声が、寝不足な状態だといつもの五倍はストレスに感じる。
とくに撃つ気はなかったのだが、反射的にやってしまった。
「……お、おのれおのれ!! いいでしょう、わかりました!! あなたがそういう態度に出るのなら私ももう容赦はしませんよ!! やりますよ? いいんですか、本当にやりますからね!??」
「ああ、勝手にすればいいだろう」
怒り心頭で凄《すご》む偽島に、そう返したのは六段だった。
「なに!? ……貴様、昨日血祭りにしてやったジジイですね? 勝手にすればいいとはどういうことです!? まさかあなたまで状況を理解していないということじゃないでしょうね?」
「だれが血祭りじゃい!! あんなものはただのかすり傷だ、一晩寝たら跡すら残っとらんわ!!」
まあそれは大げさだったが。
「ともかく、クソメガネよ!! お前の卑怯な企みなんぞ、もはやとっくに対策済みだと言っとるんだ!! ワシらはここから動かん!! 工事も認めるつもりはない!! わかったらお前こそ出ていけぃっ!!!!」
「対策? は、ははは、馬鹿なことを言ってはいけません。そんなもの用意できるわけがありませんよ」
データを持っているのはこっちだ。
仮にこのスマホを奪われるか壊されるかしたところで、複製データはとっくに事務所のPCに映してある。個人情報がうんぬんカンヌン言うつもりだとしても、そんなもの会社の弁護士に任せれば、はした金ですぐに解決できるだろう。
なにを対策しようが動画を流すことは止められやしない。
どんな問題があろうとも、流してしまえば大きなダメージを負うのは向こうのほうなのだ。
「どうせ悔し紛れのハッタリでしょう? もし、やれたとしても、せいぜいが民事に訴え出ることくらいでしょうが、生憎うちの会社はその類の――――」
「いえいえ、裁判なんて。そんな大げさなことしませんよ?」
その声は少し上の方から聞こえた。
見ると、アルテマの背後の古ぼけた校舎。
昨日の魔法で破損した数々の穴。
それを粗末な板やダンボールで塞いだ不格好なその建物の二階から、かすかに見覚えのある顔が覗いていた。
その男――ヨウツベはわりと高級そうなカメラでこちらを撮影しながら、横の窓に向かって何か合図を送る。
すると、その窓との間に丸めてあった布の束がハラリと解け、
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とペンキで雑に書かれた垂れ幕が、でろん、と広がった。
「な、な、な!?? マジカル……ミコブラック?? なんのつもりですか??」
それを唖然と見つめる偽島に、垂れ幕の端を支えているぬか娘が怒りの声で、
「マジカル『☆』ミコブラック!! 星を忘れないで!! ここ重要なんだから、私昨日寝ないで考えたんだから!!」
怒鳴ってくる。
だから何なんだと困惑している偽島にヨウツベが言った。
「詳しいことはいま送ったURLを御覧くださ~~い」
「URL……だとう?」
スマホを見ると、偽島組公式HP宛にたしかにそれが送られてきていた。
開けると、某有名動画サイトに繋がってすぐに動画のサムネイルが表示される。
そこには垂れ幕と同じタイトルが七色のコロコロしたフォントで光っており、画面の中央には、妙にダサい決めポーズで、赤黒く燃える竹刀を掲げた子供巫女が映っていた。
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