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第103話 川沿いの攻防⑤
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崩れかかった鉄橋に、水を滴らせ仁王立ちする怒りの元一。
手には堕天の弓が握られ、魔素で形作られた矢が装填されている。
足元には引き上げられた六段が四つん這いになってムセこんでいるが、出血とは裏腹に大きな怪我は無いように見える。
元一は黒々しい憤怒の炎を燃え上がらせると、
「……貴様……よくもワシのアルテマにちょっかいかけてくれおったな……。聖騎士かなんかは知らんが、落とし前をつける覚悟はできとるんじゃろうなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「はっ!? ちょ、ちょっかいだと? 待て、私は別におかしな意味で――――」
「丸裸にしようとしとるじゃろうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
――――どしゅしゅしゅしゅっ!!!!
なにやら勘違いしている元一が、その怒りのままに堕天の矢を連射した!!
「――――ちょと待っ!??」
黒い軌跡を引いて飛ぶその矢は、空中で弧を描き、交差し、それぞれが意思を持ってクロードへと襲いかかる!!
「くそっ!!」
咄嗟に、アルテマ用にと準備していたラグエルを迎撃に使うが、
――――どしゅんっ!!
魔法の矢はそれを貫き消滅させる!!
「なっ!??」
アルテマはその間にザキエルの竜巻に向かってアモンを放つ。
熱が風を拡散し、霧散させた!!
――――ザザザザシュッ!!!!
矢のほとんどはクロードの体をかすめ、皮を切るだけで突き抜けていく。
最後の一本は、
――――バキャンッ!!
クロードの持つ聖剣『熊手』(?)の柄に突き刺さり、その加護を粉砕した。
「なっ!? お、俺の聖剣が!?」
「……アルテマの前じゃ……殺しまではせんが、やられたぶんは返させてもらったぞ」
矢を当てようと思えばいくらでも出来た。
しかし異世界人とはいえ、人間(?)相手にそんなことをすれば大事《おおごと》になりかねない。
ギリギリのところで冷静になり、六段がやられた傷のぶんだけお返ししたのだ。
クロードは元一が持つ弓の正体にようやく気がつく。
「――――っ!?? そ、それは、堕天の弓!? 忌々しい帝国が誇る一級武具の一つではないか!? そんなものなぜ貴様のような現世の爺が持っているんだ!??」
まさかのマジックウエポンに驚き、注意をそちらに向けてしまうクロード。
そこに、
「我が国を救っていただいた対価だよ!!」
鬼の目をしたアルテマが魔剣『低学年用竹刀』を下段に構え、懐に滑り込んできた!!
「な、しまっ!!」
「心配するな、手加減はしてやる」
避ける期を逃してしまったクロードに対し、慈悲の笑みを見せてやるアルテマ。
ここが異世界での戦場なら、無慈悲に切って捨ててやるのだが、現世のここではそうはいかない。大使の任を賜《たまわ》ったアルテマにとって最重要任務は現世界の人たちに迷惑をかけないこと。ルールーを破らないこと。ヘタな騒ぎを起こさないことなのだ。
なので、この男の処分は半殺しの上、拘束。監禁しつつ尋問ぐらいが妥当だろう。
そのつもりでアルテマは『レリクス』の魔素を調節し、加護を最大限ゆるめて、
「くらえいっ、必殺チョメチョメストラーッシュッ!!!!」
最近アニメで覚えた勇者の剣技を模倣しつつ、深く潜り込んだ懐から剣を突き上げてやったっ!!
「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!???」
ふざけた名前はともかく、威力はそれなりの一撃を受けて、のけぞり吹き飛ばされるクロード。
「終わりだ、聖騎士クロードよ。……貴様には聞きたいことが山ほどある」
チャッ。
「ぐ……っ!?」
倒れたクロードの顎下にすばやく剣先を潜り込ませ動きを制する。
そんなアルテマを憎々しく見上げ、
「ぐ……そ、それはこちらのセリフだ暗黒騎士アルテマよ。き、貴様こそ……この黄泉の世界で……よくも暗躍してくれたな。お、おかげで俺は貴様を追い……この奈落の底で地獄を見たのだ……15年も……」
「15……さっきからお前、いったい何を言って……?」
クロードの言葉、その数字の意味をいまいち理解できないでいるアルテマ。
そこに、プレハブの中から一人の青年が現れた。
「おっとぉ、巫女娘……いや、異世界の暗黒騎士アルテマさん……でしたか? そこまでにして頂きましょうか?」
出てきたのは不敵な笑みを浮かべた偽島誠だった。
手にはスマホを構えて、それをアルテマに向けていた。
「ぬ、貴様までいたのか。……なるほど。どうやら貴様たちはすでに協力体制にあるようだな?」
状況的にそう理解したアルテマは警戒を強め、竹刀の加護を強くし、左手にアモンの種火を灯らせる。
元一も無言で照準を偽島に変え『へたなことをすれば容赦はせんぞ』と睨みを効かせた。
しかし偽島はそんな二人に怖じけることなく歩みを進める。
そしてアルテマの側までくると、
「ツノが出てしまっていますよ? アルテマさん」
といやらしく笑い、カメラのシャッタを切った。
パシャッ!!
「んなっ!??」
慌てて頭を押さえるアルテマ。
いつの間にか、ハチマキが外れてツノがむき出しになっていたようだ。
「く……くくくくく……。なるほど……九郎さんから話は聞いていましたが。あなた、本当に異世界人なんですねぇ」
「クロード、だ」
「貴様、何を撮っておる!! アルテマから離れんか!!」
しまったと思いながら、元一が怒りの声をあげるが、
「良いんですかぁ、そんな態度をとって……。あなたのような年寄にはわからないかも知れませんが。私がここに一つ指を触れるだけで、いまの不思議な攻防の映像がたちまち世界に配信されることになります。……そうなったら、あなたたちはとっても困ってしまうんじゃないですかぁ~~? 特にあなたですよ、魔族の娘さん?」
偽島は見せびらかすように携帯を揺らし、勝ち誇ったように笑った。
手には堕天の弓が握られ、魔素で形作られた矢が装填されている。
足元には引き上げられた六段が四つん這いになってムセこんでいるが、出血とは裏腹に大きな怪我は無いように見える。
元一は黒々しい憤怒の炎を燃え上がらせると、
「……貴様……よくもワシのアルテマにちょっかいかけてくれおったな……。聖騎士かなんかは知らんが、落とし前をつける覚悟はできとるんじゃろうなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「はっ!? ちょ、ちょっかいだと? 待て、私は別におかしな意味で――――」
「丸裸にしようとしとるじゃろうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
――――どしゅしゅしゅしゅっ!!!!
なにやら勘違いしている元一が、その怒りのままに堕天の矢を連射した!!
「――――ちょと待っ!??」
黒い軌跡を引いて飛ぶその矢は、空中で弧を描き、交差し、それぞれが意思を持ってクロードへと襲いかかる!!
「くそっ!!」
咄嗟に、アルテマ用にと準備していたラグエルを迎撃に使うが、
――――どしゅんっ!!
魔法の矢はそれを貫き消滅させる!!
「なっ!??」
アルテマはその間にザキエルの竜巻に向かってアモンを放つ。
熱が風を拡散し、霧散させた!!
――――ザザザザシュッ!!!!
矢のほとんどはクロードの体をかすめ、皮を切るだけで突き抜けていく。
最後の一本は、
――――バキャンッ!!
クロードの持つ聖剣『熊手』(?)の柄に突き刺さり、その加護を粉砕した。
「なっ!? お、俺の聖剣が!?」
「……アルテマの前じゃ……殺しまではせんが、やられたぶんは返させてもらったぞ」
矢を当てようと思えばいくらでも出来た。
しかし異世界人とはいえ、人間(?)相手にそんなことをすれば大事《おおごと》になりかねない。
ギリギリのところで冷静になり、六段がやられた傷のぶんだけお返ししたのだ。
クロードは元一が持つ弓の正体にようやく気がつく。
「――――っ!?? そ、それは、堕天の弓!? 忌々しい帝国が誇る一級武具の一つではないか!? そんなものなぜ貴様のような現世の爺が持っているんだ!??」
まさかのマジックウエポンに驚き、注意をそちらに向けてしまうクロード。
そこに、
「我が国を救っていただいた対価だよ!!」
鬼の目をしたアルテマが魔剣『低学年用竹刀』を下段に構え、懐に滑り込んできた!!
「な、しまっ!!」
「心配するな、手加減はしてやる」
避ける期を逃してしまったクロードに対し、慈悲の笑みを見せてやるアルテマ。
ここが異世界での戦場なら、無慈悲に切って捨ててやるのだが、現世のここではそうはいかない。大使の任を賜《たまわ》ったアルテマにとって最重要任務は現世界の人たちに迷惑をかけないこと。ルールーを破らないこと。ヘタな騒ぎを起こさないことなのだ。
なので、この男の処分は半殺しの上、拘束。監禁しつつ尋問ぐらいが妥当だろう。
そのつもりでアルテマは『レリクス』の魔素を調節し、加護を最大限ゆるめて、
「くらえいっ、必殺チョメチョメストラーッシュッ!!!!」
最近アニメで覚えた勇者の剣技を模倣しつつ、深く潜り込んだ懐から剣を突き上げてやったっ!!
「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!???」
ふざけた名前はともかく、威力はそれなりの一撃を受けて、のけぞり吹き飛ばされるクロード。
「終わりだ、聖騎士クロードよ。……貴様には聞きたいことが山ほどある」
チャッ。
「ぐ……っ!?」
倒れたクロードの顎下にすばやく剣先を潜り込ませ動きを制する。
そんなアルテマを憎々しく見上げ、
「ぐ……そ、それはこちらのセリフだ暗黒騎士アルテマよ。き、貴様こそ……この黄泉の世界で……よくも暗躍してくれたな。お、おかげで俺は貴様を追い……この奈落の底で地獄を見たのだ……15年も……」
「15……さっきからお前、いったい何を言って……?」
クロードの言葉、その数字の意味をいまいち理解できないでいるアルテマ。
そこに、プレハブの中から一人の青年が現れた。
「おっとぉ、巫女娘……いや、異世界の暗黒騎士アルテマさん……でしたか? そこまでにして頂きましょうか?」
出てきたのは不敵な笑みを浮かべた偽島誠だった。
手にはスマホを構えて、それをアルテマに向けていた。
「ぬ、貴様までいたのか。……なるほど。どうやら貴様たちはすでに協力体制にあるようだな?」
状況的にそう理解したアルテマは警戒を強め、竹刀の加護を強くし、左手にアモンの種火を灯らせる。
元一も無言で照準を偽島に変え『へたなことをすれば容赦はせんぞ』と睨みを効かせた。
しかし偽島はそんな二人に怖じけることなく歩みを進める。
そしてアルテマの側までくると、
「ツノが出てしまっていますよ? アルテマさん」
といやらしく笑い、カメラのシャッタを切った。
パシャッ!!
「んなっ!??」
慌てて頭を押さえるアルテマ。
いつの間にか、ハチマキが外れてツノがむき出しになっていたようだ。
「く……くくくくく……。なるほど……九郎さんから話は聞いていましたが。あなた、本当に異世界人なんですねぇ」
「クロード、だ」
「貴様、何を撮っておる!! アルテマから離れんか!!」
しまったと思いながら、元一が怒りの声をあげるが、
「良いんですかぁ、そんな態度をとって……。あなたのような年寄にはわからないかも知れませんが。私がここに一つ指を触れるだけで、いまの不思議な攻防の映像がたちまち世界に配信されることになります。……そうなったら、あなたたちはとっても困ってしまうんじゃないですかぁ~~? 特にあなたですよ、魔族の娘さん?」
偽島は見せびらかすように携帯を揺らし、勝ち誇ったように笑った。
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