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第90話 カレーと悩みとゴーレムと
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「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!! 編集編集~~~~~!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!! 世界ランクぅ~~~~!!」
結界を解除し、すっかり元の姿に戻った鉄の結束荘。
モジョとヨウツベに取り憑いていた悪魔も、あっという間に除霊された。
二人は我に返り、一通りの説明を聞かされるとすぐに事態を飲み込んだ。
そしてそれぞれの愛用端末に飛びつくと、感謝の言葉もそこそこに、ヨウツベは動画編集、モジョはネット対戦シューティングに没頭する。
「こらこらお前ら。気持ちはわかるが、ついさっきまで重度な悪魔憑きやったんや、そないいきなり根を詰めたら体にさわるで?」
聴診器をモジョの背中に押し付けながらあきれる飲兵衛。
ネットが遮断されたのはほんの二、三日だったのだが、二人にとってはそれでも充分大問題だったらしく、それぞれが自分のノルマを取り戻そうと我を失い画面にかじりついている。
「……のう……こ、これ大丈夫かのう? また取り憑かれたりせんかアルテマよ」
「いや、これは負の感情ではないから問題ない。むしろいまは精気に満ち溢れておるから、たとえ上級悪魔であったとしても手は出せないだろうよ」
「そうかぁ~~。そういえばあのときのアニオタもルナちゃんへのスケベゴコロであいつを弾き返したんだもんね。やっぱり好きなことするのって大事なんだね」
「うむ、その通りだぬか娘。嫌なことをするのも大事だが、それと同じだけ好きなことをするのも大事なのだ。そうしてやらなければ、いつまた悪魔どもに隙きを見せてしまうかわからんからな。かくいう私も帝国にいた頃はよく師匠に――――って、おい!! 頬を擦り付けるな抱きしめるな!!」
「だってぇ~~。私の心の隙はアルテマちゃんしか埋められないんだも~~ん」
「す、す、す、助平心とは聞き捨てなりませぬぞ!! ぼ、ぼ、ぼ、僕はルナちゅわんのことをじゅじゅじゅ純粋にあ、あ、あ、あ、愛しているのでござる!!」
「……お前ほど『愛』と『純粋』の似合わん男も珍しいが……まあいい。問題ないならワシらは帰って休ませてもらうとするぞ? さすがにここしばらくの奮闘で疲れが出てきたわい」
首をコキコキ鳴らしつつ、六段が年寄り組を引き連れて帰ろうとする。
「アルテマ。お前は帰らんのか?」
その列に混ざる元一。心配げにアルテマを振り返るが、
「あ、ああ……私はもうしばらくここにいる。昼はもろもろの礼にカレーをご馳走してくれるというのでな」
「そうか……なら晩飯までには戻ってくるんじゃぞ」
「わかった」
そうして元一たちはそれぞれ家に戻り、休息を取ることにした。
そんな老人たちの背中を見送りながらアルテマは先程のジルの言葉を思い返す。
『こちらの世界へ帰ってくる手段は、もう見つかりましたか?』
もちろんそれは最初から考えていた。
しかし、あらためてそう聞かれたとき、自分は思わず言葉を詰まらせてしまった。
それは帰る手段がまだ見つかってない後ろめたさからではなく……。
「帰る……か」
アルテマは少し寂しそうにつぶやいた。
「な、な、な、な、なんですか……これは!!??」
ジルの精霊魔法によって修復された通信ケーブル。
砂利や小石をまとわりつかせて歪な形になってはいたが、しっかりと繋がっているそのケーブルを見上げて偽島は歯をギリギリと鳴らした。
なぜだかわからないが蹄沢集落の通信が回復したらしい、との部下の報告を受け、そんなはずはないと思いながらも切断箇所の確認にきたのだ。
「だ、誰ですか!? 私に断りもなく勝手に修理などした奴は!!」
「い、いや、知りませんぜ!? それに修理したっていっても……ようすがおかしすぎます。こりゃ俺らの仕事じゃないんじゃないですか?」
怒鳴られた現場監督が慌てて首を横に振るが、
「だったら誰がやったっていうんです!! ええい、ともかくもう一度切ってしまいなさい。今度はおいそれと直せないように両方の根元からバッサリとやってしまいなさい!!」
偽島の怒号に押されて、作業員が急いで電柱を登る。
工事用の特大チェーンカッターを使って切ろうとするが、
――――ぐ……ぐぐぐぐぐぐぐぐ……。
「!?? いや、これ!?? ????」
どんなに力を込めてもケーブルは切れるどころか刃をいっさい通さなかった。
「……なにをもたもたしているんですか?」
イラついた偽島が見上げてくる。
「いや……それがこれ……き、切れないんですよ????」
「そんなバカなことがあるはずないでしょう!? もっと力を込めてみなさい、あなたそれでもウチの組員ですか、しばき回しますよ!!」
「へ、へいっ!!!!」
有無を言わさぬ鋭い眼光で睨まれて、慌てて力を込める名もなき作業員。
「いや……それが課長。さっきも他のやつが試してみたんですけどね」
監督が何か言いたそうにしていると、
――――ぐ、ぐぐぐぐぐ……ざく。
ようやくほんの少し歯が食い込んだ。
その途端。
ぶちんっ!! しゅるんっ!!!!
バシバシバシバシバシンッ!!!!!!!!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
突如分離したケーブルが、まるで蛇のようにうねり、頭(?)を持ち上げ作業員に攻撃してきた。
体中をしばき回された作業員は、あわれ、そのまま足を滑らせ、
「え!? ……ちょ。ま、ま、待ちなさい!!?? ぐぎゃあっ!!」
その下にいた偽島を下敷きにして落下した。
「……まぁこうなるんですよ。いったいどうなってるんですかねこりゃ……」
目を回して気絶した偽島と、何事もなかったかのように元の形に戻っていくケーブル。
それらを交互に眺めて監督は、わけもわからず深い溜息をついた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!! 世界ランクぅ~~~~!!」
結界を解除し、すっかり元の姿に戻った鉄の結束荘。
モジョとヨウツベに取り憑いていた悪魔も、あっという間に除霊された。
二人は我に返り、一通りの説明を聞かされるとすぐに事態を飲み込んだ。
そしてそれぞれの愛用端末に飛びつくと、感謝の言葉もそこそこに、ヨウツベは動画編集、モジョはネット対戦シューティングに没頭する。
「こらこらお前ら。気持ちはわかるが、ついさっきまで重度な悪魔憑きやったんや、そないいきなり根を詰めたら体にさわるで?」
聴診器をモジョの背中に押し付けながらあきれる飲兵衛。
ネットが遮断されたのはほんの二、三日だったのだが、二人にとってはそれでも充分大問題だったらしく、それぞれが自分のノルマを取り戻そうと我を失い画面にかじりついている。
「……のう……こ、これ大丈夫かのう? また取り憑かれたりせんかアルテマよ」
「いや、これは負の感情ではないから問題ない。むしろいまは精気に満ち溢れておるから、たとえ上級悪魔であったとしても手は出せないだろうよ」
「そうかぁ~~。そういえばあのときのアニオタもルナちゃんへのスケベゴコロであいつを弾き返したんだもんね。やっぱり好きなことするのって大事なんだね」
「うむ、その通りだぬか娘。嫌なことをするのも大事だが、それと同じだけ好きなことをするのも大事なのだ。そうしてやらなければ、いつまた悪魔どもに隙きを見せてしまうかわからんからな。かくいう私も帝国にいた頃はよく師匠に――――って、おい!! 頬を擦り付けるな抱きしめるな!!」
「だってぇ~~。私の心の隙はアルテマちゃんしか埋められないんだも~~ん」
「す、す、す、助平心とは聞き捨てなりませぬぞ!! ぼ、ぼ、ぼ、僕はルナちゅわんのことをじゅじゅじゅ純粋にあ、あ、あ、あ、愛しているのでござる!!」
「……お前ほど『愛』と『純粋』の似合わん男も珍しいが……まあいい。問題ないならワシらは帰って休ませてもらうとするぞ? さすがにここしばらくの奮闘で疲れが出てきたわい」
首をコキコキ鳴らしつつ、六段が年寄り組を引き連れて帰ろうとする。
「アルテマ。お前は帰らんのか?」
その列に混ざる元一。心配げにアルテマを振り返るが、
「あ、ああ……私はもうしばらくここにいる。昼はもろもろの礼にカレーをご馳走してくれるというのでな」
「そうか……なら晩飯までには戻ってくるんじゃぞ」
「わかった」
そうして元一たちはそれぞれ家に戻り、休息を取ることにした。
そんな老人たちの背中を見送りながらアルテマは先程のジルの言葉を思い返す。
『こちらの世界へ帰ってくる手段は、もう見つかりましたか?』
もちろんそれは最初から考えていた。
しかし、あらためてそう聞かれたとき、自分は思わず言葉を詰まらせてしまった。
それは帰る手段がまだ見つかってない後ろめたさからではなく……。
「帰る……か」
アルテマは少し寂しそうにつぶやいた。
「な、な、な、な、なんですか……これは!!??」
ジルの精霊魔法によって修復された通信ケーブル。
砂利や小石をまとわりつかせて歪な形になってはいたが、しっかりと繋がっているそのケーブルを見上げて偽島は歯をギリギリと鳴らした。
なぜだかわからないが蹄沢集落の通信が回復したらしい、との部下の報告を受け、そんなはずはないと思いながらも切断箇所の確認にきたのだ。
「だ、誰ですか!? 私に断りもなく勝手に修理などした奴は!!」
「い、いや、知りませんぜ!? それに修理したっていっても……ようすがおかしすぎます。こりゃ俺らの仕事じゃないんじゃないですか?」
怒鳴られた現場監督が慌てて首を横に振るが、
「だったら誰がやったっていうんです!! ええい、ともかくもう一度切ってしまいなさい。今度はおいそれと直せないように両方の根元からバッサリとやってしまいなさい!!」
偽島の怒号に押されて、作業員が急いで電柱を登る。
工事用の特大チェーンカッターを使って切ろうとするが、
――――ぐ……ぐぐぐぐぐぐぐぐ……。
「!?? いや、これ!?? ????」
どんなに力を込めてもケーブルは切れるどころか刃をいっさい通さなかった。
「……なにをもたもたしているんですか?」
イラついた偽島が見上げてくる。
「いや……それがこれ……き、切れないんですよ????」
「そんなバカなことがあるはずないでしょう!? もっと力を込めてみなさい、あなたそれでもウチの組員ですか、しばき回しますよ!!」
「へ、へいっ!!!!」
有無を言わさぬ鋭い眼光で睨まれて、慌てて力を込める名もなき作業員。
「いや……それが課長。さっきも他のやつが試してみたんですけどね」
監督が何か言いたそうにしていると、
――――ぐ、ぐぐぐぐぐ……ざく。
ようやくほんの少し歯が食い込んだ。
その途端。
ぶちんっ!! しゅるんっ!!!!
バシバシバシバシバシンッ!!!!!!!!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
突如分離したケーブルが、まるで蛇のようにうねり、頭(?)を持ち上げ作業員に攻撃してきた。
体中をしばき回された作業員は、あわれ、そのまま足を滑らせ、
「え!? ……ちょ。ま、ま、待ちなさい!!?? ぐぎゃあっ!!」
その下にいた偽島を下敷きにして落下した。
「……まぁこうなるんですよ。いったいどうなってるんですかねこりゃ……」
目を回して気絶した偽島と、何事もなかったかのように元の形に戻っていくケーブル。
それらを交互に眺めて監督は、わけもわからず深い溜息をついた。
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