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第50話 新商売開始
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「……おいちょっと待て、そんな事したらアルテマの存在が世にバレて大変なことになるじゃろうがっ!!」
いきなりな飲兵衛の無茶な提案に、即座に噛みつき却下する元一。
「まあまあ、落ち着きぃや。なにも正体をバラすなんて言うてへん。バラすのは悪魔憑きのことだけや」
「どういうことじゃ?」
「どうもこうも、やっぱりワシの奇跡の治療とか……無理ありすぎるんやて!! 昨日みたいな茶番劇、毎回毎回通用することでもないやろう? いつかボロが出るんやで? かと言って患者をみんな追い返したら……」
そこでチラリとアルテマを見る。
「うむ、それは困る。魔素が補充できなくなる」
論外だとばかりに答えるアルテマ。
これが出来なくなると、今後の異世界とのやり取りがすこぶる面倒なことになる。
「せやろ、だから患者の対応はしっかりせなあかん。そこでや」
飲兵衛は占いさんに注目した。
「……なんじゃい?」
「奇跡の種明かしを占いさんの法力ってことにしたらどうかと思ってな」
「ほう……わたしのか?」
「せや、占いさんはこの集落で長年怪しげな商売しとったからの、近隣じゃちょっとしたヘンジ……有名人でもある。悪魔とか悪霊とか妖怪とか、そんな話は今まででも結構してきとったやろう? それが実は本当やったってことにしたらどうかと思ってな」
「……誰が変人じゃ。そもそもわたしは昔から嘘はついていない。しかしまぁ……そうじゃな、そうすれば上手くアルテマの存在を誤魔化せて、魔素吸収も引き続き出来ると言うわけじゃな?」
「……でも……どのみち法力とか悪魔憑きとか、そんなもの……素直に信じて貰えるのか……?」
モジョが疑問を口にするが、
「目の前で悪魔が飛び出れば嫌でも信じるやろ。それに信じんのやったら別にそれはそれで問題あらへんしな。とにかくアルテマの存在を上手く誤魔化しさえすればええんやし」
「しかし、それで片っ端から悪魔を出したらえらい騒ぎになるだろう?」
と、元一。
「だからそこはほどほどにや、何度も除霊らしき事をやって、魔素が欲しいなってタイミングで本気で悪魔祓いしたらええんやないか?」
「……打率を操作するのか……」
賢しい真似をとモジョがニヤける。
「しゃーないやんけ」
「でも、それだと毎日押し寄せる患者さんの相手をしなくちゃいけないよね? 占いさん大変じゃない?」
「……そこはお願いするしかないな。タダとは言わへんで? お祓い料取ったらええんちゃうんか」
いやらしい顔をして指で輪っかを作る飲兵衛。
「え~~~~なんかそれって詐欺っぽい」
それをジト目で見るぬか娘。
「詐欺やあらへん。事情は事前に説明するんやし、嫌なら無理強いなんかせえへん。それに悪魔祓いはホンマなんやからどこよりも良心的やで?」
「……なるほどのぅ。それでわたしの弟子としてこの巫女服か?」
アルテマの赤い袴を持ち上げながら占いさんが呆れる。
「……やっぱダメかいのう?」
バツが悪そうに頭を掻く飲兵衛に、しかし占いさんは笑って首を振ってきた。
「ダメなもんかい。それこそわたしの本業じゃろうが。占い除霊師『美智子』今日から復活じゃ!!」
久々の商売ができると占いさんは腕まくりをして勢い込んだ。
それを聞いた飲兵衛はホッとした顔で、
「悪魔憑きじゃない者への説明は元医者のワシが上手くやるさかい。二人はそれ以外の患者を好きにしたらええわ」
「好きにしたらええわって……なんかやっぱり悪どい……」
「……しかし、わたしの占いと巫女はなんの関係もないんじゃが……わたしのは呪術、巫女は神術じゃろうが」
「そんなこと誰も気にせえへん。それらしい雰囲気があればええんや」
「……やっぱり詐欺っぽいんだよなぁ」
スレスレを行こうとしている三人に、はたしてこれで良いんだろうかと首をかしげるぬか娘。
「……よく分からんが、とにかく私は堂々と魔法を使っていいんだな?」
「せや、都合の悪いことは全部、占いさんのせいにしたらええで。いまさらこの婆さんが何をやっても誰も騒ぎ立てたりせえへんからな。これからは魔素取り放題やぞ?」
「くたばれ化け物っつっっっ!!!!」
――――ずどがぁんっ!!!!
魔呪浸刀《レリクス》によって魔力付与された銃身が怪しく吠える!!
赤黒い光を纏った魔力弾は正確に獲物を貫き、その動きを止めた。
人の子供くらいの大きさがある蜘蛛型の悪魔。
さっそく選別した患者から飛び出させた低級悪魔である。
「とぉうっ!!」
元一によって仕留められたそれに飛びつくアルテマ。
「――――魔素吸収《ソウル・イート》っ!!」
魔素分解し吸収する。
「ふう、一先ず仕留められたか……ちょこまかとすばしっこい」
吹き出る汗を拭いながら、元一はもう片方の悪魔を気にかける。
出てきた悪魔を追いかけ、気付けば集落の端まで走っていた。
とりあえず今回は二人の患者から悪魔を吐き出させた。
この蜘蛛はその内の一人、不整脈に悩むお婆さんに取り憑いていた悪魔だ。
もう一人は慢性的膀胱炎の患者だったが、そっちの悪魔は別方向へ逃げて行き、それは六段が追いかけて行った。
もちろんアルテマによる魔法付与はかけてである。
「……これで、とりあえず心臓病の婆さんは元気になるということじゃな」
「そうだ、今頃は急に楽になってびっくりしていることだろう」
魔素を吸ってほっぺをツヤツヤ光らせながら巫女服姿のアルテマが胸を張った。
けっきょく悪魔祓いの儀式は全員目隠しをして行なった。
除霊マッサージうんぬんかんぬんの説明は怪しさ満点だったが、十回お祓いをしても効果がない場合は料金を全額払い戻すと説明したら、とりあえずやってみるかと言う運びになった。
だがそれでも実際に悪魔を見せるとパニックになるとのことで術中は決して目を開けないようにと説明してある。
遠くの方から『づぉうりゃぁっ!!!!』と野太い気合が聞こえてきた。
きっと六段が仕留めてくれたのだろうと、アルテマと元一はそっちの方へと駆けていった。
いきなりな飲兵衛の無茶な提案に、即座に噛みつき却下する元一。
「まあまあ、落ち着きぃや。なにも正体をバラすなんて言うてへん。バラすのは悪魔憑きのことだけや」
「どういうことじゃ?」
「どうもこうも、やっぱりワシの奇跡の治療とか……無理ありすぎるんやて!! 昨日みたいな茶番劇、毎回毎回通用することでもないやろう? いつかボロが出るんやで? かと言って患者をみんな追い返したら……」
そこでチラリとアルテマを見る。
「うむ、それは困る。魔素が補充できなくなる」
論外だとばかりに答えるアルテマ。
これが出来なくなると、今後の異世界とのやり取りがすこぶる面倒なことになる。
「せやろ、だから患者の対応はしっかりせなあかん。そこでや」
飲兵衛は占いさんに注目した。
「……なんじゃい?」
「奇跡の種明かしを占いさんの法力ってことにしたらどうかと思ってな」
「ほう……わたしのか?」
「せや、占いさんはこの集落で長年怪しげな商売しとったからの、近隣じゃちょっとしたヘンジ……有名人でもある。悪魔とか悪霊とか妖怪とか、そんな話は今まででも結構してきとったやろう? それが実は本当やったってことにしたらどうかと思ってな」
「……誰が変人じゃ。そもそもわたしは昔から嘘はついていない。しかしまぁ……そうじゃな、そうすれば上手くアルテマの存在を誤魔化せて、魔素吸収も引き続き出来ると言うわけじゃな?」
「……でも……どのみち法力とか悪魔憑きとか、そんなもの……素直に信じて貰えるのか……?」
モジョが疑問を口にするが、
「目の前で悪魔が飛び出れば嫌でも信じるやろ。それに信じんのやったら別にそれはそれで問題あらへんしな。とにかくアルテマの存在を上手く誤魔化しさえすればええんやし」
「しかし、それで片っ端から悪魔を出したらえらい騒ぎになるだろう?」
と、元一。
「だからそこはほどほどにや、何度も除霊らしき事をやって、魔素が欲しいなってタイミングで本気で悪魔祓いしたらええんやないか?」
「……打率を操作するのか……」
賢しい真似をとモジョがニヤける。
「しゃーないやんけ」
「でも、それだと毎日押し寄せる患者さんの相手をしなくちゃいけないよね? 占いさん大変じゃない?」
「……そこはお願いするしかないな。タダとは言わへんで? お祓い料取ったらええんちゃうんか」
いやらしい顔をして指で輪っかを作る飲兵衛。
「え~~~~なんかそれって詐欺っぽい」
それをジト目で見るぬか娘。
「詐欺やあらへん。事情は事前に説明するんやし、嫌なら無理強いなんかせえへん。それに悪魔祓いはホンマなんやからどこよりも良心的やで?」
「……なるほどのぅ。それでわたしの弟子としてこの巫女服か?」
アルテマの赤い袴を持ち上げながら占いさんが呆れる。
「……やっぱダメかいのう?」
バツが悪そうに頭を掻く飲兵衛に、しかし占いさんは笑って首を振ってきた。
「ダメなもんかい。それこそわたしの本業じゃろうが。占い除霊師『美智子』今日から復活じゃ!!」
久々の商売ができると占いさんは腕まくりをして勢い込んだ。
それを聞いた飲兵衛はホッとした顔で、
「悪魔憑きじゃない者への説明は元医者のワシが上手くやるさかい。二人はそれ以外の患者を好きにしたらええわ」
「好きにしたらええわって……なんかやっぱり悪どい……」
「……しかし、わたしの占いと巫女はなんの関係もないんじゃが……わたしのは呪術、巫女は神術じゃろうが」
「そんなこと誰も気にせえへん。それらしい雰囲気があればええんや」
「……やっぱり詐欺っぽいんだよなぁ」
スレスレを行こうとしている三人に、はたしてこれで良いんだろうかと首をかしげるぬか娘。
「……よく分からんが、とにかく私は堂々と魔法を使っていいんだな?」
「せや、都合の悪いことは全部、占いさんのせいにしたらええで。いまさらこの婆さんが何をやっても誰も騒ぎ立てたりせえへんからな。これからは魔素取り放題やぞ?」
「くたばれ化け物っつっっっ!!!!」
――――ずどがぁんっ!!!!
魔呪浸刀《レリクス》によって魔力付与された銃身が怪しく吠える!!
赤黒い光を纏った魔力弾は正確に獲物を貫き、その動きを止めた。
人の子供くらいの大きさがある蜘蛛型の悪魔。
さっそく選別した患者から飛び出させた低級悪魔である。
「とぉうっ!!」
元一によって仕留められたそれに飛びつくアルテマ。
「――――魔素吸収《ソウル・イート》っ!!」
魔素分解し吸収する。
「ふう、一先ず仕留められたか……ちょこまかとすばしっこい」
吹き出る汗を拭いながら、元一はもう片方の悪魔を気にかける。
出てきた悪魔を追いかけ、気付けば集落の端まで走っていた。
とりあえず今回は二人の患者から悪魔を吐き出させた。
この蜘蛛はその内の一人、不整脈に悩むお婆さんに取り憑いていた悪魔だ。
もう一人は慢性的膀胱炎の患者だったが、そっちの悪魔は別方向へ逃げて行き、それは六段が追いかけて行った。
もちろんアルテマによる魔法付与はかけてである。
「……これで、とりあえず心臓病の婆さんは元気になるということじゃな」
「そうだ、今頃は急に楽になってびっくりしていることだろう」
魔素を吸ってほっぺをツヤツヤ光らせながら巫女服姿のアルテマが胸を張った。
けっきょく悪魔祓いの儀式は全員目隠しをして行なった。
除霊マッサージうんぬんかんぬんの説明は怪しさ満点だったが、十回お祓いをしても効果がない場合は料金を全額払い戻すと説明したら、とりあえずやってみるかと言う運びになった。
だがそれでも実際に悪魔を見せるとパニックになるとのことで術中は決して目を開けないようにと説明してある。
遠くの方から『づぉうりゃぁっ!!!!』と野太い気合が聞こえてきた。
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