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第48話 物資調達
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「クリプトスポリジウム、ジアルジア、赤痢菌、サルモネラ属細菌、カンピロバクター属細菌……と、なんや、異世界の細菌もこっちとあまり代わり映えせえへんやないか?」
カイギネス皇帝との再開と挨拶を終えたアルテマと集落の一同。
後日、ジルによって送られてきた水門の水を確認して、飲兵衛は興味深げに顕微鏡を覗いている。
「どれどれ……なんだこりゃ!? き、気持ち悪いぞ??」
顕微鏡とはどんな物かとアルテマも覗いてみるが、そこに映った微生物の集団に思わず仰け反り鳥肌を作る。
「それが人に悪さしとる細菌っちゅうやつや」
「な、なんてことだ……こんなもの飲んでしまえば腹を壊すのは当然だ!! おのれ聖王国の連中め、卑劣な真似を~~~~っ!!」
「まぁ、これらの細菌はそもそもどんな水にも入ってはいるがな、しかし確かに量は多いようやな」
「で、これを何とかする薬は用意出来るのかっ!??」
かじりつくかのような勢いで飲兵衛に迫るアルテマ。
こうしている間にも帝国のご老人や、いたいけな子供たちが苦しんで犠牲になっているかも知れないのだ。いても立ってもいられない。
「うむ。汚染の具合によっては薬剤の調達が難しいかもと思っとったが、これならば市販の下痢止めでとりあえずは良いだろう」
「そうなのか? じゃあワシがひとっ走り隣町の薬局に行って買って来ようかの?」
アルテマとともにようすを見に来ていた元一がそう提案してくる。
「そやな、とりあえず買うて来てくれるか? 効能に『水あたり』って書いてあるやつならなんでもええわ。……出来るだけ大量に欲しいが、買い占めるとこっちの住人にも迷惑やろうから、そこは店長と相談してくれ。あ、あと浄水薬もあったら買っといてな」
「わかった」
言ってさっそく席を立つ元一。
「私も手伝うぞ」
それに付いていこうとするアルテマだが、
「いや、お前は来なくていい」
「あかんで」
二人に同時に止められた。
「な、なんでだ!? これは帝国国民を救うための物資調達なのだろう? であれば騎士である私が働かなくてどうするんだ!!」
地団駄を踏んでむくれるアルテマだが、
「お前の存在が外にもれると……その……色々とやっかいじゃろうが」
「そうやで。一見可愛らしいお嬢ちゃんやけど、そのツノは目立つさかいな、いくら隠しとってもどこでボロが出るかわからん。お前さんの正体がこの世界の人間にバレてしまったら故郷の救済どころやなくなるで?」
「うう……で、では私はどうすればいいのだ」
「お前はまた魔素を集めねばならんだろう? 今回の通信でまた魔力を失ったと言っておったではないか? それに次はワシが買ってきた薬の転送もしなけれならんし、もっと魔力がいるのではないか?」
元一の言葉にアルテマはハッとして、
「そ、そうだった。元一が帰って来るまでに相応の魔素を溜めておかねば!! ……ううう、し、しかし一体どうすれば……」
頭を抱えて右往左往するアルテマ。
「忙しいやっちゃなぁ、気持ちはわかるがちょっとは落ち着きや。ほれ、そこの棚にチョコレートがあるさかい。それ食べて牛乳でも飲めばほっこりするで?」
「ううう……わかった」
「じゃあゲンさんの手伝いは僕が行ってきますよ」
ヨウツベが立ち上がり元一の後を追う。
「しかし……患者は数百人単位でいるんですよね? 薬局に置いてある程度じゃ全然足りないんじゃないですか?」
「足りんやろな。とりあえず手に入るだけの薬は先に送るが、その後のことも考えんとな。……馴染みの製薬会社の営業マンなら連絡がつくが、それにしても個人で大量の買込となると色々怪しまれるからな。さて、どうしたものか……」
腕を組んで唸る飲兵衛。
とりあえず飲んで頭を回そうと一升瓶に手をかけようとするが、それをぬか娘に取り上げられた。
「駄目ですよ。いまは真面目な話をしているんですから。解決するまでお酒はお預けです」
「んなアホな!?? それがないとわしゃ動けへんようになるんじゃよ!?」
「そんな人間はいません」
「ここにおるここにおる!!」
バタバタと取っ組み合いを始める二人。
それを暗い顔で見つめ、牛乳片手にチョコレートをパクつくアルテマ。
モジョは少し考えて、
「……通販なら大量買い出来るんじゃないか?」
と、ボソリと呟いた。
「おお、それな!?」
その手があったと指をさすヨウツベ。
「そそそ、それなら僕が、い、い、いくつもアカウント持ってるから、何人にも成りすましてか、か、か、買うことができるんだな」
それなら自分も協力できるとアニオタが携帯を取り出した。
「……いや……成りすますとかまではしなくてもいいと思うけど……。なんでそんなにアカウント持ってるんだ? しかも住所もバラバラ……局止めも……ナニコレ?」
アニオタの通販アプリを確認して呆れるモジョ。
「し、し、し、紳士には色々と秘密が多いのです。よよよ、余計な詮索はセクシャルハラスメントなのですよ」
「……あ……察し……」
「と、ともかく……コソコソ買いは僕の得意技なので、ぶ、ぶ、ぶ、物資の大量調達ならお任せあれなんだな。か、か、か、海外サイトにもく、く、く、詳しいので」
「……おう。じゃ今日からお前を仕入れ担当大臣に任命しよう。ほな、まずはゲンさん、ヨウツベ、アニオタで物資の調達。ぬか娘、モジョは……なんか落ち込んどるアルテマの面倒を見てやてっくれ」
「……飲兵衛さんはどうするの?」
「ん、だからワシはそれまでのガソリン補給を……」
「だから飲ませねぇよ~~~~!!」
一升瓶にしがみつく飲兵衛を無慈悲に引き剥がすぬか娘であった。
カイギネス皇帝との再開と挨拶を終えたアルテマと集落の一同。
後日、ジルによって送られてきた水門の水を確認して、飲兵衛は興味深げに顕微鏡を覗いている。
「どれどれ……なんだこりゃ!? き、気持ち悪いぞ??」
顕微鏡とはどんな物かとアルテマも覗いてみるが、そこに映った微生物の集団に思わず仰け反り鳥肌を作る。
「それが人に悪さしとる細菌っちゅうやつや」
「な、なんてことだ……こんなもの飲んでしまえば腹を壊すのは当然だ!! おのれ聖王国の連中め、卑劣な真似を~~~~っ!!」
「まぁ、これらの細菌はそもそもどんな水にも入ってはいるがな、しかし確かに量は多いようやな」
「で、これを何とかする薬は用意出来るのかっ!??」
かじりつくかのような勢いで飲兵衛に迫るアルテマ。
こうしている間にも帝国のご老人や、いたいけな子供たちが苦しんで犠牲になっているかも知れないのだ。いても立ってもいられない。
「うむ。汚染の具合によっては薬剤の調達が難しいかもと思っとったが、これならば市販の下痢止めでとりあえずは良いだろう」
「そうなのか? じゃあワシがひとっ走り隣町の薬局に行って買って来ようかの?」
アルテマとともにようすを見に来ていた元一がそう提案してくる。
「そやな、とりあえず買うて来てくれるか? 効能に『水あたり』って書いてあるやつならなんでもええわ。……出来るだけ大量に欲しいが、買い占めるとこっちの住人にも迷惑やろうから、そこは店長と相談してくれ。あ、あと浄水薬もあったら買っといてな」
「わかった」
言ってさっそく席を立つ元一。
「私も手伝うぞ」
それに付いていこうとするアルテマだが、
「いや、お前は来なくていい」
「あかんで」
二人に同時に止められた。
「な、なんでだ!? これは帝国国民を救うための物資調達なのだろう? であれば騎士である私が働かなくてどうするんだ!!」
地団駄を踏んでむくれるアルテマだが、
「お前の存在が外にもれると……その……色々とやっかいじゃろうが」
「そうやで。一見可愛らしいお嬢ちゃんやけど、そのツノは目立つさかいな、いくら隠しとってもどこでボロが出るかわからん。お前さんの正体がこの世界の人間にバレてしまったら故郷の救済どころやなくなるで?」
「うう……で、では私はどうすればいいのだ」
「お前はまた魔素を集めねばならんだろう? 今回の通信でまた魔力を失ったと言っておったではないか? それに次はワシが買ってきた薬の転送もしなけれならんし、もっと魔力がいるのではないか?」
元一の言葉にアルテマはハッとして、
「そ、そうだった。元一が帰って来るまでに相応の魔素を溜めておかねば!! ……ううう、し、しかし一体どうすれば……」
頭を抱えて右往左往するアルテマ。
「忙しいやっちゃなぁ、気持ちはわかるがちょっとは落ち着きや。ほれ、そこの棚にチョコレートがあるさかい。それ食べて牛乳でも飲めばほっこりするで?」
「ううう……わかった」
「じゃあゲンさんの手伝いは僕が行ってきますよ」
ヨウツベが立ち上がり元一の後を追う。
「しかし……患者は数百人単位でいるんですよね? 薬局に置いてある程度じゃ全然足りないんじゃないですか?」
「足りんやろな。とりあえず手に入るだけの薬は先に送るが、その後のことも考えんとな。……馴染みの製薬会社の営業マンなら連絡がつくが、それにしても個人で大量の買込となると色々怪しまれるからな。さて、どうしたものか……」
腕を組んで唸る飲兵衛。
とりあえず飲んで頭を回そうと一升瓶に手をかけようとするが、それをぬか娘に取り上げられた。
「駄目ですよ。いまは真面目な話をしているんですから。解決するまでお酒はお預けです」
「んなアホな!?? それがないとわしゃ動けへんようになるんじゃよ!?」
「そんな人間はいません」
「ここにおるここにおる!!」
バタバタと取っ組み合いを始める二人。
それを暗い顔で見つめ、牛乳片手にチョコレートをパクつくアルテマ。
モジョは少し考えて、
「……通販なら大量買い出来るんじゃないか?」
と、ボソリと呟いた。
「おお、それな!?」
その手があったと指をさすヨウツベ。
「そそそ、それなら僕が、い、い、いくつもアカウント持ってるから、何人にも成りすましてか、か、か、買うことができるんだな」
それなら自分も協力できるとアニオタが携帯を取り出した。
「……いや……成りすますとかまではしなくてもいいと思うけど……。なんでそんなにアカウント持ってるんだ? しかも住所もバラバラ……局止めも……ナニコレ?」
アニオタの通販アプリを確認して呆れるモジョ。
「し、し、し、紳士には色々と秘密が多いのです。よよよ、余計な詮索はセクシャルハラスメントなのですよ」
「……あ……察し……」
「と、ともかく……コソコソ買いは僕の得意技なので、ぶ、ぶ、ぶ、物資の大量調達ならお任せあれなんだな。か、か、か、海外サイトにもく、く、く、詳しいので」
「……おう。じゃ今日からお前を仕入れ担当大臣に任命しよう。ほな、まずはゲンさん、ヨウツベ、アニオタで物資の調達。ぬか娘、モジョは……なんか落ち込んどるアルテマの面倒を見てやてっくれ」
「……飲兵衛さんはどうするの?」
「ん、だからワシはそれまでのガソリン補給を……」
「だから飲ませねぇよ~~~~!!」
一升瓶にしがみつく飲兵衛を無慈悲に引き剥がすぬか娘であった。
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