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第40話 また魔力を求めて①
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「むおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! こんな事をしている場合ではないっ!! 魔素だ、魔素がいるんだ、私はーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
テンテレテレンテレンテ、テン、テン、テン♪
と、死亡時の効果音を響かせながらアルテマは赤いコントローラーを放り投げる。
けっして、ちょっとした段差だけで死んでしまう世界一虚弱体質な冒険家を主人公にした伝説のレトロアクションゲームに嫌気がさしたからではない。
「まあまあ、アルテマちゃん。向こうの世界が心配なのはわかるけど、目の前の目的から目を背けちゃダメだよ」
アルテマを膝にのせ、頭をナデナデしながらぬか娘が励ましてくる。
「……お前のいまの仕事は、この洞窟の最深部に生き……隠れた財宝を手に入れることだ……エレベーターを踏み外して死んでいる場合ではない」
隣に座っているモジョも、そんな根性の無いアルテマを叱るように頬を突っつく。
どうにかして魔素を補充し、再び異世界と連絡を取りたいアルテマは、モジョたちならば何か良い情報を知ってはいないかと『鉄の結束荘』にやってきた。
そしたら速攻でぬか娘に拉致され、モジョにコントローラーを握らされ、何故か半強制的にこのゲームをやらされたのである。
「エレベーターで死んでいる場合ではない以前にこんなゲームをやっている場合ではないんだがっ!?」
「……こんなゲームとはご挨拶だな。……これはかの、た○しの挑戦状と双璧をなす伝説のクソゲーオブクソゲーで……世界の全てのゲームは、この二大巨塔が今もなお鳴らす警鐘を教訓に進化を続けているのだぞ。……お前もゲーマーを目指すならこれらの奇作に対する感謝と敬意を忘れてはいけない……」
「デス○リムゾンもあるよね」
「……あれは年代も違うし、これら巨匠とはボケのベクトルが違う。……あれはクソゲーではなくバカゲーと言ったほうが良い」
熱く語り合う二人だが、
「そうじゃなくて、魔素だ!! 私は魔素が欲しいんだよ!! 何か大量の魔素が手に入るアイテムか場所を知らんか!? 今日はそれを聞きに来たんだっ!!」
怒り、足をバタつかせるアルテマ。
それに対し、モジョは難しそうに頭を掻きながら
「まぁ、確かに……あの後、異世界はどうなったのか……わたしも気がかりではあるが……。しかし、あれで魔素を使い切ってしまって倒れてしまったんだぞ? ……もう少し、体を休めてからでいいんじゃないのか……?」
「そうだよう、アルテマちゃん一週間も寝てたんだよ!? その間、私たちがどれだけ心配したかわかってるの? 無理しちゃだめだよ!!」
ぬか娘も後ろからアルテマを抱きしめ、メッって怒ってくるが、
「……そこまで子ども扱いするな。何度も言っているが私はこう見えてもお前達より年上なんだぞ!! ええい、頭をなでなでするな!!」
実は先程、節子から連絡があり、アルテマが遊びに行ってもけっして無茶をさせないようにと釘を刺されてもいる。
「……まぁ、果報は寝て待てと言うしな。……ここは無理せず、いつの日かどうにかなるまで、ここでわたしらとゲーム道を極めてみたらいいじゃないか……?」
「日が暮れ……いや、人生が暮れるわ!! それにな、そのことわざは間違っている、正しくは『果報は練って待て』だ。すなわち、いかなる時にも精進を怠らず、努力を重ねる者にこそ幸は訪れるという意味だ!! 食っちゃ寝食っちゃ寝で油断して怠惰に溺れている者には未来など来ないと言うことだ!!」
たまたまタブレットで読んだ、この国に伝わる先人の教えを吐露して聞かせるアルテマ。その破壊力は、目の前の二人を貫くだけでは収まらず、階下で平和にアニメを観ていた男と、同じく平和にバラエティ動画を観てニヤけていた男たちを、おやつの煎餅ごと袈裟斬りにし、建屋すらも激震させ傾かせるほどの威力だった。
「…………~~~~~~…………ぐふぉ……わ、わたしは……もう、だめだ」
「あ……アルテマちゃん……わ、私たちの躯は……どうか、どうか……海へと帰して……」
「ど……どうしたお前たちっ!! なぜそんなにダメージを受けている?? おい大丈夫か、おいっ!??」
まったく無自覚に大量破壊兵器のスイッチを押してしまったアルテマは訳が分からず右往左往する。
二人がショックから立ち直ったのは、それから半日経った夕方のことであった。
「……こ、これは……」
案内された居住区とは別の教室。
入り口プレートに『私の宝物部屋』と書かれたその部屋は、先程のゲーム部屋の隣に位置する。
厳重に鍵が掛けられたその部屋に連れてこられたアルテマは、入るなり立ちすくみ言葉を失ってしまった。
「ううう……ホントは大人しくしていて欲しかったけど……あんな痛い説教を聞かされるぐらいなら……諦めるわ……」
まだ傷の癒えぬ心を引きずりつつ、ぬか娘は部屋に広がる宝の山をアルテマに見せてあげる。
壊れた椅子に古ぼけた人形。曲がったレコード盤にほつれたカセットテープ。色あせた看板。割れた客寄せ人形。鍵盤の取れたピアノ。破れた鯉のぼり。
それらは宝の山とは名ばかりで、ただの粗大ごみの集合体であった。
しかし、普通の者ならそう評価するだろうが、アルテマの反応は違った。
「お……おおお? ……こ、これは……魔素の集まり? ぬ……ぬか娘よ、いったいこの部屋は??」
「えへへ、ここは私の宝物部屋。ずっと昔から骨董屋さんとか廃墟とか巡って集め続けていた、私のコレクション部屋だよ」
「……収集場所にゴミ捨て場も入れとけよ」
部屋の外で呆れて見ながら、モジョがぼそっと呟いた。
テンテレテレンテレンテ、テン、テン、テン♪
と、死亡時の効果音を響かせながらアルテマは赤いコントローラーを放り投げる。
けっして、ちょっとした段差だけで死んでしまう世界一虚弱体質な冒険家を主人公にした伝説のレトロアクションゲームに嫌気がさしたからではない。
「まあまあ、アルテマちゃん。向こうの世界が心配なのはわかるけど、目の前の目的から目を背けちゃダメだよ」
アルテマを膝にのせ、頭をナデナデしながらぬか娘が励ましてくる。
「……お前のいまの仕事は、この洞窟の最深部に生き……隠れた財宝を手に入れることだ……エレベーターを踏み外して死んでいる場合ではない」
隣に座っているモジョも、そんな根性の無いアルテマを叱るように頬を突っつく。
どうにかして魔素を補充し、再び異世界と連絡を取りたいアルテマは、モジョたちならば何か良い情報を知ってはいないかと『鉄の結束荘』にやってきた。
そしたら速攻でぬか娘に拉致され、モジョにコントローラーを握らされ、何故か半強制的にこのゲームをやらされたのである。
「エレベーターで死んでいる場合ではない以前にこんなゲームをやっている場合ではないんだがっ!?」
「……こんなゲームとはご挨拶だな。……これはかの、た○しの挑戦状と双璧をなす伝説のクソゲーオブクソゲーで……世界の全てのゲームは、この二大巨塔が今もなお鳴らす警鐘を教訓に進化を続けているのだぞ。……お前もゲーマーを目指すならこれらの奇作に対する感謝と敬意を忘れてはいけない……」
「デス○リムゾンもあるよね」
「……あれは年代も違うし、これら巨匠とはボケのベクトルが違う。……あれはクソゲーではなくバカゲーと言ったほうが良い」
熱く語り合う二人だが、
「そうじゃなくて、魔素だ!! 私は魔素が欲しいんだよ!! 何か大量の魔素が手に入るアイテムか場所を知らんか!? 今日はそれを聞きに来たんだっ!!」
怒り、足をバタつかせるアルテマ。
それに対し、モジョは難しそうに頭を掻きながら
「まぁ、確かに……あの後、異世界はどうなったのか……わたしも気がかりではあるが……。しかし、あれで魔素を使い切ってしまって倒れてしまったんだぞ? ……もう少し、体を休めてからでいいんじゃないのか……?」
「そうだよう、アルテマちゃん一週間も寝てたんだよ!? その間、私たちがどれだけ心配したかわかってるの? 無理しちゃだめだよ!!」
ぬか娘も後ろからアルテマを抱きしめ、メッって怒ってくるが、
「……そこまで子ども扱いするな。何度も言っているが私はこう見えてもお前達より年上なんだぞ!! ええい、頭をなでなでするな!!」
実は先程、節子から連絡があり、アルテマが遊びに行ってもけっして無茶をさせないようにと釘を刺されてもいる。
「……まぁ、果報は寝て待てと言うしな。……ここは無理せず、いつの日かどうにかなるまで、ここでわたしらとゲーム道を極めてみたらいいじゃないか……?」
「日が暮れ……いや、人生が暮れるわ!! それにな、そのことわざは間違っている、正しくは『果報は練って待て』だ。すなわち、いかなる時にも精進を怠らず、努力を重ねる者にこそ幸は訪れるという意味だ!! 食っちゃ寝食っちゃ寝で油断して怠惰に溺れている者には未来など来ないと言うことだ!!」
たまたまタブレットで読んだ、この国に伝わる先人の教えを吐露して聞かせるアルテマ。その破壊力は、目の前の二人を貫くだけでは収まらず、階下で平和にアニメを観ていた男と、同じく平和にバラエティ動画を観てニヤけていた男たちを、おやつの煎餅ごと袈裟斬りにし、建屋すらも激震させ傾かせるほどの威力だった。
「…………~~~~~~…………ぐふぉ……わ、わたしは……もう、だめだ」
「あ……アルテマちゃん……わ、私たちの躯は……どうか、どうか……海へと帰して……」
「ど……どうしたお前たちっ!! なぜそんなにダメージを受けている?? おい大丈夫か、おいっ!??」
まったく無自覚に大量破壊兵器のスイッチを押してしまったアルテマは訳が分からず右往左往する。
二人がショックから立ち直ったのは、それから半日経った夕方のことであった。
「……こ、これは……」
案内された居住区とは別の教室。
入り口プレートに『私の宝物部屋』と書かれたその部屋は、先程のゲーム部屋の隣に位置する。
厳重に鍵が掛けられたその部屋に連れてこられたアルテマは、入るなり立ちすくみ言葉を失ってしまった。
「ううう……ホントは大人しくしていて欲しかったけど……あんな痛い説教を聞かされるぐらいなら……諦めるわ……」
まだ傷の癒えぬ心を引きずりつつ、ぬか娘は部屋に広がる宝の山をアルテマに見せてあげる。
壊れた椅子に古ぼけた人形。曲がったレコード盤にほつれたカセットテープ。色あせた看板。割れた客寄せ人形。鍵盤の取れたピアノ。破れた鯉のぼり。
それらは宝の山とは名ばかりで、ただの粗大ごみの集合体であった。
しかし、普通の者ならそう評価するだろうが、アルテマの反応は違った。
「お……おおお? ……こ、これは……魔素の集まり? ぬ……ぬか娘よ、いったいこの部屋は??」
「えへへ、ここは私の宝物部屋。ずっと昔から骨董屋さんとか廃墟とか巡って集め続けていた、私のコレクション部屋だよ」
「……収集場所にゴミ捨て場も入れとけよ」
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