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第256話 捕縛作戦㉘
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「あ、あああっ!! ……た、助け……て……!!」
自らのファントム『雪の神』に、その身を飲み込まれていく椿。
二体の身体が同化し、一つへと合わさっていく。
消滅してしまう恐怖に、壊れていたはずの精神が目を覚まし、椿は二度目の死に涙して怯えた。
室内の気温はすでに氷点下を大きく下回っている。
外は吹雪が荒れ狂い、世界を氷に変えている。
銀野は百恵に逃げろと指示を出し、百恵ももはやそうするしかないと考えたが、しかし椿の涙を見た瞬間その妥当を捨て、彼女に飛びかかった。
「も、百恵殿、何を!?」
その無謀な行動に、銀野は半分凍りついた体を揺らし仰天する。
まさか結界をぶつけ、能力を止めようとしているのか!?
バカな、神格化しようとしている雪の神にそんなもの効くはずがない。
もはや一能力者が押さえきれる出力ではないのだ。
触れたが最後、百恵の身体は一瞬にして凍らされてしまうだろう。
そんなことも理解出来ない少女ではなかったはず。
――――もう一度ドミニオンを飛ばし、彼女を強化するか!? いやだめだ、そんなことをしたら百恵の精神はすぐにでも枯渇してしまい、最悪、魂が蒸発してしまう。
ドミニオンは強力なサポート能力を持っているが、やはりその代償も大きい。
これ以上。彼女に使うことは出来ない。
「マステマーーーーーーーーっ!!」
それでも百恵は椿に飛びかかっていった。
飛びかかり、その身体にしがみついた。
「百恵殿っ!!」
それはダメだ、やはり無謀すぎる!!
どんなつもりかもわからない。
ただがむしゃらに神へと同化していく椿を助けようとしているのか!?
しかしそんな尽きかけた能力でなにをどう止めるというのか?
それとも神格を前にして気でも狂ってしまったのか!?
案の定、凍りついていく百恵を見ながら、銀野は最悪の事態を覚悟した。
しかし――――、
――――ババ、バリバリバリバリッ!!!!
『グ、グガアァァァァッ!!!!』
雪の神が悲鳴を上げた。
同時にその能力はピタリと止まり、強く光る青の光がその身体を包んでいた。
『グ、グオォォォォォォォッ!!!!』
苦しげに藻掻く雪の神の胴体には一つのリングがはめられていた。
「あ……あれは!??」
銀野は目を丸くし、そのリングの存在を思い出した。
あれは七瀬監視官がマステマ用に開発していた特殊捕獲具。
ブレーカーと呼ばれるそれは、特殊な鉱石を媒体にして超能力者が持つ結界エネルギーを保存し、捕獲対象に向け使用することで相手の能力を封じることができる。
しかし従来のそれでは大西元所長クラスの能力者には通用しないとのことで、七瀬監視官がさらに強化するべく、改良していたものだ。
それがいま雪の神の能力を抑え込み拘束に成功している。
外の猛吹雪も止まっていた。
「……す、すごい……で、ござる……」
改良するとは言えども、そんな簡単にできるはずがないだろうと正直期待などしていなく、その存在すら忘れていた銀野だか、マステマどころか神格化しかけている雪の神まで効果を表すとは……。
七瀬監視官の底知れない開発力に素直に感嘆の声を上げた。
「も、百恵殿……。ととと、飛びかかったのはそういう算段があってのことでござったか……。拙僧マジで焦ったでござるよ」
凍結が止まった身体の氷を、結界で分解しながら銀野は安堵の息を吐く。
無謀にも飛びかかっていった百恵を見て一時は全滅も覚悟したが、なんとかこのアイテムに救われたようだ。
リングに締め付けられ、その結界の膜で動けないでいる雪の神。
あっけない幕引きだが、こうなればマステマも手を出すことはできないだろう。
「ししし、しかし百恵殿……。このブレーカー、ままま、まだ充分に威力検証していない物でござろう? もし効かなかったら、どどどどどうするつもりだったのでござるか?」
身を起こしながら銀野は、いまだ椿に抱きついている百恵に聞いた。
緊急事態だったとはいえ、あまりにも賭けが過ぎるのじゃないかと、上官として一言いいたかったからだ。
「……そうだな。どうするかは……いま、考えておるところじゃ」
苦々しい顔をして百恵は答えた。
「いいい、いま考えてしょうがないでござろう!! ふ~~~~しかしまぁ結果オーライってことでとりあえずは良しとするでござるか……」
「…………………………」
それには答えない百恵。
不思議に彼女の顔を見る銀野。
するとその顔は苦しげに歪み、青ざめ、玉の汗が浮き出ていた。
「も、も、……百恵どの……そそそ、その顔色は――――」
聞こうとしたとき、
――――パキッ!!
乾いた音が鳴った。
見ると、ブレーカーリングに大きなヒビが入っていた。
「……これは……ま、ま、マズいのではごご、ござらんか?」
銀野が冷や汗を流すと同時に、
『グ……グオオォォオオォ……』
という唸りとともに、雪の神が再び動き始めた。
「え、ちょ、ちょちょちょ!! 百恵殿!??」
――――キィィィィィィィィィィン、
再び凍りつく室内。
外もまた吹雪が復活する。
百恵が苦しそうに顔を歪めながらも銀野にうったえる。
「ち……力が……。力が足りない……。ド……ドミニオンだ!! わ、吾輩に……もう一度ドミニオンをよ……よこせ!!」
自らのファントム『雪の神』に、その身を飲み込まれていく椿。
二体の身体が同化し、一つへと合わさっていく。
消滅してしまう恐怖に、壊れていたはずの精神が目を覚まし、椿は二度目の死に涙して怯えた。
室内の気温はすでに氷点下を大きく下回っている。
外は吹雪が荒れ狂い、世界を氷に変えている。
銀野は百恵に逃げろと指示を出し、百恵ももはやそうするしかないと考えたが、しかし椿の涙を見た瞬間その妥当を捨て、彼女に飛びかかった。
「も、百恵殿、何を!?」
その無謀な行動に、銀野は半分凍りついた体を揺らし仰天する。
まさか結界をぶつけ、能力を止めようとしているのか!?
バカな、神格化しようとしている雪の神にそんなもの効くはずがない。
もはや一能力者が押さえきれる出力ではないのだ。
触れたが最後、百恵の身体は一瞬にして凍らされてしまうだろう。
そんなことも理解出来ない少女ではなかったはず。
――――もう一度ドミニオンを飛ばし、彼女を強化するか!? いやだめだ、そんなことをしたら百恵の精神はすぐにでも枯渇してしまい、最悪、魂が蒸発してしまう。
ドミニオンは強力なサポート能力を持っているが、やはりその代償も大きい。
これ以上。彼女に使うことは出来ない。
「マステマーーーーーーーーっ!!」
それでも百恵は椿に飛びかかっていった。
飛びかかり、その身体にしがみついた。
「百恵殿っ!!」
それはダメだ、やはり無謀すぎる!!
どんなつもりかもわからない。
ただがむしゃらに神へと同化していく椿を助けようとしているのか!?
しかしそんな尽きかけた能力でなにをどう止めるというのか?
それとも神格を前にして気でも狂ってしまったのか!?
案の定、凍りついていく百恵を見ながら、銀野は最悪の事態を覚悟した。
しかし――――、
――――ババ、バリバリバリバリッ!!!!
『グ、グガアァァァァッ!!!!』
雪の神が悲鳴を上げた。
同時にその能力はピタリと止まり、強く光る青の光がその身体を包んでいた。
『グ、グオォォォォォォォッ!!!!』
苦しげに藻掻く雪の神の胴体には一つのリングがはめられていた。
「あ……あれは!??」
銀野は目を丸くし、そのリングの存在を思い出した。
あれは七瀬監視官がマステマ用に開発していた特殊捕獲具。
ブレーカーと呼ばれるそれは、特殊な鉱石を媒体にして超能力者が持つ結界エネルギーを保存し、捕獲対象に向け使用することで相手の能力を封じることができる。
しかし従来のそれでは大西元所長クラスの能力者には通用しないとのことで、七瀬監視官がさらに強化するべく、改良していたものだ。
それがいま雪の神の能力を抑え込み拘束に成功している。
外の猛吹雪も止まっていた。
「……す、すごい……で、ござる……」
改良するとは言えども、そんな簡単にできるはずがないだろうと正直期待などしていなく、その存在すら忘れていた銀野だか、マステマどころか神格化しかけている雪の神まで効果を表すとは……。
七瀬監視官の底知れない開発力に素直に感嘆の声を上げた。
「も、百恵殿……。ととと、飛びかかったのはそういう算段があってのことでござったか……。拙僧マジで焦ったでござるよ」
凍結が止まった身体の氷を、結界で分解しながら銀野は安堵の息を吐く。
無謀にも飛びかかっていった百恵を見て一時は全滅も覚悟したが、なんとかこのアイテムに救われたようだ。
リングに締め付けられ、その結界の膜で動けないでいる雪の神。
あっけない幕引きだが、こうなればマステマも手を出すことはできないだろう。
「ししし、しかし百恵殿……。このブレーカー、ままま、まだ充分に威力検証していない物でござろう? もし効かなかったら、どどどどどうするつもりだったのでござるか?」
身を起こしながら銀野は、いまだ椿に抱きついている百恵に聞いた。
緊急事態だったとはいえ、あまりにも賭けが過ぎるのじゃないかと、上官として一言いいたかったからだ。
「……そうだな。どうするかは……いま、考えておるところじゃ」
苦々しい顔をして百恵は答えた。
「いいい、いま考えてしょうがないでござろう!! ふ~~~~しかしまぁ結果オーライってことでとりあえずは良しとするでござるか……」
「…………………………」
それには答えない百恵。
不思議に彼女の顔を見る銀野。
するとその顔は苦しげに歪み、青ざめ、玉の汗が浮き出ていた。
「も、も、……百恵どの……そそそ、その顔色は――――」
聞こうとしたとき、
――――パキッ!!
乾いた音が鳴った。
見ると、ブレーカーリングに大きなヒビが入っていた。
「……これは……ま、ま、マズいのではごご、ござらんか?」
銀野が冷や汗を流すと同時に、
『グ……グオオォォオオォ……』
という唸りとともに、雪の神が再び動き始めた。
「え、ちょ、ちょちょちょ!! 百恵殿!??」
――――キィィィィィィィィィィン、
再び凍りつく室内。
外もまた吹雪が復活する。
百恵が苦しそうに顔を歪めながらも銀野にうったえる。
「ち……力が……。力が足りない……。ド……ドミニオンだ!! わ、吾輩に……もう一度ドミニオンをよ……よこせ!!」
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