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第253話 捕縛作戦㉕
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かすれる意識の中で、菜々ちんが目を覚ますのを見た。
彼女はゆっくり起き上がると驚いたように私を見て、そして悲しそうな顔をした。
精気を使い果たし、干からびてしまった私にそっと手を触れ彼女はつぶやく。
「宝塚さん……なんて……馬鹿なことを…………私のことなんて放っておけば良かったのに……」
すごく、すごく悲しそうな顔をして私の頬を撫でる。
ポタリと暖かな感触がした。
彼女の落とした涙が、頬に落ちたのだ。
「菜々……ちん」
私は力を振り絞って彼女の顔を見返した。
しかしそこにあったのは、すでに冷酷な表情を取り戻した彼女の目。
菜々ちんはその目で私を見下ろしたまま、ゆっくりと立ち上がった。
焼けてボロボロになったセーラー服が風に飛ばされていく。
それを気にすることなく彼女は何かの合図のように手を空に振り上げた。
と、――――ザ、ザザザ。
建物の影から三人、戦闘服姿の男が現れた。
「お疲れ様です、菜々様。大西代表の命令で補充要員としてやってきました!!」
男の一人が胸に手を当て、敬礼まがいの仕草を見せる。
「……たったの三人? もう少し送ってくれると思いましたけれど?」
「は、最初は15名でしたが、謎の熱波により12名は戦闘不能になりました」
「…………そう。まあ、あの攻撃ならそれも仕方ないわね。百恵さんへの対処も含めてここは一旦撤退します。あなたたちは彼女を運んでくれますか?」
「は、し、しかし菜々様……そのお姿は?」
「焼かれたのよ。みっともないと思うのならあなたの上着を貸してください」
下着もほぼ焼け落ち、裸同然の姿で男に言う。
「は、はい、では!! しかしそれでは火傷のほう……は?」
服が焼けたのなら中の肌も火傷でただれているだろうと、その男は菜々ちんを観察するが、彼女の白い肌には火傷どころか傷一つない。
「……あまりジロジロ見てないで、さっさと仕事をしてくれますか」
「は? あ、はい、失礼致しました!!」
男たちは慌てて倒れている私を担ぎ上げた。
「うわ……なんだこの娘。ガリガリでミイラみたいだ……これでもまだ生きているのか?」
一人が私を見て気味悪そうに眉をしかめた。
「彼女が『宝塚女優』です。能力の使いすぎで衰弱していますから、丁寧に扱ってください。万が一のことがあったら片桐さんに四肢をもがれますよ?」
譲ってもらった上着を羽織りながら、脅し文句を言ってくれる菜々ちん。
「こ……これが、あの『不死身ダルマ』と呼ばれた宝塚ですか!?」
だれがダルマやねん!!
と、突っ込みたかったが悔しきかな……いまはそんな元気も余裕もない。
余計なことで体力を使い切る前に、私は菜々ちんに聞いておかねばならないことがあった。
「菜々……ちん」
精気が尽きかけ途切れそうな意識の中、私は一つだけ彼女に質問をした。
彼女は黙って私に視線を向ける。
「私……菜々ちんを……殺していいかな?」
「な……何を言っているこの娘!?」
私の挑戦的な言葉に男たちは目をむくが、しかし菜々ちんだけは無表情のまま目を逸らさないでいた。
それだけで私たちには充分だった。
そして私は戦闘態勢に入る。
「……ラミア、吸収よ。ここにいる全員の精気を根こそぎ奪い取りなさい!!」
「何っ!??」
――――ドゴッ!!!!
黄金のオーラ―を放出し、髪の毛を蛇に変えた私。
いきなりの変貌に男たちは慌てふためき、私を手放し、代わりにマシンガンを向けてくる。
しかし遅い。
――――ジャッ!!
彼らが引き金を引くよりも早く、蛇たちはその喉元にかぶりついた!!
「ぐあ…………あ、あ、あ、あ、あ……ぁぁ……」
精気を奪われ、力が急激に弱まっていく。
一瞬にして引き金を押し込む力さえも奪われた男は、とうとう銃を持っていることも出来なくなり、うずくまるように地面に倒れた。
他の二人も同様。
そして彼らから奪った精気で私は回復し、ゆらりと立ち上がった。
「……た、宝塚さん…………」
菜々ちんがよろめきつつ、苦しそうな表情で私を警戒していた。
能力を回復に切り替えたせいで蛇たちは消えてしまったが、それまでの間、彼女からも精気を吸収していた。
さすが雑魚よりは精気の貯蔵量が多いらしく、そう簡単には倒れない。
しかしそれも時間の問題。
もう勝負は決してしまっている。
「私を大人しくさせたかったのなら、迂闊に人を近づけないほうが良かったわね」
殺気のこもった目で彼女を睨みつけてやる。
菜々ちんは苦しそうにひざまずき、男たちが落とした銃を拾い上げる。
そして最後のあがきとばかりに私に向かって引き金を引いた。
――――ダラララララララララッ!!!!
無数の弾丸が私を襲う。
弾が食い込み、肉を削ぎ、血をまき散らすが術を回復に切り替えた私にはもはや銃器など効いて、効いていないようなもの。
無駄と悟った菜々ちんは、銃を放り投げ背中を向けて逃げ出すが、
――――がしっ!!!!
「逃さないわよ、菜々ちん」
その首を私は後ろから鷲掴みにした。
「ぐ……た、宝塚さん……や、やめて……!?」
「先生や百恵ちゃんを……仲間を殺そうとしておいて、いまさら何を勝手なことを!!」
問答無用。
私は彼女の首から直に精気を奪い取った!!
「が……あ……ああぁぁぁっ!!!!」
苦しみ、呻きとともに、枯れ始める菜々ちん。
肌は茶色く変色し、肉は削げ落ち、目も落ち窪んでくる。
早く、早く――――。
私は心の中で叫んでいた。
このままだと本当に菜々ちんを殺してしまう。
そうなる前に――――早く出てこい、マステマ!!!!
彼女はゆっくり起き上がると驚いたように私を見て、そして悲しそうな顔をした。
精気を使い果たし、干からびてしまった私にそっと手を触れ彼女はつぶやく。
「宝塚さん……なんて……馬鹿なことを…………私のことなんて放っておけば良かったのに……」
すごく、すごく悲しそうな顔をして私の頬を撫でる。
ポタリと暖かな感触がした。
彼女の落とした涙が、頬に落ちたのだ。
「菜々……ちん」
私は力を振り絞って彼女の顔を見返した。
しかしそこにあったのは、すでに冷酷な表情を取り戻した彼女の目。
菜々ちんはその目で私を見下ろしたまま、ゆっくりと立ち上がった。
焼けてボロボロになったセーラー服が風に飛ばされていく。
それを気にすることなく彼女は何かの合図のように手を空に振り上げた。
と、――――ザ、ザザザ。
建物の影から三人、戦闘服姿の男が現れた。
「お疲れ様です、菜々様。大西代表の命令で補充要員としてやってきました!!」
男の一人が胸に手を当て、敬礼まがいの仕草を見せる。
「……たったの三人? もう少し送ってくれると思いましたけれど?」
「は、最初は15名でしたが、謎の熱波により12名は戦闘不能になりました」
「…………そう。まあ、あの攻撃ならそれも仕方ないわね。百恵さんへの対処も含めてここは一旦撤退します。あなたたちは彼女を運んでくれますか?」
「は、し、しかし菜々様……そのお姿は?」
「焼かれたのよ。みっともないと思うのならあなたの上着を貸してください」
下着もほぼ焼け落ち、裸同然の姿で男に言う。
「は、はい、では!! しかしそれでは火傷のほう……は?」
服が焼けたのなら中の肌も火傷でただれているだろうと、その男は菜々ちんを観察するが、彼女の白い肌には火傷どころか傷一つない。
「……あまりジロジロ見てないで、さっさと仕事をしてくれますか」
「は? あ、はい、失礼致しました!!」
男たちは慌てて倒れている私を担ぎ上げた。
「うわ……なんだこの娘。ガリガリでミイラみたいだ……これでもまだ生きているのか?」
一人が私を見て気味悪そうに眉をしかめた。
「彼女が『宝塚女優』です。能力の使いすぎで衰弱していますから、丁寧に扱ってください。万が一のことがあったら片桐さんに四肢をもがれますよ?」
譲ってもらった上着を羽織りながら、脅し文句を言ってくれる菜々ちん。
「こ……これが、あの『不死身ダルマ』と呼ばれた宝塚ですか!?」
だれがダルマやねん!!
と、突っ込みたかったが悔しきかな……いまはそんな元気も余裕もない。
余計なことで体力を使い切る前に、私は菜々ちんに聞いておかねばならないことがあった。
「菜々……ちん」
精気が尽きかけ途切れそうな意識の中、私は一つだけ彼女に質問をした。
彼女は黙って私に視線を向ける。
「私……菜々ちんを……殺していいかな?」
「な……何を言っているこの娘!?」
私の挑戦的な言葉に男たちは目をむくが、しかし菜々ちんだけは無表情のまま目を逸らさないでいた。
それだけで私たちには充分だった。
そして私は戦闘態勢に入る。
「……ラミア、吸収よ。ここにいる全員の精気を根こそぎ奪い取りなさい!!」
「何っ!??」
――――ドゴッ!!!!
黄金のオーラ―を放出し、髪の毛を蛇に変えた私。
いきなりの変貌に男たちは慌てふためき、私を手放し、代わりにマシンガンを向けてくる。
しかし遅い。
――――ジャッ!!
彼らが引き金を引くよりも早く、蛇たちはその喉元にかぶりついた!!
「ぐあ…………あ、あ、あ、あ、あ……ぁぁ……」
精気を奪われ、力が急激に弱まっていく。
一瞬にして引き金を押し込む力さえも奪われた男は、とうとう銃を持っていることも出来なくなり、うずくまるように地面に倒れた。
他の二人も同様。
そして彼らから奪った精気で私は回復し、ゆらりと立ち上がった。
「……た、宝塚さん…………」
菜々ちんがよろめきつつ、苦しそうな表情で私を警戒していた。
能力を回復に切り替えたせいで蛇たちは消えてしまったが、それまでの間、彼女からも精気を吸収していた。
さすが雑魚よりは精気の貯蔵量が多いらしく、そう簡単には倒れない。
しかしそれも時間の問題。
もう勝負は決してしまっている。
「私を大人しくさせたかったのなら、迂闊に人を近づけないほうが良かったわね」
殺気のこもった目で彼女を睨みつけてやる。
菜々ちんは苦しそうにひざまずき、男たちが落とした銃を拾い上げる。
そして最後のあがきとばかりに私に向かって引き金を引いた。
――――ダラララララララララッ!!!!
無数の弾丸が私を襲う。
弾が食い込み、肉を削ぎ、血をまき散らすが術を回復に切り替えた私にはもはや銃器など効いて、効いていないようなもの。
無駄と悟った菜々ちんは、銃を放り投げ背中を向けて逃げ出すが、
――――がしっ!!!!
「逃さないわよ、菜々ちん」
その首を私は後ろから鷲掴みにした。
「ぐ……た、宝塚さん……や、やめて……!?」
「先生や百恵ちゃんを……仲間を殺そうとしておいて、いまさら何を勝手なことを!!」
問答無用。
私は彼女の首から直に精気を奪い取った!!
「が……あ……ああぁぁぁっ!!!!」
苦しみ、呻きとともに、枯れ始める菜々ちん。
肌は茶色く変色し、肉は削げ落ち、目も落ち窪んでくる。
早く、早く――――。
私は心の中で叫んでいた。
このままだと本当に菜々ちんを殺してしまう。
そうなる前に――――早く出てこい、マステマ!!!!
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