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第246話 捕縛作戦⑱
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「ど、どこに潜んでいるんじゃ貴様はーーーーーーーーーーっ!!!!」
バキバキバキッ――――バッキャァァァァァァァァァァンッ!!!!
叫びと同時に百恵を覆っていた氷が弾け飛んだ!!
「――――っ!??」
意味がわからず目を見開く椿。
その向こうにいる大西も面食らっていた。
百恵と銀野のやり取りなど二人には聞こえていない。
凍りかけていた標的が突然わけのわからぬ叫びを上げて復活したのだ、理解など出来ないだろう。
百恵の身体はかつてないほどの強力な結界が張られている。
それが椿の能力を全て弾き返したのだ。
自由になった身体を動かし、百恵自身もその威力に驚いている。
『……これは……この力は?』
『拙者の精神エネルギーでござるよ。説明はさっき聞いていたでござろう? さあ反撃するでござる!!』
『……――――了解じゃ!!』
実際に体験してわかった。
銀野正文の圧倒的な能力レベルを。
悔しいが自分よりも遥かに格上だった。
人格はともかく、さすがに筆頭監視官を名乗るだけはある。
そしていま、その力を自分に貸してくれている。
かつて経験したことがないほどの力のみなぎりを感じ、百恵は能力を発動させる。
「――――っ!?」
マズイ雰囲気を読み取り、椿が足場の氷柱から飛び降りる。
落下しながら雪の神を呼びだす。
――――パキンッ!! バキバキバキバキバキッ!!
雪の神が息を吐くと、瞬時に空気が凍り、地上までの天然スロラームを作り出す。
それに乗って滑り降りていく椿。
さらに雪の神は能力を放つ。
大きく両腕を開けると上空の空気が円に凍り付き、そして影に包まれる。
現れたのはやはりあの巨大雹。
その数、今度は20塊!!
――――ゴッ!!
間髪入れず落ちてくる。
その範囲は百恵の回避範囲を超え、間合い的には回避不可能なタイミング。
『百恵殿!!』
銀野がひっ迫した声を上げるが、百恵は逆に薄く笑っていた。
そんなもの、物の数ではないと言わんばかりに。
そして呼びだす――――新たなファントム。
「滅せよガルーダ――――いや、『火の鳥』よっ!!!!」
百恵の声に、大きく翼を広げて羽ばたく霊鳥《ケツァール》。
燃え盛る炎で形作られたそれは、長く美しい尾をたなびかせ神秘的に空を紅に染めた。
『な、なんと!! 百恵殿、そのファントムは!??』
『進化した我がガルーダの新しき姿よ!! そしてその能力は――――』
宿主たる百恵には使わずとも本能でわかっていた。
コイツが何をできるのかを。
『滅せよ』の言葉を受け、火の鳥から放たれたのは、
――――ブワァァァァァァァァァァッ!!!!
無数の歪んだ空間。
それが落下してくる巨大雹との間に埋め尽くされる。
一見するとガルーダの圧縮空気のように見えるが、巨大雹とそが重なった瞬間、
――――カッ!! ドゴァァァァァァァァァッンンッ!!!!
大爆発が巻き起こった!!
それは圧縮空気のそれではなく、極高温の炎を吹き出す純粋なる爆炎!!
その炎に、まるで吸い込まれるように巨大雹が溶けて消えていく!!
『な、な、な、な、なんでござるか、その爆炎は!! こっちまで熱っちちちちちちちちちちちちちちちちちっ!!!!』
その炎は巨大雹だけでは収まらず、辺り一面を照らし強すぎる高温で熱していく。
術者の百恵以外がそのエネルギーに当てられ、氷は溶け、鉄は曲がり、地面は干からびていく。
わけがわからず、しかし堪らず、銀野はビルの奥に引っ込んで苦情の念話を飛ばす!!
『も、もももも、も百恵殿!! いいい、いったんその能力を閉じてくだされ!! でないと拙者、本気で肉饅頭になってしまうでござるよ!!』
急速に溶けていく氷の足場に乗っかって、地面へと降り立つ百恵。
自分にはその熱が伝わらないからピンと来なかったが、氷の溶け具合で銀野の苦痛をだいたい理解し、火の鳥を引っ込めた。
『力を貸した拙者が言うのも何でござるが、そ、そ、そ、その化け物じみた炎は何なんでござる!?? だだの爆炎の熱ではないでござるよ!???』
『まぁ、そうじゃの。吾輩もいまいち信じられんが……しかし自分の能力じゃから直感でわかる。これはただの炎ではないな』
『ど、ど、ど、どういう炎でござるのか!??』
どう能力が進化したとしても百恵の能力はあくまで『アポート』
すなわち、どこかから物質を手元に転移させる能力である。
ならばいまの炎もどこかから持ってきたと言うことになるが、いったいどこから?
ただの熱量ではなかった、となれば火力発電所?
いや、違う。まだまだそんなレベルのエネルギーじゃなかった。あれはもっと巨大で圧倒的な存在の一端――――。
そう銀野が考えたとき。
――――スッ。
と、百恵の指が上に掲げられた。
そして事も無げに彼女は言う。
『太陽じゃ』
と。
それを聞いた銀野は戦慄に震えた。
炎の正体にではない。
いや、それにも充分驚いたが、それ以上に。
『ふん。……しかしこれは威力がありすぎるか? 力を抑えて戦わんと、街を燃やし尽くしてしまいそうじゃの』
文字通り、天にも届くポテンシャルを秘めた百恵に、である。
バキバキバキッ――――バッキャァァァァァァァァァァンッ!!!!
叫びと同時に百恵を覆っていた氷が弾け飛んだ!!
「――――っ!??」
意味がわからず目を見開く椿。
その向こうにいる大西も面食らっていた。
百恵と銀野のやり取りなど二人には聞こえていない。
凍りかけていた標的が突然わけのわからぬ叫びを上げて復活したのだ、理解など出来ないだろう。
百恵の身体はかつてないほどの強力な結界が張られている。
それが椿の能力を全て弾き返したのだ。
自由になった身体を動かし、百恵自身もその威力に驚いている。
『……これは……この力は?』
『拙者の精神エネルギーでござるよ。説明はさっき聞いていたでござろう? さあ反撃するでござる!!』
『……――――了解じゃ!!』
実際に体験してわかった。
銀野正文の圧倒的な能力レベルを。
悔しいが自分よりも遥かに格上だった。
人格はともかく、さすがに筆頭監視官を名乗るだけはある。
そしていま、その力を自分に貸してくれている。
かつて経験したことがないほどの力のみなぎりを感じ、百恵は能力を発動させる。
「――――っ!?」
マズイ雰囲気を読み取り、椿が足場の氷柱から飛び降りる。
落下しながら雪の神を呼びだす。
――――パキンッ!! バキバキバキバキバキッ!!
雪の神が息を吐くと、瞬時に空気が凍り、地上までの天然スロラームを作り出す。
それに乗って滑り降りていく椿。
さらに雪の神は能力を放つ。
大きく両腕を開けると上空の空気が円に凍り付き、そして影に包まれる。
現れたのはやはりあの巨大雹。
その数、今度は20塊!!
――――ゴッ!!
間髪入れず落ちてくる。
その範囲は百恵の回避範囲を超え、間合い的には回避不可能なタイミング。
『百恵殿!!』
銀野がひっ迫した声を上げるが、百恵は逆に薄く笑っていた。
そんなもの、物の数ではないと言わんばかりに。
そして呼びだす――――新たなファントム。
「滅せよガルーダ――――いや、『火の鳥』よっ!!!!」
百恵の声に、大きく翼を広げて羽ばたく霊鳥《ケツァール》。
燃え盛る炎で形作られたそれは、長く美しい尾をたなびかせ神秘的に空を紅に染めた。
『な、なんと!! 百恵殿、そのファントムは!??』
『進化した我がガルーダの新しき姿よ!! そしてその能力は――――』
宿主たる百恵には使わずとも本能でわかっていた。
コイツが何をできるのかを。
『滅せよ』の言葉を受け、火の鳥から放たれたのは、
――――ブワァァァァァァァァァァッ!!!!
無数の歪んだ空間。
それが落下してくる巨大雹との間に埋め尽くされる。
一見するとガルーダの圧縮空気のように見えるが、巨大雹とそが重なった瞬間、
――――カッ!! ドゴァァァァァァァァァッンンッ!!!!
大爆発が巻き起こった!!
それは圧縮空気のそれではなく、極高温の炎を吹き出す純粋なる爆炎!!
その炎に、まるで吸い込まれるように巨大雹が溶けて消えていく!!
『な、な、な、な、なんでござるか、その爆炎は!! こっちまで熱っちちちちちちちちちちちちちちちちちっ!!!!』
その炎は巨大雹だけでは収まらず、辺り一面を照らし強すぎる高温で熱していく。
術者の百恵以外がそのエネルギーに当てられ、氷は溶け、鉄は曲がり、地面は干からびていく。
わけがわからず、しかし堪らず、銀野はビルの奥に引っ込んで苦情の念話を飛ばす!!
『も、もももも、も百恵殿!! いいい、いったんその能力を閉じてくだされ!! でないと拙者、本気で肉饅頭になってしまうでござるよ!!』
急速に溶けていく氷の足場に乗っかって、地面へと降り立つ百恵。
自分にはその熱が伝わらないからピンと来なかったが、氷の溶け具合で銀野の苦痛をだいたい理解し、火の鳥を引っ込めた。
『力を貸した拙者が言うのも何でござるが、そ、そ、そ、その化け物じみた炎は何なんでござる!?? だだの爆炎の熱ではないでござるよ!???』
『まぁ、そうじゃの。吾輩もいまいち信じられんが……しかし自分の能力じゃから直感でわかる。これはただの炎ではないな』
『ど、ど、ど、どういう炎でござるのか!??』
どう能力が進化したとしても百恵の能力はあくまで『アポート』
すなわち、どこかから物質を手元に転移させる能力である。
ならばいまの炎もどこかから持ってきたと言うことになるが、いったいどこから?
ただの熱量ではなかった、となれば火力発電所?
いや、違う。まだまだそんなレベルのエネルギーじゃなかった。あれはもっと巨大で圧倒的な存在の一端――――。
そう銀野が考えたとき。
――――スッ。
と、百恵の指が上に掲げられた。
そして事も無げに彼女は言う。
『太陽じゃ』
と。
それを聞いた銀野は戦慄に震えた。
炎の正体にではない。
いや、それにも充分驚いたが、それ以上に。
『ふん。……しかしこれは威力がありすぎるか? 力を抑えて戦わんと、街を燃やし尽くしてしまいそうじゃの』
文字通り、天にも届くポテンシャルを秘めた百恵に、である。
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