超能力者の私生活

盛り塩

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第235話 捕縛作戦⑦

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「結界術っ!!!!」

 叫びと同時に身体が青の光に包まれる。
 女将直伝の結界の鎧だ。

「えっ!?」
 
 いきなりの戦闘態勢に、さすがに意表をつかれた顔をする菜々ちん。

「悪いけど、さらって行くから!!」

 これは菜々ちんに言ったんじゃない。
 その向こうにいる所長に言ったのだ。

「――――く、お前なにをっ!!」

 ――――ダララララララララッ!!!!
 車に乗っている部下その①が私に向けてマシンガンを撃ってくる。
 
 だが、
 ――――ギギギギギギギギンッ!!!!
 今更そんなものでは私の結界術は貫けない!!

 全弾弾き返し、そちらには構わず菜々ちんに掴みかかっていく。
 掴んで、中にいるはずのマステマを引きずり出す!!

 そしてアンテナとしての機能を断ってしまえば、その後、私たちが何を話そうが向こうに伝わる事はない。
 何はともかくマステマを処分しなければならない!!
 私の手が菜々ちんの腕に触れかけたそのとき――――、

「お~けい、粉微塵にしてやんよ~~へひゃひゃひゃひゃっ!!!!」

 もう一人の男、部下その②が車の影からバズーカを構えて飛び出してきた。

「――――っ!??」

 ヘリを破壊したさっきの大砲か!?
 銀野筆頭は止めてみせたが、いまの私には――――たぶんまだ無理!!

 瞬時にそれを判断し、菜々ちんを諦め逆側に回避スウェーする。

 ――――ドシュッ!!!!
 その私をかすめるように火を吹く弾が飛んでいった!!!!

 ――――シューーーーーーゴガァァァァァァンッ!!!!

 ホップ気味に飛んでいった弾は後ろのビルに直撃し、跳ね返りの破片と土煙が上から降り掛かってくる。
 地面に転がった私が起き上がるよりも早く、

 ――――ギャギャギャギャ!!!!

 菜々ちんのバイクがホイルスピンし、MAXターンを決める。
 そして――――、

「悪いけど宝塚さん、私はまだあなたと戦うつもりはありませんから」

 背中越しにそう言うと、アクセルを回し急発進した!!

「待ってっ!!」

 ――――ブォンッ!!

 彼女を止めるべく結界術を解き、頭髪を蛇に変化させる。
 乱暴だが、この子たちを噛みつかせて精気を奪えばバイクなど運転出来まい。
 倒れて大怪我するかも知れないが、その時は大丈夫、私が治す。
 そう計算して蛇を放とうとしたそのとき、

「椿!! 宝塚さんを止めなさい!!」
 菜々ちんが叫んだ!!

 とたんに――――ゾワッ!!!!

 背後から威圧的なオーラが放たれたかと思うと、椿と呼ばれた氷の少女の目が急に見開かれ、そして能力が放たれた!!

 ――――パキッ、パキパキパキパキッ!!!!

 彼女が息を吐くとそこから地面が凍り、伸びた氷柱が巨大な針となって私に襲い来る!!

 慌てて蛇を収める。
 そして結界を張り防御を固めようとするが、切り替えが間に合わない。

「――――くっ!! 銀野筆頭!!」

 私は銀野筆頭に援護を求めた。
 彼女との戦闘になったら筆頭がその能力をかき乱してくれるはず!!

 ――――ババッ、バリバリバリバリバリッ!!!!

 手はず通り、椿の結界が激しい反応を示した。
 筆頭の念話が彼女の思考を邪魔した証拠だ。
 彼女が生み出した氷の氷柱が割れて崩れ落ちた。
 作戦とは少し違ったが、これはこれで良し。まずはこの子を無力化させる!! 

 私は能力を回復に切り替えて、痙攣する彼女へと走り飛びかかる。
 黒ずくめの二人はそんな私を攻撃せず、椿を置き去り、車を急発進させこの場を離れた。
 それを横目で確認し、椿の腕を掴む。

「よし!! ラミア回復術!!」
『きゅるうぅ!!』

 彼女の存在値を元に戻し、強制的にマステマをはじき出す!!
 能力を腕に込めたそのとき――――、

 ――――バキイィィィィィンッ!!!!

 視界が一瞬にして凍りついた!!

(――――あれ!? 体が……動かない!? 瞬きすら出来ない!???)

 何が起きたのか理解出来なかった。
 続けて襲ってくる、身を刺すような冷たさにようやく自分が氷漬けになっていることに気がついた。

(え?? ――――な……なんで!? 椿の能力は筆頭が無効化してくれたはず!??)

 私の疑問に答えるように、頭に念話が響いてきた。

『やあ、宝塚くん。僕だよ、大西だよ。ご機嫌いかがかな?』

(念話!?? ど、どうして!?? マステマは筆頭が麻痺させているはず??)

『何のことを言っているのかな?』

(椿の集中を念話の強制介入で乱しているはずよ!! だから取り憑いているマステマも自由には動けないはずじゃ!??)
『んふふふふ。銀野君の能力だね? そうだね、彼ならば僕と同じ戦法で能力者を無効化出来るよね。彼を見た瞬間そうしてくるだろうと思ったよ。……でも、残念だったね、彼女――――椿くんの心はすでに壊してあるんだよ。そんなモノにいくらちょっかいをかけても無駄だと思うよぅ』

(なっ!??)

『壊れた心の彼女はもう自分から精神力を生み出すことも出来ないし、そんな依代じゃいくらファントムが支配権を乗っ取ろうが、暴走なんて出来やしない。つまりこの子はもう壊れた人形なのさ。面白いだろう?』

(そんな……でも――――!?)

『そんな壊れた人形でも、マステマから精気を供給してやれば案外動くものなんだよ? もちろんそれは僕の精気だから、彼女のファントムは僕の命令に従う。これまでは無闇に暴走するベヒモスしか作り出せなかったが、この方法だと暴走しながらも、精気をエサに使役することが出来るんだ。どうだい僕って頭いいだろう?』

 頭の悪い私には状況が半分くらいしか理解出来ないが……?

『はっはっは、だろうね。まぁ、ようするに無闇な暴走などせず、従順に命令を聞く新たなベヒモスが誕生したと思ってくれたまえよ』

 つまり……すでに精神を壊されている彼女には念話による妨害は効かない、って言うか、意味がない。そしてそのファントムの支配権はマステマが握っていて、彼女の能力を止めるにはマステマを攻撃しないとダメということか??

 いま私を氷漬けにしているのも、その力の源も――――全てマステマから提供された意志とエネルギー。

 氷室 椿――――彼女は本当に……所長の操り人形でしかないと言うことか。
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