超能力者の私生活

盛り塩

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第234話 捕縛作戦⑥

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 いきなりぶち込まれたバズーカ砲。
 まさかの洗礼に度肝を抜かされたが、それを結界一つで防ぎ切った銀野筆頭のパワーにも驚かされた。

 操縦士の女性は気を失ってしまったが、外傷はとくに無い。

 たぶん撃ち込まれた恐怖とショックで失神してしまったんだろう。
 ヘリは半壊し全焼してしまっている。

「だだだ、大丈夫でござるか、宝塚殿??」
「はい。……何とか。いきなり撃ってきたんでびっくりしましたけど……」
「ぼぼぼ、僕も驚きました。おおおかげで、人を守るので精一杯で……へりを犠牲にしてしまいました、も、も、も申し訳ござらん……」

 いや、充分な働きでしょ。
 ……この肉饅頭、やはり筆頭監視官は名ばかりではなかったようだ。

 撃ったのは菜々ちんの護衛らしき男の片割れ。
 菜々ちんは私たちのほうを見ながらため息を吐いている。
 菜々ちんと私たちの間には氷の空間があって、その中心に例の女の子がゆらゆらと意識無く立っていた。

「ごめんなさいね宝塚さん!! いまのはちょっとした誤射なの!!」

 遠くからかっこいいバイクにまたがった菜々ちんがそう叫んでくる。

 バカ野郎、誤射で済ませられるかぁ!! と叫び返したかったが、見ていた限り本当に彼女の意志では無さそうなので勘弁しておく。

 それよりもまた再会できたことのほうが嬉しかった。

 画像の少女とともに菜々ちんがこの場にいるのは事前に予想が出来ていた。
 マステマの遠隔操作には彼女が欠かせないからだ。
 私の本当の目的は彼女と再開し、連れ戻すこと。
 私にとって銀野筆頭の依頼はそのついでみたいなものだ。

「久しぶり菜々ちん!! 会えて嬉しい!! 話があるの、そっちに行っていい!??」

 そう叫び返すと彼女は少し考えた後、

「いいわ、私も話したいことがありますし!! 宝塚さん一人でこっちへ来てくれますか?」

 と返事が来た。

 私一人で?
 もしかして筆頭を警戒しているのだろうか?
 まぁ、ロケット砲の一撃を防ぐほどの能力者だし、それも無理はないか。

「宝塚殿、今回の目的は氷の少女の調査でござるぞ。余計な行動は危険でござる」
「……大丈夫。彼女は私の親友だから。向こう側についているのもきっと何か理由があるのよ。それを探ってくる。上手く戻ってきてくれれば向こうの戦力を大幅に削ることが出来るでしょ?」
「……それは、まあそうでござるが、しかし……」
「ごめんなさいですけど、菜々ちんを放ってこのまま帰る選択肢なんて無いの」
「……わかったでござる。充分に気をつけるでござるぞ?」

 そんな筆頭の言葉を背に、私は操縦士のお姉さんを彼に預け、菜々ちんの元へと歩いていった。

 氷の少女が、近づいてくる私を虚ろな目で追っている。

 ……この子が新しいベヒモスか。
 なんだか人形のような雰囲気を感じる。
 意識を感じないというか、中身が空っぽのようなイメージだ。
 彼女からすれば得体の知れない能力者のであるはずの私が近寄っても、目線以外動かそうとしない。

 このまま無防備な彼女に襲いかかり、回復術をかければ、案外たやすく捕らえることが出来そうだが、それをすると菜々ちんとの信頼が壊れかねない。
 いまはとにかく菜々ちんが所長たちに従わされている理由を聞き出し、その呪縛から開放してやるのが先決。

 だから私は何をすることもなく、氷の少女の側を通り過ぎた。

「……そこで止まって下さい」

 過ぎてしばらく歩いたところで、菜々ちんが私の歩みを止めた。
 そして尋ねてきた。

「……どうしてここにやって来たんですか?」

 私は素直に話すことにした。

「任務で。そして菜々ちんに合うために」
「裏切り者の私を倒しに来たの?」
「裏切り?」
「はい。私は先生と百恵さんを撃ちました。……その報復をしに来たんじゃないんですか?」

 菜々ちんの護衛らしき二人の黒ずくめは私に銃を向け警戒しているが、菜々ちんは丸腰のままバイクにまたがっている。
 その目は私を敵視しているようだが、しかしどこか演技じみていて、本気で私とやり合うつもりはないと見て取れる。

「菜々ちんは裏切っているフリをしているだけだよね?」

 まだるっこしいのは嫌いだ。いきなり本題を聞いてみる。

「フリ? 何を根拠に言っているんですか?」
「死ぬ子先生と百恵ちゃんは生きているよ。料理長が蘇生してくれた」

 その言葉に彼女は一瞬だけ、安心した顔をした。

 それで私は全ての状況を理解した。

 やはり菜々ちんは私たちの敵じゃない。
 何かの理由があって所長たちの下についているのだ。
 そしてアンテナ役の彼女もまたマステマの支配下にあって、おそらくその感覚は所長に筒抜けになっているはず。

 同じ念話能力者である銀野筆頭の推測通りの状況だと思う。

 なので菜々ちんは私たちに対して迂闊な行動は取れない。
 裏切っていないなどと言えば、それはそのまま所長たちへの裏切り宣言になるからだ。
 彼女がどんな事情を抱えているかわからない以上、それを言わせるわけにはいかない。しかし彼女をこのまま所長たちの下に置いておくつもりもない。
 ならば私のやることは一つである。

 菜々ちんを敵として倒し、無理やり所長の支配下から奪い去るのみ!!

「……ラミア戦闘態勢よ」
『きゅうぃっ!!』

 心が繋がっているラミアは私の考えを即座に理解して、すぐに術を練ってくれた。
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