超能力者の私生活

盛り塩

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第210話 呼び出しの理由①

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 強烈なキャラに怯えて戦闘態勢に入った百恵ちゃん。
 そんな彼女を必死に押さえつけ、私は女将に事情を尋ねた。

「で、女将……こらちょっと暴れるな百恵ちゃん!! ……どうして私たちが――――どうどうどう、怖くない怖くないよ~~、呼ばれたんですか? いたたたたっ!! 噛むな噛むなっ!!」

 何とか抑え込みつつ、その隙に瀬戸さんに腕挫十字固をかけてもらい、静かになった百恵ちゃんを横目に、女将は汗を拭いつつ説明をしてくれる。

「……異端者『大西健吾』とその一派についての本部からの対策説明と、私たち訓練所主要メンバーの検閲の為にいらしたらしいよ」
「検閲!?」

 タップする百恵ちゃんを無視し、瀬戸さんが眉をひそめた。

「検閲って……私たち、何か調べられるんですか!?」

 宇恵ちゃんも不快さをあらわにして、汗ばむ筆頭監視官を睨む。
 それに返事を返したのは、不機嫌そうにお茶を啜って正座している死ぬ子先生だった。

「……今回のぉ~~……騒ぎでぇ、所長にぃぃぃ……ついていった人間って結構いるわけよぉ~~……。でぇ、本部はぁ~~……まぁだ、この訓練所にぃ……離反者がぁ潜んでいる可能性があるってぇぇぇ……調べたいって~~言うのぉぉぉぉぉ……」
「離反者って……吾輩たちの中に裏切り者がまだいるとでも言うのか!!」

 絞められ足をバタバタ藻掻かせながら百恵ちゃんはそれでもその言い分に腹を立て、声を荒らげた。
 それに対し筆頭監視官は誤解を解くように手をパタパタ、説明する。

「いいいいい、いえいえそんな、ううう裏切りものだなどと……。た、た、た、ただあくまで可能性の問題として、けっけっけ形式的な検査をさせて頂きたくくくく~~~~~~くくうふふふふじゅるる……」

 藻掻く百恵ちゃんのワンピースから、ときおり垣間見えるおパンツ。
 それを凝視しながら、筆頭監視官を名乗る変質者は薄気味悪い笑いをあげる。

 ――――どすんっ!!

「うげぇっ!??」
「どうします、通報しますか?」

 すかさず百恵ちゃんの上に飛び乗り、そのおパンティを豊満な体で覆い隠しながら私は料理長に指示を仰ぐ。

「……そうだねぇ、全員でかかれば何とかなるかもねぇ」

 料理長の体からもバチバチと火花が上がるが、

「あ~~もう、お前たち静かにおしっ!!」

 再び女将が畳を鳴らした。
 喝を入れられ、静まる私たち。

「この方はね、JPA全監視官のトップに立つ偉いお方なんだよ!! ちょっと気持ち悪いとか生理的に無理だとか、変態犯罪者予備軍だとか、思っていても顔に出すんじゃないよ、それが礼節ってもんだよ!!」
「はい……」

 お叱りを受けてしゅんとする私たちと、なぜか泣いている筆頭管理官。

「トップ……と言うことはこの変たぃ……いえ、お方は死ぬ子先生よりも偉いんですか?」

 ひそひそと先生に訊いてみる。

「……そうよ、直属じゃないけど私の上司になるわね」
「……まぁ……組織図的にはそうなるかな」

 先生に続き、料理長まで口いっぱいの苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
 やっぱりそうなのか……筆頭と言うからにはそうなんだろうとは思っていたけど……しかし本人を見るととてもそうは思えない。

「もしかして……この変た……いえ筆頭さんは戦闘能力的にも……先生たちより強いとか……?」
「…………あん?」

 私の素直な質問に、料理長が苛立ちを隠さず睨みつけてきた。
 ――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと、背中にオーラが見える。

 ひえぇぇぇぇぇぇぇ……。

 その鬼のような迫力に怯え、後ずさる私。
 と、そのヒソヒソ話しが聞こえていたか、筆頭さんが慌てて弁解してきた。

「いいいいいいやいや、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、僕なんて戦う力はてんでありませんよ。ぼぼぼ僕の能力はせせせ、せ戦闘向きじゃないででですから」
「……まぁ戦闘能力だけが監視感になる条件じゃないからね」

 女将が言う。
 そりゃそうだ、死ぬ子先生も本来戦闘系能力者じゃないのだから。ってことはこの人も先生と同じで情報系の能力を使うのだろうか。

「そっそそそそそれでですね、はなはな話を戻させて貰いますが……今回の一件で我々JPAは多大な人的被害を出してしまいました。ななな亡くなられた者たちもそうですが、おおお大西前所長によって洗脳され、離反していった者も多いです。その中の一部は大西前所長の能力『マステマ』によって強制的に操られ、従っている者もいると確認されました」

「菜々ちん……」
 その言葉に、私は菜々ちんの顔を思い浮かべ胸を締め付けられる。
 いまごろ……彼女はどうしているのだろう……。

「さ、さささ……最恩菜々氏の事も、ほほほ報告に聞いております。非常に痛ましいことですが、いいい今はその事よりもまままず身内の検査を優先しなければななななりません……」
「だからそれがなんの調査だというのじゃ!!」

 回りくどい話に業を煮やした百恵ちゃんがイライラしながらそう尋ねた。
 聞かれた筆頭はちょっと嬉しそうに鼻の下をのばす。

「ぐふふ、ままま、マステマによる憑依の有無を調べるのです」
「――――憑依?」

 私と宇恵ちゃんが顔を見合わせ、眉をすぼめる。

「おおお、大西前所長はこここ狡猾な人物でしたから……逃走したと見せかけて、こここここにスパイを残していっている可能性かああああります。わとぁとぁとぁとぁ私……いやぼぼぼくは、それうぉ調べにきたのです……ふうふう……」

「……この中に……所長の手先がまだ、潜んでいるとでも言いたいのか!?」

 喋り疲れて息を切らしている筆頭を、百恵ちゃんはますます怒りの形相を深くして睨みつけた。
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