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第194話 一人戦う⑬
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――――まずいっ!???
本能的に危険を察知する。
彼女に触れたとたん消えた右腕。
新たな能力の気配を感じ、私は咄嗟に回避行動を取る!!
「――――くぁっ!!!!」
思いっきり体をよじって突進を避ける。
とにかく彼女に触れてはいけない!!
――ぼしゅっ!!
避けきらなかった肩の肉が削られた!!
「ぐっ!!!!」
――――ざざざしゃっ!!!!
頭から地面に倒れ込む。
消された右腕と肩から血が吹き出し、地面を染める。
ザザッ!!
止まった片桐さんは殺気に満ちた目で私を睨んできた。
そしてその背に浮かぶ新たな影――――。
それは全身に白い西洋鎧を着込んだ女騎士。
鎧と同じく白い兜を被っていて顔は見えないが、その雰囲気はさっきまでの戦乙女とはまるで別物のプレッシャーを放っていた。
「戦女神オーディン……」
所長がほれぼれとした顔で呟く。
「戦乙女《ワルキューレ》の進化系……オーディン。ああ~~……いいねぇ~~久々に見せてもらったよ。彼女の能力はやはり『アスポート』だ。しかし戦乙女《ワルキューレ》のように攻撃するだけのものじゃない。オーディンは――――アスポートを、その身を護る鎧とする」
……な、なんだと!??
彼女の身体に月の光が当たり七色反射した。
それは彼女の身体全部を隅々まで包んでいた。
その光全部がアスポート……?
それを鎧にしているだと??
触れた物みな消し飛ばす鎧――――おいおい笑えないぞ!??
所長が『さあ、どうする?』とばかりに嘲笑った。
「今の彼女は攻撃・防御両面でほぼ無敵状態だ。ふ、ふふふ……さて、そんな彼女をキミはどうやって攻略してくれる?」
もっと楽しませろとばかりに所長は私に情報をくれる。
絶対に負けない自信があるからなのだろうが、しかし……確かにこれはヤバイ。
花を食べたマ◯オに相対する亀ってこんな気持なのかなと、思わず思ってしまう。
触れることが出来なくなったということは、もうさっきの戦法は使えないということ……。せっかく起死回生の逆転が出来たと思ったのに、これでまた打つ手が無くなった。
「ラミアっ!!」
『ぎゅぅぅっ!!』
黄金の蛇を出現させる。
こいつを噛みつかせて何とか消耗させてみる!!
無限色に輝くその鎧に向かって無数の蛇を飛ばした!!
しかし―――、
ぶをぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
彼女が軽く腕を振るだけで、その倍以上の数のアポートが出現した。
――――くそっ!! そっちの性能も強化されてるんかい!?
――――ゴッ!!
そして一斉に向かって来るアポートの群れ!!
「くっ!! ラミアッ!!」
それらを迎撃するためにさらに蛇を作り出す。
――――ばぼひゅひゅひゅひゅっ!!!!
アスポートと蛇が噛み殺し合う。
当たり一面の空間がその衝撃に歪む。
そしてその歪みに紛れてまたもや片桐さんが突進してきた!!
「くっ――――!!」
大量に出し切ったばかりで、それに対抗するだけの蛇が作り出せない!!
ベヒモス化した彼女の瞬発力は、避けようとする私の動きよりも圧倒的に早く、
――――ザシュッゥゥゥゥッ!!!!
体を突き破ってきた!!
「――――かはっ!!」
口から空気が漏れる。
縦に回転した私の視界に、同じく回転して宙を舞っている下半身が入る。
全身アスポートと化した彼女の体当たりで、私の身体は胴から真っ二つにされていた!!
――――どんっ、ゴロゴロ――。
地面に叩きつけられ転がる私。
ちぎられた下半身も同じく落ちる。
私の上半身は胸から下が無くなって、下半身も股間から上が無くなっていた。
胴と下腹部は消滅させられていた。
「……あ~~~~ぁ……惨たらしいねぇ……愛しの宝塚くんが、僕は悲しいよ?」
徳利を直のみしながら所長が嘆く。目が笑っている。
「……………………」
菜々ちんは無言で見ている。
しかしその顔は苦々しく歪んでいた。
洗脳対象としての仲間のフリだったが、しかし彼女なりに情を感じていてくれたのかも知れない。
私も……ここまでされているというのに菜々ちんを恨むような気持ちは不思議と出てこなかった。
先生と百恵ちゃんが殺されてるのに……なに甘いこと言ってるんだと思うが。
でも、彼女の目を見ていると、どうしてもまだ仲間のように思えてしまう。
理由はわからないけど……私はまだ菜々ちんのことが好きだった。
「が――――がはっ!!」
『ふん……ががこけ……あ、あっけない……くこか―――わね』
暴走の影響でロレツの回っていない片桐さんが、それでも薄笑いを浮かべて私を見下ろしてきた。
そして七色の膜を解いた腕で私の髪の毛を掴むと、目の高さまで持ち上げる。
「……最後の……ぐくぽきゃ――――勧告よ……。 私に……ごごきぃ……従うと誓えば――――がごごががが……殺さないで……あげるわ」
薄れる意識の中で考える。
私の状態は即死レベル。
残っている精気全てを使って何とか命を繋ぎ止めれるかどうか。
もう戦いとか言っている場合じゃない。
彼女の力はやっぱり圧倒的だ。
近づいても離れても……ほぼ回避不可能な攻撃が襲ってくる。
こんな化け物どうやって勝てばいい?
一つだけ。
一つだけその答えがあった。
それはさっき思いついた賭け。
やっぱり私に残された手はもうそれしかない。
「ラミア……」
私はラミアに命じる。
その呼びかけにラミアは黙ってうなずく。
彼女は私が何を言おうとしているのかわかっているようだ。
さすが私のパートナー。
ならば信じる。
あなたのことを。
信じてあなたに運命を託そう。
決心して私は命令する!!
「ラミア――――私を喰らいなさい!!」
本能的に危険を察知する。
彼女に触れたとたん消えた右腕。
新たな能力の気配を感じ、私は咄嗟に回避行動を取る!!
「――――くぁっ!!!!」
思いっきり体をよじって突進を避ける。
とにかく彼女に触れてはいけない!!
――ぼしゅっ!!
避けきらなかった肩の肉が削られた!!
「ぐっ!!!!」
――――ざざざしゃっ!!!!
頭から地面に倒れ込む。
消された右腕と肩から血が吹き出し、地面を染める。
ザザッ!!
止まった片桐さんは殺気に満ちた目で私を睨んできた。
そしてその背に浮かぶ新たな影――――。
それは全身に白い西洋鎧を着込んだ女騎士。
鎧と同じく白い兜を被っていて顔は見えないが、その雰囲気はさっきまでの戦乙女とはまるで別物のプレッシャーを放っていた。
「戦女神オーディン……」
所長がほれぼれとした顔で呟く。
「戦乙女《ワルキューレ》の進化系……オーディン。ああ~~……いいねぇ~~久々に見せてもらったよ。彼女の能力はやはり『アスポート』だ。しかし戦乙女《ワルキューレ》のように攻撃するだけのものじゃない。オーディンは――――アスポートを、その身を護る鎧とする」
……な、なんだと!??
彼女の身体に月の光が当たり七色反射した。
それは彼女の身体全部を隅々まで包んでいた。
その光全部がアスポート……?
それを鎧にしているだと??
触れた物みな消し飛ばす鎧――――おいおい笑えないぞ!??
所長が『さあ、どうする?』とばかりに嘲笑った。
「今の彼女は攻撃・防御両面でほぼ無敵状態だ。ふ、ふふふ……さて、そんな彼女をキミはどうやって攻略してくれる?」
もっと楽しませろとばかりに所長は私に情報をくれる。
絶対に負けない自信があるからなのだろうが、しかし……確かにこれはヤバイ。
花を食べたマ◯オに相対する亀ってこんな気持なのかなと、思わず思ってしまう。
触れることが出来なくなったということは、もうさっきの戦法は使えないということ……。せっかく起死回生の逆転が出来たと思ったのに、これでまた打つ手が無くなった。
「ラミアっ!!」
『ぎゅぅぅっ!!』
黄金の蛇を出現させる。
こいつを噛みつかせて何とか消耗させてみる!!
無限色に輝くその鎧に向かって無数の蛇を飛ばした!!
しかし―――、
ぶをぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
彼女が軽く腕を振るだけで、その倍以上の数のアポートが出現した。
――――くそっ!! そっちの性能も強化されてるんかい!?
――――ゴッ!!
そして一斉に向かって来るアポートの群れ!!
「くっ!! ラミアッ!!」
それらを迎撃するためにさらに蛇を作り出す。
――――ばぼひゅひゅひゅひゅっ!!!!
アスポートと蛇が噛み殺し合う。
当たり一面の空間がその衝撃に歪む。
そしてその歪みに紛れてまたもや片桐さんが突進してきた!!
「くっ――――!!」
大量に出し切ったばかりで、それに対抗するだけの蛇が作り出せない!!
ベヒモス化した彼女の瞬発力は、避けようとする私の動きよりも圧倒的に早く、
――――ザシュッゥゥゥゥッ!!!!
体を突き破ってきた!!
「――――かはっ!!」
口から空気が漏れる。
縦に回転した私の視界に、同じく回転して宙を舞っている下半身が入る。
全身アスポートと化した彼女の体当たりで、私の身体は胴から真っ二つにされていた!!
――――どんっ、ゴロゴロ――。
地面に叩きつけられ転がる私。
ちぎられた下半身も同じく落ちる。
私の上半身は胸から下が無くなって、下半身も股間から上が無くなっていた。
胴と下腹部は消滅させられていた。
「……あ~~~~ぁ……惨たらしいねぇ……愛しの宝塚くんが、僕は悲しいよ?」
徳利を直のみしながら所長が嘆く。目が笑っている。
「……………………」
菜々ちんは無言で見ている。
しかしその顔は苦々しく歪んでいた。
洗脳対象としての仲間のフリだったが、しかし彼女なりに情を感じていてくれたのかも知れない。
私も……ここまでされているというのに菜々ちんを恨むような気持ちは不思議と出てこなかった。
先生と百恵ちゃんが殺されてるのに……なに甘いこと言ってるんだと思うが。
でも、彼女の目を見ていると、どうしてもまだ仲間のように思えてしまう。
理由はわからないけど……私はまだ菜々ちんのことが好きだった。
「が――――がはっ!!」
『ふん……ががこけ……あ、あっけない……くこか―――わね』
暴走の影響でロレツの回っていない片桐さんが、それでも薄笑いを浮かべて私を見下ろしてきた。
そして七色の膜を解いた腕で私の髪の毛を掴むと、目の高さまで持ち上げる。
「……最後の……ぐくぽきゃ――――勧告よ……。 私に……ごごきぃ……従うと誓えば――――がごごががが……殺さないで……あげるわ」
薄れる意識の中で考える。
私の状態は即死レベル。
残っている精気全てを使って何とか命を繋ぎ止めれるかどうか。
もう戦いとか言っている場合じゃない。
彼女の力はやっぱり圧倒的だ。
近づいても離れても……ほぼ回避不可能な攻撃が襲ってくる。
こんな化け物どうやって勝てばいい?
一つだけ。
一つだけその答えがあった。
それはさっき思いついた賭け。
やっぱり私に残された手はもうそれしかない。
「ラミア……」
私はラミアに命じる。
その呼びかけにラミアは黙ってうなずく。
彼女は私が何を言おうとしているのかわかっているようだ。
さすが私のパートナー。
ならば信じる。
あなたのことを。
信じてあなたに運命を託そう。
決心して私は命令する!!
「ラミア――――私を喰らいなさい!!」
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