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第176話 怨念④
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「大垣市ってどこ??」
マジでわからん顔をして死ぬ子先生が聞いてくる。
しかし私の目は泳ぎまくって真横にブレる。
自慢じゃないが私は47都道府県全部言えない女だぞ、市町村レベルの話なんてわかるわけないでしょう!??
「ぐぐれや!!」
「あ、そうか……」
言われて地図アプリを立ち上げると、すぐにその位置がわかった。
それを見て先生が眉を寄せまくる。
「……ちょっとなにそれ、思ってるのと真逆の方向じゃない??」
その町は私たちが向かっている方向、名古屋方面とは真逆の位置にあった。
「え、でもおかしいですよ? このアプリだと私たちは名古屋の手前の清須市ってとこを走っていることになってますけど??」
現在位置を表示するアイコンは、名古屋方面へ向かっている私たちをしっかりとその矢印で知らせていた。
「菜々ちん、やっぱり情報部の人が間違っていると思うよ??」
「いえ、そんなはずは……?」
地図情報を見て困惑する菜々ちん。
死ぬ子先生は少し考え、そして自分の考えを述べてきた。
「……いや、たかが位置情報ぐらいを間違える情報部じゃないわ。彼らの言っている事はおそらく本当だと思う」
「え? ……でも現に私たち名古屋方面に向かってますよね?」
窓から外を眺めてみる。
外の景色は見ただけではそれがどこだかわからないが、道路標識などでやはり名古屋に近い場所だと確認出来る。
それに地図アプリもここが清須市だと指しているのだ。多少の誤差ならあるかも知れないが、こんな大胆なズレなどさすがに聞いたことがない。
と、――――ドコンッ!!!!
迫ってきたパトカーの一台に車体をぶつけられ車が斜めにぶれた!!
後輪が滑って車が回転しかける!!
「あいたっ!?」
衝撃でガラスに頭をぶつける私。
「――――ち、こいつらやってくれるわね!!」
――――ギャキキキキキッ!!!!
逆ハンドルを切り、すかさず体勢を持ち直す先生。
私はそのパトカーに乗る警官の顔を確認しようと目を向けた。
しかしその姿はボヤケていまいちよく見えない。
「……て言うか……な、なんだろう……警官に見えないって言うか、なんか人の形をした大雑把な何かにしか見えないんですけど……!??」
目を擦りながら私は何度も見返した。
しかしいくら見返しても、運転席に乗っている人物の顔が判別できない。
まるで人の形をしたシルエットにしか見えないのだ。
「……なるほどね、これはもしかしたら……菜々、やれる?」
私の言葉を聞いた先生は何かに思い当たったらしく菜々ちんに目配せを送る。菜々ちんもそれを即座に理解し頷き返した。
「宝塚さん、少し能力を使います。驚かないで下さいね」
いきなりそう言うと、彼女の体が青い結界の光に包まれる。
そしてその影からひょっこりと小さな幼女の妖精が顔を出した。
「ブラウニー、真実を持ってきて!!」
――――パッ!! パパパパパパパパパパッ!!!!
菜々ちんの声と同時に、まばゆい光のパルスが車体を突き抜けて円形に広がって行った。それはかつて彼女と一緒にマンションを襲撃した時と同じ風景だった。
「な……菜々ちん、一体何を??」
「もしかしたら私たち、すでに敵の攻撃を受けているかも知れないわ」
集中している菜々ちんに変わり、先生が答えてきた。
「敵の攻撃??」
「情報部の認識が確かなら、私たちはいま思っているのと全然違う場所を走っていることになるわよね?」
「はい、でも……」
どう見ても外の景色は情報部の言っている場所とは違う。それは私の携帯アプリもそう示している。
しかし死ぬ子先生は一つの仮説を持ち出してきた。
「……もし私たちが見ている景色が全く違うものだとしたら?」
「――――え?」
「私たちが今そうだと思っている事が現実とは全く違っていたとしたら?」
「いや……その、一体何を言って……」
「私たちの認識が狂わされていたとしたら?」
困惑する私に先生が難しい顔をして尋ねてきた。
「正也ってさ……ベヒモス化したくせにヤケにあっさり倒されたと思わない?」
その言葉を聞いて私は背筋がゾッとした。
「え……正也……さん??」
「真唯にしろ、渦女にしろ、ベヒモス化したらその能力も格段に強く変化してたわよね? ……じゃあ、正也の『認識阻害』はどうなったのかしら?」
先生の問いに私が返事をするよりも早く、菜々ちんが答えた。
「情報捉えました!! 私たちは今――――そ、そんな!???」
念視によって真の情報を得ただろう、菜々ちんの顔が青ざめた。
「どうしたの菜々?」
「菜々ちん?」
そんな彼女の様子を訝しげに見る私と先生。
菜々ちんは流れる冷や汗もそのままに私たちに報告してくれた。
「私たちはいま……元の高速道路上にいます!!」
マジでわからん顔をして死ぬ子先生が聞いてくる。
しかし私の目は泳ぎまくって真横にブレる。
自慢じゃないが私は47都道府県全部言えない女だぞ、市町村レベルの話なんてわかるわけないでしょう!??
「ぐぐれや!!」
「あ、そうか……」
言われて地図アプリを立ち上げると、すぐにその位置がわかった。
それを見て先生が眉を寄せまくる。
「……ちょっとなにそれ、思ってるのと真逆の方向じゃない??」
その町は私たちが向かっている方向、名古屋方面とは真逆の位置にあった。
「え、でもおかしいですよ? このアプリだと私たちは名古屋の手前の清須市ってとこを走っていることになってますけど??」
現在位置を表示するアイコンは、名古屋方面へ向かっている私たちをしっかりとその矢印で知らせていた。
「菜々ちん、やっぱり情報部の人が間違っていると思うよ??」
「いえ、そんなはずは……?」
地図情報を見て困惑する菜々ちん。
死ぬ子先生は少し考え、そして自分の考えを述べてきた。
「……いや、たかが位置情報ぐらいを間違える情報部じゃないわ。彼らの言っている事はおそらく本当だと思う」
「え? ……でも現に私たち名古屋方面に向かってますよね?」
窓から外を眺めてみる。
外の景色は見ただけではそれがどこだかわからないが、道路標識などでやはり名古屋に近い場所だと確認出来る。
それに地図アプリもここが清須市だと指しているのだ。多少の誤差ならあるかも知れないが、こんな大胆なズレなどさすがに聞いたことがない。
と、――――ドコンッ!!!!
迫ってきたパトカーの一台に車体をぶつけられ車が斜めにぶれた!!
後輪が滑って車が回転しかける!!
「あいたっ!?」
衝撃でガラスに頭をぶつける私。
「――――ち、こいつらやってくれるわね!!」
――――ギャキキキキキッ!!!!
逆ハンドルを切り、すかさず体勢を持ち直す先生。
私はそのパトカーに乗る警官の顔を確認しようと目を向けた。
しかしその姿はボヤケていまいちよく見えない。
「……て言うか……な、なんだろう……警官に見えないって言うか、なんか人の形をした大雑把な何かにしか見えないんですけど……!??」
目を擦りながら私は何度も見返した。
しかしいくら見返しても、運転席に乗っている人物の顔が判別できない。
まるで人の形をしたシルエットにしか見えないのだ。
「……なるほどね、これはもしかしたら……菜々、やれる?」
私の言葉を聞いた先生は何かに思い当たったらしく菜々ちんに目配せを送る。菜々ちんもそれを即座に理解し頷き返した。
「宝塚さん、少し能力を使います。驚かないで下さいね」
いきなりそう言うと、彼女の体が青い結界の光に包まれる。
そしてその影からひょっこりと小さな幼女の妖精が顔を出した。
「ブラウニー、真実を持ってきて!!」
――――パッ!! パパパパパパパパパパッ!!!!
菜々ちんの声と同時に、まばゆい光のパルスが車体を突き抜けて円形に広がって行った。それはかつて彼女と一緒にマンションを襲撃した時と同じ風景だった。
「な……菜々ちん、一体何を??」
「もしかしたら私たち、すでに敵の攻撃を受けているかも知れないわ」
集中している菜々ちんに変わり、先生が答えてきた。
「敵の攻撃??」
「情報部の認識が確かなら、私たちはいま思っているのと全然違う場所を走っていることになるわよね?」
「はい、でも……」
どう見ても外の景色は情報部の言っている場所とは違う。それは私の携帯アプリもそう示している。
しかし死ぬ子先生は一つの仮説を持ち出してきた。
「……もし私たちが見ている景色が全く違うものだとしたら?」
「――――え?」
「私たちが今そうだと思っている事が現実とは全く違っていたとしたら?」
「いや……その、一体何を言って……」
「私たちの認識が狂わされていたとしたら?」
困惑する私に先生が難しい顔をして尋ねてきた。
「正也ってさ……ベヒモス化したくせにヤケにあっさり倒されたと思わない?」
その言葉を聞いて私は背筋がゾッとした。
「え……正也……さん??」
「真唯にしろ、渦女にしろ、ベヒモス化したらその能力も格段に強く変化してたわよね? ……じゃあ、正也の『認識阻害』はどうなったのかしら?」
先生の問いに私が返事をするよりも早く、菜々ちんが答えた。
「情報捉えました!! 私たちは今――――そ、そんな!???」
念視によって真の情報を得ただろう、菜々ちんの顔が青ざめた。
「どうしたの菜々?」
「菜々ちん?」
そんな彼女の様子を訝しげに見る私と先生。
菜々ちんは流れる冷や汗もそのままに私たちに報告してくれた。
「私たちはいま……元の高速道路上にいます!!」
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