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第159話 天道渦女②
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またたく間に頭上を埋め尽くした水の槍。
それらが一斉に私たちに降り注いだ!!
ババッバリバリババババババババババッ!!!!
しかしそれでも私たち三人が作り出した結界を貫くことは出来ない。
全ての槍は鉄壁の盾にて霧散される。
だが――――バキッ!!
幾つもの槍を防いだとき、鈍い音を立てて結界に亀裂が入った。
「くっ――――!?」
「ははははーーーーっ!! 言うたやろ? 一突き一突きは弱くてもなぁ、それが無数集まれば最強の武器になるんやで!! 涓滴岩を穿つってやつや!! どや、ウチ賢いやろぉ~~~~っ!???」
「そんな情緒のあるもんかいこれがっ!!!!」
ひび割れる結界を必死で維持しながら怒鳴る私。
――――バキ……バキバキバキッ!!!!
だめだ、いくら力を送り込んでもどんどん結界が削られていく。
「水がある限り、ウチの能力は無尽蔵に力を発揮できるで!! まさに水を得た魚の如くなぁ!! それがウンディーネの怖いところやでっ!!!!」
聞きたくない事実だ。
なにそれ? てことは水道管を止めない限りこの槍は永遠に降り注ぐってこと!?
ふ、ふざけんな、なんじゃその燃費のいい能力は!!
――――バキッ!!
また一つひび割れが増える。
やばい!! このままじゃもう数秒もしたら結界は破壊される。
そうしたら私たちにもうこの槍を防ぐ手段は無い。
「――――先生!?」
何か打開策はないかと死ぬ子先生を見るが、先生は難しい顔を向けて、
「……地味にピンチね、こいつ訓練じゃこんな力見せなかったのに……猫かぶってたみたいね。力は弱いけど無尽蔵の水操作か……これは脅威よ」
「よ、じゃねーしっ!! そんな解説聞いてんじゃないわよ!! 何とかならないかって言ってるの!???」
目をアーチ状に膨らませながら私。
「……結界が破壊されしだい三人がそれぞれ別方向に散って渦女を撹乱しつつ、反撃するしかないわね」
「そ、それだと結界が消えた瞬間、槍に当たりませんか?」
青ざめながら菜々ちんが確認する。
「当たるわよ。当たりながら反撃するのよ」
「そんな無茶なっ!?」
「腕や足の一本が取れても宝塚さんがいるわ、だから問題ないでしょ?」
大アリですと言いたげな菜々ちんだったが、しかし頭の良い彼女はそれしか無いと言うことも即座に理解する。
だが、その覚悟を馬鹿にするように渦女が高笑いを上げてくる。
「はっはっはーーーーーーーーっ!!!! 玉砕覚悟で向かってくる気か? ええでええで、そういう無茶しいはウチ好きやでぇ? でもなそれも対策済みやっ!!」
叫ぶと、結界の上部に集中していた水の槍群はその範囲を広げ、今度は私たちの周囲全てを包む全周囲攻撃にその形を変えてきた。
ババッバリバリババババババババババッ!!!!
「どや? これで逃げ道は無くなったで!! いくら一発の威力が弱い言うても生身の体に正面から食らえば、そらたまらんで!? これやと結界破るのに多少の時間はかかってしまうから焦れったいけどな? 良かったなぁちょっとは寿命が伸びたでえ!??」
「ぐうっ!??」
迫りくる水の槍は私たちを半円状に包囲する。
たしかにこれでは三人別々に散っても意味がない。
三人とも正面から全身を貫かれて即死する。
私は回復で修復出来るけど、二人を回復している間にも攻撃は続くだろう。そうすれば私もいずれ精気切れでやられる。
ならば二人を回復せずに渦女に攻撃した場合、こいつは何とか倒すことが出来るかも知れないが、その頃には倒れた二人の魂はもう無くなっている事だろう。
――――どうする?
どっちを取る?
二人を見捨てて敵を倒すか。
奇跡の逆転を信じ、回復に専念するか。
また目の前に天秤が現われた。
……やだなぁ。
また判断するのか……。
しかも今回は随分えげつない判断だ。
誰が考えてもこれはもう答えが出ている。
それは二人を見捨てる方。
だって奇跡の逆転なんてそう簡単に起きるわけがないんだから。
同じ奇跡でも、渦女を倒した後にまだ二人が生きている可能性の方が多分高い。
でもそれも本当に奇跡と思えるほどに望みは薄いはずだ。
つまりこれは、二人を見捨てる覚悟を決める天秤。
――――でも、
私にそんな判断出来るわけがない。
私は馬鹿だ。
馬鹿だから、絶対間違ってるとわかっていても感情で動いてしまう。
バキャアァァァァァァァァァァンッ!!!!
結界が弾け飛んだ!!!!
同時に私は二人に抱きつき、全力で走って逃げる!!
ドタドタと。
そして命令する!!
「ラミア回復よっ!! 二人の傷をすぐに消して!!」
『きゅるぅ?』
しかしラミアの返事はとぼけたものだった。
いったい主人は何を言っているのかとでも言う風に。
ばかっ!! こんな時になにとぼけてるのよ!!
結界が無くなったいま、私たちは渦女の槍に串刺しにされて――――、
「――――て、はれ!??」
妙な静けさに振り返ると、そこには無残に砕け散った店内とビチャビチャと溢れ出す水。血だらけになって重なり倒れている戦闘員たちと、何かに吹き飛ばされたかのように壁に埋まって気を失っている渦女の姿があった。
「え……と、これは……?」
キョトンとする私に無言で白けた顔を向ける死ぬ子先生。
菜々ちんも苦笑いで私を見ている。
「馬鹿とバカの対決は滑稽なもんじゃの」
無礼だが的確な言葉が聞こえてきた。
それを発したのは彼女――――百恵ちゃん。
「……ヒロインもそうじゃが、こいつも我輩の存在を忘れておったみたいじゃな。まったくありえないバカさ加減じゃ。横から全て一網打尽にしてやったわ」
鼻をふんっと鳴らし彼女は腰に手を添える。
その周囲には能力の余韻だろう空間の歪みが点々と。
足元には首を捻られ気を失っている正也さんが転がっていた。
それらが一斉に私たちに降り注いだ!!
ババッバリバリババババババババババッ!!!!
しかしそれでも私たち三人が作り出した結界を貫くことは出来ない。
全ての槍は鉄壁の盾にて霧散される。
だが――――バキッ!!
幾つもの槍を防いだとき、鈍い音を立てて結界に亀裂が入った。
「くっ――――!?」
「ははははーーーーっ!! 言うたやろ? 一突き一突きは弱くてもなぁ、それが無数集まれば最強の武器になるんやで!! 涓滴岩を穿つってやつや!! どや、ウチ賢いやろぉ~~~~っ!???」
「そんな情緒のあるもんかいこれがっ!!!!」
ひび割れる結界を必死で維持しながら怒鳴る私。
――――バキ……バキバキバキッ!!!!
だめだ、いくら力を送り込んでもどんどん結界が削られていく。
「水がある限り、ウチの能力は無尽蔵に力を発揮できるで!! まさに水を得た魚の如くなぁ!! それがウンディーネの怖いところやでっ!!!!」
聞きたくない事実だ。
なにそれ? てことは水道管を止めない限りこの槍は永遠に降り注ぐってこと!?
ふ、ふざけんな、なんじゃその燃費のいい能力は!!
――――バキッ!!
また一つひび割れが増える。
やばい!! このままじゃもう数秒もしたら結界は破壊される。
そうしたら私たちにもうこの槍を防ぐ手段は無い。
「――――先生!?」
何か打開策はないかと死ぬ子先生を見るが、先生は難しい顔を向けて、
「……地味にピンチね、こいつ訓練じゃこんな力見せなかったのに……猫かぶってたみたいね。力は弱いけど無尽蔵の水操作か……これは脅威よ」
「よ、じゃねーしっ!! そんな解説聞いてんじゃないわよ!! 何とかならないかって言ってるの!???」
目をアーチ状に膨らませながら私。
「……結界が破壊されしだい三人がそれぞれ別方向に散って渦女を撹乱しつつ、反撃するしかないわね」
「そ、それだと結界が消えた瞬間、槍に当たりませんか?」
青ざめながら菜々ちんが確認する。
「当たるわよ。当たりながら反撃するのよ」
「そんな無茶なっ!?」
「腕や足の一本が取れても宝塚さんがいるわ、だから問題ないでしょ?」
大アリですと言いたげな菜々ちんだったが、しかし頭の良い彼女はそれしか無いと言うことも即座に理解する。
だが、その覚悟を馬鹿にするように渦女が高笑いを上げてくる。
「はっはっはーーーーーーーーっ!!!! 玉砕覚悟で向かってくる気か? ええでええで、そういう無茶しいはウチ好きやでぇ? でもなそれも対策済みやっ!!」
叫ぶと、結界の上部に集中していた水の槍群はその範囲を広げ、今度は私たちの周囲全てを包む全周囲攻撃にその形を変えてきた。
ババッバリバリババババババババババッ!!!!
「どや? これで逃げ道は無くなったで!! いくら一発の威力が弱い言うても生身の体に正面から食らえば、そらたまらんで!? これやと結界破るのに多少の時間はかかってしまうから焦れったいけどな? 良かったなぁちょっとは寿命が伸びたでえ!??」
「ぐうっ!??」
迫りくる水の槍は私たちを半円状に包囲する。
たしかにこれでは三人別々に散っても意味がない。
三人とも正面から全身を貫かれて即死する。
私は回復で修復出来るけど、二人を回復している間にも攻撃は続くだろう。そうすれば私もいずれ精気切れでやられる。
ならば二人を回復せずに渦女に攻撃した場合、こいつは何とか倒すことが出来るかも知れないが、その頃には倒れた二人の魂はもう無くなっている事だろう。
――――どうする?
どっちを取る?
二人を見捨てて敵を倒すか。
奇跡の逆転を信じ、回復に専念するか。
また目の前に天秤が現われた。
……やだなぁ。
また判断するのか……。
しかも今回は随分えげつない判断だ。
誰が考えてもこれはもう答えが出ている。
それは二人を見捨てる方。
だって奇跡の逆転なんてそう簡単に起きるわけがないんだから。
同じ奇跡でも、渦女を倒した後にまだ二人が生きている可能性の方が多分高い。
でもそれも本当に奇跡と思えるほどに望みは薄いはずだ。
つまりこれは、二人を見捨てる覚悟を決める天秤。
――――でも、
私にそんな判断出来るわけがない。
私は馬鹿だ。
馬鹿だから、絶対間違ってるとわかっていても感情で動いてしまう。
バキャアァァァァァァァァァァンッ!!!!
結界が弾け飛んだ!!!!
同時に私は二人に抱きつき、全力で走って逃げる!!
ドタドタと。
そして命令する!!
「ラミア回復よっ!! 二人の傷をすぐに消して!!」
『きゅるぅ?』
しかしラミアの返事はとぼけたものだった。
いったい主人は何を言っているのかとでも言う風に。
ばかっ!! こんな時になにとぼけてるのよ!!
結界が無くなったいま、私たちは渦女の槍に串刺しにされて――――、
「――――て、はれ!??」
妙な静けさに振り返ると、そこには無残に砕け散った店内とビチャビチャと溢れ出す水。血だらけになって重なり倒れている戦闘員たちと、何かに吹き飛ばされたかのように壁に埋まって気を失っている渦女の姿があった。
「え……と、これは……?」
キョトンとする私に無言で白けた顔を向ける死ぬ子先生。
菜々ちんも苦笑いで私を見ている。
「馬鹿とバカの対決は滑稽なもんじゃの」
無礼だが的確な言葉が聞こえてきた。
それを発したのは彼女――――百恵ちゃん。
「……ヒロインもそうじゃが、こいつも我輩の存在を忘れておったみたいじゃな。まったくありえないバカさ加減じゃ。横から全て一網打尽にしてやったわ」
鼻をふんっと鳴らし彼女は腰に手を添える。
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足元には首を捻られ気を失っている正也さんが転がっていた。
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